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「知らないうちに企業の広告に出ていた」 漫画家・東村アキコさんのブログが波紋
2014年12月25日 17時45分

人気漫画家の東村アキコさんが12月中旬、「知らず知らずのうちに、自分が特定の企業の広告に出演していた」とブログで告白し、波紋を投げかけている。ネットメディアのインタビュー取材に応じたところ、あとでそれが「広告企画」だったと知って驚いた、というのだ。

人気漫画家の東村アキコさんが12月中旬、「知らず知らずのうちに、自分が特定の企業の広告に出演していた」とブログで告白し、波紋を投げかけている。ネットメディアのインタビュー取材に応じたところ、あとでそれが「広告企画」だったと知って驚いた、というのだ。

●いつのまにかネットメディアの「広告企画」に・・・

ブログによると、東村さんは先日、ポップカルチャー情報サイト「ナタリー」とアルバイト情報サイト「an」のコラボ企画としてインタビューを受け、それがナタリーに掲載された。「教えてセンパイ~あの頃のバイト生活~東村アキコの場合」という記事だ。

東村さんはその記事の告知ツイートを見て、驚いた。いつのまにか自分の写真にanのロゴがあしらわれ「ポスターのようになっていた」からだ。違和感を抱いた東村さんがナタリーに問い合わせたところ、このインタビュー記事は、ナタリーがanから「50万円の対価」をうけて作る「広告企画」だったことが分かったのだという。

「コラボ企画、と言われていたけど、それはナタリーとanがコラボしてページを作る、というだけで、私がanの広告塔になるという話だとは思ってませんでした」と、東村さんはショックを隠せない様子だ。この件について、ナタリーからは「ご存じの上かと思っていました」という回答があったそうだが、「私、全然分かってなかったです」と記している。

「漫画の情報サイトが、漫画家使って、稼働させて、収入得るって…なんかおかしくないですか?」。東村さんはこう問いかけているが、こうしたトラブルは、弁護士の目にどう映るのだろうか。エンターテインメント業界の契約にくわしい太田純弁護士に聞いた。

●「合意があったかどうか」という問題

「今回のような広告は、一般に『記事広告』と呼ばれています。新聞・雑誌などの取材記事とよく似た体裁で編集された『広告』で、一見すると記事に見えるため、読者の注目を集めやすいという特徴があり、最近よく用いられています。

ただ、あくまで広告ですので、純粋な記事と異なり、ある程度、広告主側の意図を反映した構成が取られます。したがって、特定の広告主に影響を受ける場合には遠慮したかった、という東村さんの想いには、理解できる面があります。

消費者被害の事件などでは、『広告に出ていた人の責任』が議論されるケースもありますので、取材を受ける立場からすれば、自分が広告として使われるかどうかや、広告の内容・性質は重大な関心事といえるでしょう」

太田弁護士はこのように話す。では、東村さんのケースのように、取材を受けた側が「後でびっくり」というケースを、どう考えるべきだろうか。

「今回のように『記事を広告として掲載することへの合意があったか』という問題が生じないよう、広告出演については、本来なら契約書を結ぶべきでしょうね」

契約書がない場合、合意があったかどうかはどう判断されるのだろうか?

「契約書がない場合、合理的に考えて、当事者双方がどのような意思であったかを、事後的に事実認定することになります。『合理的意思解釈』という手法です。

その認定は、さまざまな要素を、さまざまな角度から総合的に検討して行います。今回のようなケースでは、たとえば次のような要素が重要でしょう。

(1)編集者からの事前説明の内容(記事広告のイメージ・前例が呈示されたか)

(2)インタビューの状況(所要時間や臨席者の属性と立場)

(3)完成した記事内容、ゲラが作家に示されたか

(4)取材が有償かどうか(支払い金額、支払い時期、支払いの趣旨)」

こうした要素を合理的に解釈して、「ご存じの上だったはず」と言えるなら、合意があったと認定されるということだ。

●有名人には「顧客誘因力」がある

もし、合意がなかったとみなされた場合や、告知ツイートに肖像写真を用いることに関して許諾を受けていなかった場合は、どうなるのだろうか?

「仮の話ですが、そのような場合は、パブリシティ権の侵害と判断される可能性が出てきます。

パブリシティ権とは、有名人の顔や名前が持つ『顧客誘引力』——つまり『人の目を惹き付けて、購買を促す力』を利用する権利をいいます。

今回は告知ツイートでも肖像写真が使用され、広告主の企業ロゴが併記されたということです。仮に、取材対象者に無断でこうしたことを行えば、パブリシティ権の侵害と判断される可能性が高いでしょう」

せっかく築いた信頼関係を、こうしたトラブルで崩してしまうのはもったいない。太田弁護士は次のように話していた。

「契約書の締結を省略した結果、後日、『意図に反していた』としてトラブルになるケースは、広告や取材に限ったことではありません。手間を惜しまず、契約書を交わしておくことが肝心です。

こうしたトラブルを回避するために、企業側で書式を完備するなどの工夫をし、関係者が互いに気持ちの良い仕事ができることを、法律家として願っています」

(弁護士ドットコムニュース)

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