1088.jpg
キャッシュレスの店で「現金で支払わせろ」とクレーマー 法的に軍配が上がるのは?
2018年05月28日 09時57分

日本でも現金を使わない「キャッシュレス化」が進んでいるようだ。たとえば、2017年11月にオープンしたロイヤルHDの洋食店「GATHERING TABLE PANTRY」(東京・馬喰町)。店にレジはなく、支払いは電子マネーかクレジットカードのみだという。

日本フードデリバリ―(東京都)が展開する社食サービス「みんなの食堂」もキャッシュレス。数十人分の料理を宅配し、社員たちが自分の分を取り分けていく「給食」のようなスタイルだ。弁護士ドットコムでもこの4月から導入し、オフィスに電子マネー決済用の端末が置かれるようになった。

キャッシュレスになれば、釣り銭がいらないし、レジ作業も省力化できる。売り上げとレジ内の現金を照合する「レジ締め」も不要だ。店に現金がないから、強盗被害だって減るかもしれない。

一方で、電子マネーの残高が足りなくなって、現金で払いたいという場面が出てくる可能性も…。通貨には、決済手段として使える「強制通用力」が存在するが、店が現金での支払いを拒否することはできるのか。上田孝治弁護士に聞いた。

日本でも現金を使わない「キャッシュレス化」が進んでいるようだ。たとえば、2017年11月にオープンしたロイヤルHDの洋食店「GATHERING TABLE PANTRY」(東京・馬喰町)。店にレジはなく、支払いは電子マネーかクレジットカードのみだという。

日本フードデリバリ―(東京都)が展開する社食サービス「みんなの食堂」もキャッシュレス。数十人分の料理を宅配し、社員たちが自分の分を取り分けていく「給食」のようなスタイルだ。弁護士ドットコムでもこの4月から導入し、オフィスに電子マネー決済用の端末が置かれるようになった。

キャッシュレスになれば、釣り銭がいらないし、レジ作業も省力化できる。売り上げとレジ内の現金を照合する「レジ締め」も不要だ。店に現金がないから、強盗被害だって減るかもしれない。

一方で、電子マネーの残高が足りなくなって、現金で払いたいという場面が出てくる可能性も…。通貨には、決済手段として使える「強制通用力」が存在するが、店が現金での支払いを拒否することはできるのか。上田孝治弁護士に聞いた。

●通常は「通貨」での支払いは拒めない

ーー強制通用力ってなに?

一般的に、「通貨」を用いて支払いをした場合、お店(債権者)はその受け取りを拒めずに、支払いが有効になります。これを強制通用力といいます。

日本銀行券(いわゆる紙幣)は「無制限に通用」します(日本銀行法46条)。一方、貨幣の場合は「額面価格の20倍まで」(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律7条)です。つまり各貨幣20枚を超えると受け取りを拒むことができます。

●「契約自由の原則」でキャッシュレスは可能 ポイントは「現金不可」の明示

ーーということは、キャッシュレスの店でも現金支払いは断れない?

契約が成立する前なら、当事者同士で支払方法を決めること自体は強制通用力とは関係なく許されています。たとえば、お店とお客さんとの間で、契約前に、現金での支払いはできない(キャッシュレス)と定めること自体は問題ありません。

このように、契約にあたって、支払方法などを当事者間で自由に決めることができることを「契約自由の原則」と呼びます。

もちろん、契約前にどういう支払方法にするかを具体的に決めておく必要があります。支払の段階になってはじめて、お店側が「現金不可」と一方的に要求しても通りません。

ーー「現金不可」であることを、あらかじめ客に分かってもらう必要がある、と

通常、お客さん側は、お店で物を買ったり、サービスの提供を受けたりする場合に、当然に現金での支払ができると考えています。「現金不可」という前提で契約をする場合には、お店側が「現金不可」であることを明確にお客さんに示して、あらかじめお客さんの承諾をとっておくことが必要です。

結局、このような支払方法に関する事前の特別の合意がなかったときは、通貨の強制通用力により、現金での支払いが有効とされ、お店側は受け取りを拒めないということになります。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る