1061.jpg
テキーラ「一気飲み」強要したら罪に問われる?
2020年12月11日 13時00分

テキーラの一気飲みをさせられた女性が亡くなった――。ネット上でこんな投稿が話題になっている。

投稿内容は、都内の会員制ラウンジではたらく女性が、テキーラのボトルを一気飲みさせられて亡くなったというものだ。

ことの真相は明らかになっていないが、一般論として、お酒の一気飲みをさせることは罪に問われるのだろうか。高橋裕樹弁護士に聞いた。

テキーラの一気飲みをさせられた女性が亡くなった――。ネット上でこんな投稿が話題になっている。

投稿内容は、都内の会員制ラウンジではたらく女性が、テキーラのボトルを一気飲みさせられて亡くなったというものだ。

ことの真相は明らかになっていないが、一般論として、お酒の一気飲みをさせることは罪に問われるのだろうか。高橋裕樹弁護士に聞いた。

●一気飲みさせることは「強要罪」にあたる可能性

――お酒を一気飲みさせた場合、罪に問われるのですか?

コロナ禍ではありますが、忘年会・新年会シーズンなので、お酒を飲む機会が多くなる方もいると思います。

まず、成人相手にお酒を勧めること自体は法的に問題ありません。

しかし、飲むように恫喝したり、飲まなければ不利益を課すかのように仕向けるように、社会的に許容される限度を超えた態様・量を超えた飲酒の強要があった場合、強要罪にあたります。

その結果、意識喪失や急性アルコール中毒にさせたような場合は傷害罪あるいは過失傷害罪、さらに死亡に至らせた場合は傷害致死罪、過失致死罪になるでしょう。

――どれくらい重いのですか?

傷害罪は15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金とかなり重い罪になります。過失傷害罪は30万円以下の罰金または科料です。

傷害致死罪は3年以上20年以下と相当重い罪であるうえに、裁判員裁判の対象事件です。裁判員裁判が始まってから特に量刑が重くなった犯罪の1つが傷害致死罪なので、有罪となった場合には厳しい結果が待っているでしょう。

過失致死罪は50万円以下の罰金です。

――たとえば「●分で飲んだらお金がもらえる」というゲームだった場合はどうか?

このような場合、少し難しい問題があります。

お酒を強要したのであれば、先ほど述べたように犯罪になりえますが、テキーラチャレンジというゲームに自分から志願して飲んだのであれば、お酒の強要とはいえないので、犯罪にはならない可能性が高いからです。

ただし、ゲームやレクリエーションのかたちをとっていたとしても、言語・非言語の同調圧力や忖度があったり、「やってくれなきゃ指名を外そうかな」のような不利益をチラつかせられるということもあります。

このような場合は、単にゲームに志願したという点だけをとらえて、「犯罪ではない」「自分で飲んだ」とは言い切れない場合もあると思います。

●周りの人も罪に問われる可能性

――もし仮に一気飲みを煽っていた人がいた場合、その人たちも罪に問われますか?

みなさんも気を付けなければならないのが、直接、一気を強要した人ではなくても、その場にいた人が犯罪になる可能性があるという点です。

たとえば「あいつを潰そう」というかたちで共謀していれば、強要罪、傷害罪、傷害致死罪の共犯ですし、その場でコールをするなどの方法ではやし立て、飲酒を促進させたような場合は現場助勢罪(1年以下の懲役または10万円以下の罰金)という犯罪が成立する可能性もあります。

――かなり厳しいですね。

さらに言えば、一気などでお酒を飲ませることだけが犯罪ではありません。

お酒を煽った人や居合わせた人が、飲んだ人の著しい体調悪化を認識しながら、その場に放置して離れたり、救急車を呼ぶなどの適切な行為をおこなわなかった場合は、保護責任者遺棄罪(3カ月以上5年以下の懲役)、放置されたことにより死亡した場合は、保護責任者遺棄致死罪(3年以上20年以下の懲役)に問われます。

この責任は、お酒を飲んだ人がホストやホステスなのであれば、店の経営者側にも同じ犯罪が成立する可能性があります。

いずれ一気の強要が犯罪だということは、もっと広く知られるべきだと思います。お酒は飲んでも飲ませるな!

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る