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「買った株主優待券が偽物」フリマサイトでまさかの落とし穴…購入者も罪に問われる? 弁護士が解説
2025年07月30日 09時52分
#株主優待券

フリマサイトで偽の株主優待券を購入してしまう被害が相次いでいるようです。FNNプライムオンラインの報道では、買い取り業者のもとにも偽の優待券が持ち込まれることがあるといいます。

当然のことながら、偽の株主優待券を売ることは犯罪です。実は想像以上に重い罪に問われる可能性があります。また、購入した側も偽の株主優待券を使用してしまうと、罪に問われてしまう恐れがあります。

さらに、偽物と知らずに購入した側は、民事上の保護も受けられないのが現実です。

株主優待券をめぐる一連の行為には、どのような法的問題が潜んでいるのでしょうか。刑事事件に詳しい澤井康生弁護士が詳しく解説します。

フリマサイトで偽の株主優待券を購入してしまう被害が相次いでいるようです。FNNプライムオンラインの報道では、買い取り業者のもとにも偽の優待券が持ち込まれることがあるといいます。

当然のことながら、偽の株主優待券を売ることは犯罪です。実は想像以上に重い罪に問われる可能性があります。また、購入した側も偽の株主優待券を使用してしまうと、罪に問われてしまう恐れがあります。

さらに、偽物と知らずに購入した側は、民事上の保護も受けられないのが現実です。

株主優待券をめぐる一連の行為には、どのような法的問題が潜んでいるのでしょうか。刑事事件に詳しい澤井康生弁護士が詳しく解説します。

●株主優待券の偽造は重い犯罪となる可能性がある

──このようなケースでどのような法的問題があるのでしょうか

このようなケースでは、売り手にも買い手にも法的責任が生じるおそれがあります。順に解説します。

まず、株主優待券を偽造した人に対し、私文書偽造罪よりも罪の重い有価証券偽造罪が成立します。

株主優待券を偽造しても私文書偽造罪にしかならないと思っている方が多いと思いますが、実は株主優待券は「有価証券」にあたる場合があり、より重い有価証券偽造罪が成立することがあります。

有価証券偽造罪の法定刑は3カ月以上10年以下の拘禁刑とされており(刑法162条)、3か月以上5年以下の拘禁刑の私文書偽造罪(刑法159条)よりも重く処罰されます。

有価証券とは、財産上の権利が証券に表示され、その表示された権利の行使につきその証券の占有を必要とするものをいうとされています(最高裁昭和32年7月25日)。

株主優待券も、たとえば券面に株主名が記載されておらず、券を見せることで優待が受けられる物であれば、有価証券にあたります。

以上より、株主優待券を偽造した者には有価証券偽造罪が成立し、これをフリマサイト等で売った場合には真正な物として出品した時点で偽造有価証券行使罪(刑法163条)が成立し、真正な物としてエンドユーザーに売却した時点で詐欺罪(刑法246条)も成立します。

●購入した人も法的責任を問われる恐れ

──購入者も法的責任を問われる可能性はありますか

刑事上の問題として、購入した人が偽造株主優待であることを知った後に真正な株主優待券として行使した場合には、偽造有価証券行使罪や詐欺罪が成立しますので注意しましょう。

──購入者は民事上の保護を受けられないのでしょうか

偽造株主優待権であることを知った場合、すぐにそのフリマサイトで返品手続きをとるべきです。サイトごとに手続きの方法は異なりますが、出品者を評価する前に問い合わせやキャンセルを行うサイトが多いようです。

購入手続きを進め、取引を終了させてしまうと返品が非常に面倒になるケースがありますので気をつけましょう。

本物であると信頼してフリマサイトなどで株主優待券を買ったとしても、その権利を取得することはできません。あくまで偽物でしかないからです。

なお、株主優待券も有価証券であることから、民事上の「善意取得」という規定が適用される可能性があります。そこで、偽造株主優待券を購入した場合も、この規定により保護されないか気になる方もいるでしょう。

善意取得とは有価証券を無権利者から取引で譲り受けた場合であっても取引の安全を図るために権利を取得できるという制度です(民法520条の15など)。

しかしながら、善意取得が適用されるためにはその有価証券が真正なものであることが前提となります。したがって、偽造された有価証券を本物と信じて買っても、善意取得することはできません。

返品手続きをとらない場合には、出品者に対して損害賠償請求をすることになります(民法709条)。

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