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新手の貧困ビジネス!? シェアハウス人気の影で横行する「脱法ハウス」 の実態とは
2013年06月10日 16時25分

一つの住居を複数人で借りるシェアハウス。光熱費が安く済んだり、敷金礼金が不要だったりするため、一部の若者の間でトレンドになっている。一方で、住居としての安全性などに難がある「脱法ハウス」が問題になっている。

毎日新聞などの報道によると、ネットカフェ業者が運営する東京都内のシェアハウスに対し、昨年、東京消防庁が消防法違反などの疑いがあると指摘していたという。その施設は木造2階建てで、37の個室を有していたが、ほとんど窓がなく、広い部屋でも約6平方メートルしかなかった。同庁は避難誘導灯の設置などの安全対策を要請したという。

こうした消防法や建築基準法に違反する疑いのある「脱法ハウス」は、ほかにも数多くあるとみられているが、その実態は明らかになっていない。住宅・貧困問題に詳しい戸舘圭之弁護士に聞いた。

●「脱法ハウスは、居住安定の利益が守られていないことがほとんど」

「脱法ハウスは、通常のアパートに入居する場合にむすばれる賃貸借契約ではなく、それぞれ独自の名称の契約(施設利用契約等)をむすんでいることが多く、契約上、居住者の『居住安定の利益』が守られていないことがほとんどです」

戸舘弁護士はこのように指摘する。つまり、脱法ハウスをめぐっては、住居としての安全性の問題のほかに、居住者にとって不利な契約が結ばれている可能性があるというのだ。

「しかし、契約書や利用規約において、いかなる記載がなされていようとも、一定の場所の利用を認め、その利用の対価として料金を受け取っているのであれば、法律上は賃貸借契約にあたり、居住者は民法や借地借家法による保護を受けられます。

また、いかなる契約形態であろうと、裁判所の手続を介さずに強制的に追い出す行為は、『自力救済』として法律上禁止されています」

では、業者側が「契約」をもちだして、対抗してきたらどうだろうか。

「業者側が『脱法ハウスで居住することを認めていない』などという理由をもちいて、借地借家法の規制を免れようとすることも考えられますが、脱法ハウスの現実の利用状況や当事者の認識にてらせば、居住目的であることは明らかです」

●「脱法ハウスは新手の貧困ビジネス」

ひとつの実態が浮かび上がってきた「脱法ハウス」だが、このような形態の「住居」が広まった背景には何があるのだろうか。

「社会に蔓延する『貧困』があります。通常のアパートに入居できる余裕がない人々が、料金の安さ、手続の簡便さ等を理由にして、やむを得ず居住場所として利用しているのが実態です。業者側も、そのような貧困にある人々のニーズにつけ込んでビジネスを展開しようとしており、新手の貧困ビジネスといえます」

このように戸舘弁護士は、脱法ハウスを「新手の貧困ビジネス」と切り捨てる。そのうえで、国に対しても次のように苦言を呈する。

「憲法25条は国の責務として『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を保障することをうたっていますが、生存権保障のまさに要であるはずの住居の保障についての施策は、はなはだ不十分です。

住宅保障が当然に含まれている生活保護制度も、現在、制度を利用しにくくする方向での改正がすすみつつあり、貧困状態にある人々の居住の保障はますます危機に瀕しています。『脱法ハウス』のような劣悪な居住環境が蔓延しないためにも、国は社会保障、住宅政策を充実させるべきです」

世間では、アベノミクス効果で景気が上向きだと伝えられているが、依然として生活に余裕のない人々は存在している。今回明るみになった「脱法ハウス」の問題は、氷山の一角にすぎないのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

一つの住居を複数人で借りるシェアハウス。光熱費が安く済んだり、敷金礼金が不要だったりするため、一部の若者の間でトレンドになっている。一方で、住居としての安全性などに難がある「脱法ハウス」が問題になっている。

毎日新聞などの報道によると、ネットカフェ業者が運営する東京都内のシェアハウスに対し、昨年、東京消防庁が消防法違反などの疑いがあると指摘していたという。その施設は木造2階建てで、37の個室を有していたが、ほとんど窓がなく、広い部屋でも約6平方メートルしかなかった。同庁は避難誘導灯の設置などの安全対策を要請したという。

こうした消防法や建築基準法に違反する疑いのある「脱法ハウス」は、ほかにも数多くあるとみられているが、その実態は明らかになっていない。住宅・貧困問題に詳しい戸舘圭之弁護士に聞いた。

●「脱法ハウスは、居住安定の利益が守られていないことがほとんど」

「脱法ハウスは、通常のアパートに入居する場合にむすばれる賃貸借契約ではなく、それぞれ独自の名称の契約(施設利用契約等)をむすんでいることが多く、契約上、居住者の『居住安定の利益』が守られていないことがほとんどです」

戸舘弁護士はこのように指摘する。つまり、脱法ハウスをめぐっては、住居としての安全性の問題のほかに、居住者にとって不利な契約が結ばれている可能性があるというのだ。

「しかし、契約書や利用規約において、いかなる記載がなされていようとも、一定の場所の利用を認め、その利用の対価として料金を受け取っているのであれば、法律上は賃貸借契約にあたり、居住者は民法や借地借家法による保護を受けられます。

また、いかなる契約形態であろうと、裁判所の手続を介さずに強制的に追い出す行為は、『自力救済』として法律上禁止されています」

では、業者側が「契約」をもちだして、対抗してきたらどうだろうか。

「業者側が『脱法ハウスで居住することを認めていない』などという理由をもちいて、借地借家法の規制を免れようとすることも考えられますが、脱法ハウスの現実の利用状況や当事者の認識にてらせば、居住目的であることは明らかです」

●「脱法ハウスは新手の貧困ビジネス」

ひとつの実態が浮かび上がってきた「脱法ハウス」だが、このような形態の「住居」が広まった背景には何があるのだろうか。

「社会に蔓延する『貧困』があります。通常のアパートに入居できる余裕がない人々が、料金の安さ、手続の簡便さ等を理由にして、やむを得ず居住場所として利用しているのが実態です。業者側も、そのような貧困にある人々のニーズにつけ込んでビジネスを展開しようとしており、新手の貧困ビジネスといえます」

このように戸舘弁護士は、脱法ハウスを「新手の貧困ビジネス」と切り捨てる。そのうえで、国に対しても次のように苦言を呈する。

「憲法25条は国の責務として『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を保障することをうたっていますが、生存権保障のまさに要であるはずの住居の保障についての施策は、はなはだ不十分です。

住宅保障が当然に含まれている生活保護制度も、現在、制度を利用しにくくする方向での改正がすすみつつあり、貧困状態にある人々の居住の保障はますます危機に瀕しています。『脱法ハウス』のような劣悪な居住環境が蔓延しないためにも、国は社会保障、住宅政策を充実させるべきです」

世間では、アベノミクス効果で景気が上向きだと伝えられているが、依然として生活に余裕のない人々は存在している。今回明るみになった「脱法ハウス」の問題は、氷山の一角にすぎないのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

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