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製法特許が取得されている「焼きカレー」、勝手に作って売っても問題ない?
2017年07月01日 09時05分

都内在住のアラフォー会社員・J子さんは、仕事の合間に昼食を取ろうと駅ビルに寄った。ふらっと入った喫茶店で何を注文しようか迷っていたところ、壁に「名物焼きカレー 980円」の文字が並んでいる。ふと周りを見渡すと、確かに店内にいるお客さんのほとんどが熱々の焼きカレーを頬張っていた。J子さんも注文してみると、チーズと卵黄が絡まってこれまでにない美味しさだった。

すっかり焼きカレーの虜になってしまったJ子さんは、「是非家で夫や子どもにも食べさせてあげたい」とインターネットでレシピを検索。するとたまたま「焼きカレーには特許」と。調べてみると、どうやら福岡県の男性が焼きカレーの製法特許を取得しているという。

「何か許可などが必要なのだろうか」と、J子さんは不安になった。製法特許が取得されているメニューでも、自宅で家族に振る舞う分には問題ないのだろうか。また、自分で喫茶店などを初めて、メニューに加えた場合、何か問題が生じるのか。早瀬久雄弁護士に聞いた。

都内在住のアラフォー会社員・J子さんは、仕事の合間に昼食を取ろうと駅ビルに寄った。ふらっと入った喫茶店で何を注文しようか迷っていたところ、壁に「名物焼きカレー 980円」の文字が並んでいる。ふと周りを見渡すと、確かに店内にいるお客さんのほとんどが熱々の焼きカレーを頬張っていた。J子さんも注文してみると、チーズと卵黄が絡まってこれまでにない美味しさだった。

すっかり焼きカレーの虜になってしまったJ子さんは、「是非家で夫や子どもにも食べさせてあげたい」とインターネットでレシピを検索。するとたまたま「焼きカレーには特許」と。調べてみると、どうやら福岡県の男性が焼きカレーの製法特許を取得しているという。

「何か許可などが必要なのだろうか」と、J子さんは不安になった。製法特許が取得されているメニューでも、自宅で家族に振る舞う分には問題ないのだろうか。また、自分で喫茶店などを初めて、メニューに加えた場合、何か問題が生じるのか。早瀬久雄弁護士に聞いた。

●製法特許は、特許を取得しても権利侵害を発見しづらいのが現実

製法特許とはどのようなものか。

「製法特許とは、物を生産する方法の発明に特許権が付与されたものをいいます。特許権の対象となる発明には、物、方法、物の生産方法(製造方法)の3つのカテゴリーがあり、そのうちの一つにあたります(特許法2条3項)」

「物の生産方法」とはどのような意味なのか。

「特許法上、方法の発明は、『物の生産方法(製造方法)』と『(それ以外の)一般方法』とに区別され、効力が及ぶ範囲が異なっています。後者の『一般方法』の発明では、その方法を使用することだけに特許権の効力が及びます。

しかし前者の『物の生産方法(製造方法)』の発明では、生産方法を使用することはもちろん、その生産方法によって完成した『物』に対して特許権の効力が及ぶことが特徴です。つまり、焼きカレーの製法特許の場合だと、その製法特許を使用して作られた焼きカレーにも効力が及ぶということです」

なぜ料理に対して、特許を取る必要があるのか。

「製法特許を取得することのメリットとしては、その製法そのものと、その製法を使用して作られた物を所定期間独占できるという点があります。特許権を取得していることが消費者へのアピールにもなります。

もっとも、特許出願すれば出願内容が公開されますので、製法(レシピ)が他人に知られてしまいます。また、作られた物や料理の見た目や味だけでは製法特許が実際に使用されているかどうかはわからず、他人の工場や厨房の中に入っていき、その物や料理を作っている場面を見て初めて製法特許が使用されているかどうかがわかる場合も多いと思われます。

そのため、製法特許は、特許を取得しても権利侵害を発見しづらいという問題があります」

●有料でも無料でも、許可なくイベントなどで振る舞うと特許権侵害となる

製法特許が取得されている料理を自宅で振る舞う分には、手続きなどはいらないのか。

「特許権の効力は、業として、つまり事業(経済活動の一環)として行う場合に及び、単なる個人や家庭内での行為にまでは及びません。そのため、焼きカレーの製法特許が取得されていても、自宅で振る舞うためにその製法特許を使用して焼きカレーを作るのであれば特許権の効力は及びません。ですから、特許権者に対して許可を得るなど、何か手続をする必要はありません」

もし店舗などで販売する場合、どういった手続きが必要か。

「店舗などで他人に販売したり、イベント等で振る舞ったりするために製法特許を使用する場合(提供が有償なのか無償なのかは無関係)には、特許権者の許可なくそれを行えば、特許権侵害となります。特許権者に対し、事前に許可を得る手続をとらないと、特許権者から権利侵害を主張される可能性があります」

(弁護士ドットコムニュース)

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