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「男性も強姦の被害者に」「性犯罪を幅広く厳罰化」刑法改正要綱案を元警察官僚が解説
2016年06月28日 10時11分

性犯罪の厳罰化を検討してきた法制審議会の刑事法部会が6月16日、強姦罪の法定刑引き上げや非親告罪化などを柱とする刑法改正要綱案をまとめた。法務省は9月の審議会総会を経て、来年の次期通常国会に刑法改正案の提出を目指す。

これまでの性犯罪の規制は、どんな点が不十分とされてきたのか。今回の改正案で、刑法はどのように変わるのか。元警察官僚で警視庁刑事の経験もあり、刑事事件に詳しい澤井康生弁護士に聞いた。

性犯罪の厳罰化を検討してきた法制審議会の刑事法部会が6月16日、強姦罪の法定刑引き上げや非親告罪化などを柱とする刑法改正要綱案をまとめた。法務省は9月の審議会総会を経て、来年の次期通常国会に刑法改正案の提出を目指す。

これまでの性犯罪の規制は、どんな点が不十分とされてきたのか。今回の改正案で、刑法はどのように変わるのか。元警察官僚で警視庁刑事の経験もあり、刑事事件に詳しい澤井康生弁護士に聞いた。

●刑罰の均衡を図る

今回の刑法改正要綱案は、性犯罪について幅広く厳罰化を行うとともに、各犯罪類型との刑罰の均衡も図るものです。

現在、強姦罪の法定刑の下限は3年、つまり、懲役3年以上とされています。

しかし、強盗罪(5年)や現住建造物放火(5年)と比較した場合に、強姦罪のみ2年も刑が軽いのはバランスが悪いということになり、5年に引き上げることになったのです。

同様に強姦致傷罪も強盗致傷罪(6年)とのバランスから5年から6年に引き上げられました。

●親告罪から、非親告罪に

現在、強姦罪は被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪とされています。これは被害者の意思を尊重するためです。

しかし、現実には、深刻な精神的被害を負った被害者に対して、告訴するかどうかの選択を迫る結果となり、親告罪であることが、かえって被害者に精神的負担を生じさせる弊害がありました。

そこで、今回の改正案で、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪とされたのです。

ただし、捜査機関は被害者の意思を重視しますので、実際に被害者が告訴を拒否しているのに捜査機関が被害者の意思を無視して捜査・起訴することはまずないと思います。

●男性も強姦の被害者に

現在,強姦罪の被害者は女性のみとされています。したがって,男性が強姦に準ずる被害にあっても強姦罪は成立せず、せいぜい、強姦罪よりも刑の軽い強制わいせつ罪止まりでした。

しかし、これらの行為も女性を被害者とする強姦罪と同様、悪質性・重大性があることから、男性も強姦罪の被害者に含めることにしました。対象行為も「性交等」とされました。

●親が子どもにわいせつ行為、児童福祉法にしか問えないケースが多かった

強制わいせつ罪や強姦罪は、暴行・脅迫を手段として行為を行うことが要件とされています。

そのため、親が監護権者としての影響力を行使してこれらの行為をしても、暴行・脅迫を用いていない以上、強制わいせつ罪や強姦罪は成立せず、軽い児童福祉法違反でしか処罰できませんでした。

そこで、親が監護権者としての影響力を行使して18歳未満の者に対し性犯罪を行った場合、暴行・脅迫を用いなくても強制わいせつ罪や強姦罪として処罰できるようになりました。

●「強盗の後、強姦」「強姦の後、強盗」順番で罪の重さが違っていた

強盗犯人が現場で強姦に及んだ場合には、「強盗強姦罪」として無期または7年以上の懲役に処せられます。

これに対し、強姦犯人が、現場で強盗も犯した場合には、強姦罪と強盗罪の併合罪(2つ以上の罪を処理する方法の一つ)として5年以上30年以下の懲役とされると考えられてきました。つまり、強盗犯が現場で強姦に及んだ場合より、強姦犯が現場で強盗に及んだ場合の方が、刑の重さが軽くなってしまうのです(無期懲役を科すことができない)。

これは、強盗強姦罪が、「強盗が女子を強姦したときは」と定めているため、強姦犯人が、後で強盗の意思を生じて、強盗行為に及んだような場合を含める解釈ができなかったからです。

今回の改正案では、同様の悪質性・重大性があるのに、順番で罪が軽くなってしまうのはおかしいということで、前者と同様の刑で処罰できるようになりました。

今回の改正は刑法制定以来、性犯罪について幅広く厳罰化を行うとともに、各犯罪類型との均衡をも図るものであり、これにより性犯罪の発生に歯止めをかけることができるのではないかと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

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