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「FBIがあなたを捜査」「娘が白血病に。100万ドル送金して」国際ロマンス詐欺、その甘いささやき
2021年02月01日 16時29分

「国際ロマンス詐欺」の被害が、あとをたたない。この詐欺は、ネットで知り合った「米国人兵士」などを名乗る何者かの巧みな話術に騙されて、恋心もあって多額の海外送金をしてしまうというもの。

最近では、昨年末に国際ロマンス詐欺の被害を未然に防いだとして、伊賀市の百五銀行の行員らが三重県警伊賀署から感謝状を贈られている。毎日新聞(2021年1月27日)の報道によれば、「SNSで知り合った女性に40万円を振り込む。アメリカに送金する」と、同行のATMから振り込もうとした男性の送金を警察との連携で防いだということだ。

弁護士ドットコムには、実際に国際ロマンス詐欺にあった被害者やそれを疑う当事者、さらに家族たちから多数の相談が寄せられている。プライバシー保護のため一部、脚色しながら相談事例を紹介したい。

「国際ロマンス詐欺」の被害が、あとをたたない。この詐欺は、ネットで知り合った「米国人兵士」などを名乗る何者かの巧みな話術に騙されて、恋心もあって多額の海外送金をしてしまうというもの。

最近では、昨年末に国際ロマンス詐欺の被害を未然に防いだとして、伊賀市の百五銀行の行員らが三重県警伊賀署から感謝状を贈られている。毎日新聞(2021年1月27日)の報道によれば、「SNSで知り合った女性に40万円を振り込む。アメリカに送金する」と、同行のATMから振り込もうとした男性の送金を警察との連携で防いだということだ。

弁護士ドットコムには、実際に国際ロマンス詐欺にあった被害者やそれを疑う当事者、さらに家族たちから多数の相談が寄せられている。プライバシー保護のため一部、脚色しながら相談事例を紹介したい。

●なぜか「アフガニスタン駐在の米兵」たちからSOSが殺到

寄せられた相談のうち、「アフガニスタン駐在の米国人兵士」に騙された人たちが複数いた。その手口はさまざまだ。

「SNSで知り合ったアフガニスタンに在任中の米軍兵士から、君を信じているから金銭と衣服を金属製の簡易金庫みたいな物に詰めて送りたいと言われました。その時はただ荷物を受け取るだけだと思い快諾しました」

このケースでは、「運輸会社」を名乗る組織からメールで「税関で関税や違反金がかかった」として送金を要求されたという。合計で100万円近く要求され、そのうち約40万円はすでに送金してしまった。

また「詐欺かもしれない」と疑いつつも、ほんのわずかな希望にすがりつく人もいた。

「彼は今、アフガニスタンのキャンプに駐留しているのですが、アメリカにいる娘が白血病になって入院しているとの事でキャンプを抜けたい。そして日本にいる私に会いに来るため、10万ドルを送金して欲しいと。詐欺を疑っていますが、毎日『I love you』と言われ、気持ちが揺らぎます」

ちなみに、アメリカ国防総省は2021年1月、アフガニスタンに駐留する軍の部隊を2500人規模に削減したと明らかにしている。

●「FBIがあなたを捜査する」「政府に押収されたら自殺する」

詐欺の設定はあまりに稚拙ではあるのだが、その手口は複雑なのも特徴的だ。慌てた当事者が、英語メールでの連絡に理解が追いつかず、冷静さを失って騙されてしまう可能性もありそうだ。

典型的なのが、次のようなケースだ。

「SNSで知り合った彼からプレゼントが届く予定でしたが、しばらくして運送会社からメールで内容が違法だから、違約金を支払えと。無視していたら『荷物の中身が現金だった為、FBIにあなたの情報を渡す』『FBIはマネーロンダリングとしてあなたを日本まで追跡する』と脅しのメールが来ました」

「海外交流アプリで知り合った相手からギフトを送ると言われ、『関税の手数料』や『マネーロンダリング対策費用』などを次々と請求され約900万円の費用負担を求められました。すでに数百万円を振り込んでいますが、送り主からはギフトを政府に押収されたら自殺をすると言われてます」

恋した相手から「多額の関税」「FBI」「自殺する」などと外国語で言われたら、誰でも慌てるのが普通だろう。2つ目の相談を寄せた投稿者は「本当にFBIが動いた場合、私は何かしらの罪に問われて逮捕されてしまうのでしょうか」と真剣に悩んでいた。

●家族に止められても、恋心が暴走してしまう

高齢者が騙されるケースも多い。親の被害に気がついた相談も複数寄せられていた。

「60代の母がロマンス詐欺に遭いました。石油エンジニアを名乗る男性とSNSを通じて知り合いになったそうです。母はその人を信じてしまい、約1000万円分の仮想通貨を買い、ある取引所で送金してしまったそうです」

この相談者の親は、送金後に「被害」であると自覚したという。しかし、家族にとめられても、暴走してしまうこともある。

「家族が国際ロマンス詐欺にあっています。警察にも相談済ですが、兄弟や親が何を言っても、本人は相手のことを信じており、実際に会った事もないのに、何度か送金しています」

会ったことのない相手であっても、家族にとめられても、恋心はとまらない。国際ロマンス詐欺被害があとを絶たないのは、そんな人間の弱みが徹底的に利用されるからなのだろう。

●「税関から関税を要求されることは絶対にない」

国際ロマンス詐欺について、JETROは次のように注意喚起をしている。

「インターネットの出会い系サイトやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを通じて知り合った欧米系や紛争発生国に在住などと名乗る異性(軍人、医師、国連職員、船員、資産家等)から、交際や結婚を申し込まれ、その後、多額の秘密資金や資産、第三国での投資資金、贈答品、家財の送金費用・手数料、あるいは本人・家族の生活費や渡航経費の送金など様々な金銭的要求が出てくる「詐欺」と思われるケースが多発しており、被害事案も含めてジェトロへの相談が急増しています」

「また、最近は恋愛問題に止まらず、年配のご婦人を「ママ」と慕う振りをして懐に飛び込む、あるいは架空の波乱万丈な身の上話を作り上げて相手の同情を買う等の手口も見られます」

「積み替え港で税関から関税を要求されるということは絶対にないので、この手の支払いには絶対に応じないでください」

詳細はJETROのサイト(https://www.jetro.go.jp/contact/faq/419.html)をみて欲しい。

被害にあった場合、最寄りの警察に相談することが先決だ。ただ、実際にカネが戻ってくる可能性は限りなく乏しいだろう。怪しいSNSのメッセージや、ネット上でお金を要求された時は応じない。それが鉄則だ。

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