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ももクロ「爆音」野外ライブに苦情殺到…野外ライブの騒音はどう規制されている?
2017年04月22日 10時13分

埼玉県富士見市が4月8、9日に市第2運動公園で開催したアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のコンサートで、東京都内にまで届くほどの騒音があったとして、市内外から約130件の苦情が寄せられた。

市地域文化振興課によると、約20キロ離れた東京都西東京市や東久留米市からも電話があったという。市民に対しては、市報や近隣住民へのポスティングなどにより、事前に周知を図っていたそうだ。市は多くの苦情が寄せられたことについて、「配慮が足りず、反省している」と話している。

一般論として、野外ライブについては、法律や条例などでどう規制しているのだろうか。また、あまりに大音量で周辺住民が被害を被った場合、損害賠償責任のリスクもあるのだろうか。山之内桂弁護士に聞いた。

埼玉県富士見市が4月8、9日に市第2運動公園で開催したアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のコンサートで、東京都内にまで届くほどの騒音があったとして、市内外から約130件の苦情が寄せられた。

市地域文化振興課によると、約20キロ離れた東京都西東京市や東久留米市からも電話があったという。市民に対しては、市報や近隣住民へのポスティングなどにより、事前に周知を図っていたそうだ。市は多くの苦情が寄せられたことについて、「配慮が足りず、反省している」と話している。

一般論として、野外ライブについては、法律や条例などでどう規制しているのだろうか。また、あまりに大音量で周辺住民が被害を被った場合、損害賠償責任のリスクもあるのだろうか。山之内桂弁護士に聞いた。

●騒音の種別によって規制が分かれている

規制にはどのようなものがあるのか。

「騒音規制は、騒音の種別によって分かれています。

一般の騒音は、環境基本法16条1項に基づく環境省の定めた環境基準(http://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html)があり、具体的にどの地域にどの基準を適用するかは、都道府県知事・市長が条例で指定することになっています。航空機・鉄道の騒音については、その特性に応じて政府が別途環境基準・対策指針を決めています。工場及び事業場における事業活動並びに建設工事、自動車の騒音については、騒音規制法によって、罰則付きで規制が強化されています」

野外ライブについては、どのような規制があるのか。

「野外ライブは、現行法上では、一般の騒音にあたりますので、その音源の場所に適用される環境基準を順守すべきことになりますが、違反した場合の罰則はありません。

個人的には、仮設・一時的な音響設備であっても、一定の大音量を出せるものは、騒音規制法上の事業場に準じた罰則付き規制をすべきと考えますが、商業宣伝等の拡声器利用に関して平成元年6月に出された環境庁報告(https://www.env.go.jp/air/ippan/kakuseiki/attach/1989_06.pdf)や、騒音規制法の規制対象施設の在り方についての審議会報告(http://www.env.go.jp/press/files/jp/13760.pdf)からは、政府は規制強化の必要性を認識していない状況にあると思われます」

●健康被害があった場合は?

もし騒音で健康被害があった場合はどうなるのか。

「一般論としては、騒音によって、精神的・身体的な被害を受けた場合は、騒音源の管理者、所有者等に対して、不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。

もっとも、環境基準違反があったからといって、直ちに民事賠償責任を負うわけではありません。社会生活上、通常我慢するべき限度を超えた侵害行為により生じた、相当因果関係のある損害についてだけ賠償責任を負います。いわゆる受忍限度論というものです。どういう場合に受忍限度を超えたと言えるかは、個々の具体的事情によります」

それでは、今回の野外ライブの場合はどうなのだろうか。

「株式会社スターダストプロモーションが主催で富士見市が共催であり、音源は、富士見市の所有管理する第2運動公園にあったということなので、もし、同運動公園の敷地境界を越えて環境基準を超える騒音が伝搬したのであれば、主催者・共催者ともに環境基準違反になります。

そして、環境基準が、『療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域』に対する配慮を求めていること、埼玉県生活環境保全条例、富士見市騒音及び振動の規制基準等を定める規則において、商業宣伝の拡声器利用には、実施時刻・連続放送時間・場所に関する制限が細かく規定されていること、などを勘案すると、それらの基準等にある要配慮事項の定めにも関わらず、それらの事項への配慮を怠り、結果的に周辺住民に被害が発生することになれば、主催者・共催者が民事賠償責任を負う可能性はあるでしょう。

音の物理特性上、地形・気象状況等により、意外な場所にまで伝搬しうるので、完璧な対策は不可能かもしれませんが、少なくとも、近隣周辺住民に関する限り、きちんと敷地境界で騒音測定をして、音響機器の調整をしていれば著しい侵害行為を防げるのですから、もしそれを怠ったのであれば、被害結果に対する民事賠償責任は免れないと思います」

富士見市によると、今回のライブによる騒音で、重大な健康被害の訴えはないとのことだが、事前に騒音の測定などはしていなかったという。今後、同様のトラブルが発生しないよう、野外ライブを開催する際には、事前の対策が重要になってくるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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