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保育所不足で過熱する「保活」 入所のために「ウソ」を書いたら犯罪!?
2013年05月13日 11時30分

出産後も働く女性が増えたことで、幼い子どもを預ける保育所のニーズが首都圏を中心に高まっている。特に、保育料の安い「認可保育所」の入所希望者は定員を上回っている状況だ。厚生労働省によると、希望する保育園が満員だったなどの理由で入所できなかった「待機児童」の数は、2012年4月に全国でおよそ2万5千人もいたという。

このような状況の中、保育所を探す保護者たちの活動、俗に「保活」が年々、エスカレートしているという。自治体が、保護者の就労状況などに応じて点数化し、ポイントの高い子どもから優先的に認可保育所に受け入れているためだ。保護者の中には、入所の選考を有利にするため、勤務先に就労条件を変えてもらったり、入所しやすい保育所の近くにわざわざ引っ越す人もいるそうだ。

さらには、提出を求められた書類に嘘の状況を記入したり、偽装離婚までする夫婦もいるという。それでは、ここまで行き過ぎた「保活」は犯罪に問われる可能性はないのだろうか。刑事事件に詳しい萩原猛弁護士に聞いた。

●「勤務証明書」や「就労証明書」に、嘘の内容を書いた場合は?

「認可保育所とは、国が定めた設置基準を満たし、都道府県知事に認可された施設です。大幅な公的資金補助があるため、保育料は比較的安くなっています。どこの自治体でも、入所については選考基準があり、選考をパスすれば入所が認められます。

この入所申し込みに際して、申込書や提出書類に虚偽があった場合、申込者は刑事責任を問われる可能性があります」

萩原弁護士はこのように説明する。では、具体的にはどのような犯罪に問われるのだろうか。たとえば、提出した文書に嘘の内容があった場合は?

「もし、申込者が『勤務証明書』や『就労証明書』などを、勤務先の会社に内緒で勝手に作成して提出すれば、私文書の偽造罪(刑法159条)及び行使罪(同161条)となります。

勤務先会社が了解して、虚偽の内容の文書を作成してくれた場合には、申込者は文書偽造罪にはなりません。偽造とは、権限なく他人名義の文書を作成することを言いますので、この場合は、内容は虚偽であっても、作成権限のある会社が作成しているからです」

●入所選考の基準をクリアするために「偽装離婚」した場合は?

経済的な問題などから、あまりにも度が過ぎた「保活」になる場合もあるだろう。中には選考基準をクリアするために偽装離婚する夫婦もいるそうだが、この場合はどうだろうか。

「この場合、公務員に虚偽の申し立てをして戸籍に不実の記載をさせるという公正証書原本不実記載罪(刑法157条)が問題となります。

この点、夫婦の双方が『離婚届の提出』に合意している場合は、仮に実態として夫婦関係を継続するつもりだったとしても、戸籍上の離婚をする意思はあるので、公正証書原本不実記載罪に問われることはないでしょう」

つまり、形式的であっても離婚する意思に代わりはないので、「不実記載」ではないということだろう。では、これらの方法を使って実態とは違うように見せかけ、選考基準をクリアしているように装った結果、入所が許可された場合はどうなるのか。

「この場合、入所申込者は選考をパスするために、虚偽の内容が記載された書類を提出しています。つまり、本来は選考基準をクリアしていない『無資格者』であるにもかかわらず、選考基準をみたした『有資格者』であるかのように装って、自治体の担当者をだまして認可保育所への入所を認めさせたということになります。

これは、『人を欺いて財産上不法の利益得た』と評価できるので、入所申込者は、詐欺罪(刑法246条2項)に問われる可能性が高いでしょう」

エスカレートする「保活」に巻き込まれて、あせってしまう保護者の気持ちはわからないわけでもない。しかし、あまりにも行き過ぎた「保活」は犯罪につながる可能性があるのだ。越えてはいけない一線は、絶対に超えないように注意してほしい。

(弁護士ドットコムニュース)

出産後も働く女性が増えたことで、幼い子どもを預ける保育所のニーズが首都圏を中心に高まっている。特に、保育料の安い「認可保育所」の入所希望者は定員を上回っている状況だ。厚生労働省によると、希望する保育園が満員だったなどの理由で入所できなかった「待機児童」の数は、2012年4月に全国でおよそ2万5千人もいたという。

このような状況の中、保育所を探す保護者たちの活動、俗に「保活」が年々、エスカレートしているという。自治体が、保護者の就労状況などに応じて点数化し、ポイントの高い子どもから優先的に認可保育所に受け入れているためだ。保護者の中には、入所の選考を有利にするため、勤務先に就労条件を変えてもらったり、入所しやすい保育所の近くにわざわざ引っ越す人もいるそうだ。

さらには、提出を求められた書類に嘘の状況を記入したり、偽装離婚までする夫婦もいるという。それでは、ここまで行き過ぎた「保活」は犯罪に問われる可能性はないのだろうか。刑事事件に詳しい萩原猛弁護士に聞いた。

●「勤務証明書」や「就労証明書」に、嘘の内容を書いた場合は?

「認可保育所とは、国が定めた設置基準を満たし、都道府県知事に認可された施設です。大幅な公的資金補助があるため、保育料は比較的安くなっています。どこの自治体でも、入所については選考基準があり、選考をパスすれば入所が認められます。

この入所申し込みに際して、申込書や提出書類に虚偽があった場合、申込者は刑事責任を問われる可能性があります」

萩原弁護士はこのように説明する。では、具体的にはどのような犯罪に問われるのだろうか。たとえば、提出した文書に嘘の内容があった場合は?

「もし、申込者が『勤務証明書』や『就労証明書』などを、勤務先の会社に内緒で勝手に作成して提出すれば、私文書の偽造罪(刑法159条)及び行使罪(同161条)となります。

勤務先会社が了解して、虚偽の内容の文書を作成してくれた場合には、申込者は文書偽造罪にはなりません。偽造とは、権限なく他人名義の文書を作成することを言いますので、この場合は、内容は虚偽であっても、作成権限のある会社が作成しているからです」

●入所選考の基準をクリアするために「偽装離婚」した場合は?

経済的な問題などから、あまりにも度が過ぎた「保活」になる場合もあるだろう。中には選考基準をクリアするために偽装離婚する夫婦もいるそうだが、この場合はどうだろうか。

「この場合、公務員に虚偽の申し立てをして戸籍に不実の記載をさせるという公正証書原本不実記載罪(刑法157条)が問題となります。

この点、夫婦の双方が『離婚届の提出』に合意している場合は、仮に実態として夫婦関係を継続するつもりだったとしても、戸籍上の離婚をする意思はあるので、公正証書原本不実記載罪に問われることはないでしょう」

つまり、形式的であっても離婚する意思に代わりはないので、「不実記載」ではないということだろう。では、これらの方法を使って実態とは違うように見せかけ、選考基準をクリアしているように装った結果、入所が許可された場合はどうなるのか。

「この場合、入所申込者は選考をパスするために、虚偽の内容が記載された書類を提出しています。つまり、本来は選考基準をクリアしていない『無資格者』であるにもかかわらず、選考基準をみたした『有資格者』であるかのように装って、自治体の担当者をだまして認可保育所への入所を認めさせたということになります。

これは、『人を欺いて財産上不法の利益得た』と評価できるので、入所申込者は、詐欺罪(刑法246条2項)に問われる可能性が高いでしょう」

エスカレートする「保活」に巻き込まれて、あせってしまう保護者の気持ちはわからないわけでもない。しかし、あまりにも行き過ぎた「保活」は犯罪につながる可能性があるのだ。越えてはいけない一線は、絶対に超えないように注意してほしい。

(弁護士ドットコムニュース)

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