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昏睡強盗「声優のアイコ」が別人格による犯行を主張 「多重人格」は罪に問われない?
2015年08月07日 11時52分

「声優のアイコ」を名乗り、男性に睡眠薬入りの酒を飲ませて金品を奪ったとして、昏睡強盗の罪に問われている女性が7月下旬、裁判で「別人格が起こした」と主張したと報じられた。

報道によると、女性は昨年9月の初公判で罪を否認したが、その後、起訴内容を認めていた。ところが、今年7月27日の東京地裁の被告人質問で、自身の中に複数の人格があると主張。「事件は自分の中にいる別の人格の犯行だ」などと述べたというのだ。

弁護側は、解離性同一性障害、いわゆる多重人格の可能性があるとして、女性の精神鑑定の実施を求めているという。一般的に、刑事裁判で罪を問われている被告人が「多重人格」だった場合、罪に問われないのだろうか。刑事事件にくわしい本多貞雅弁護士に聞いた。

「声優のアイコ」を名乗り、男性に睡眠薬入りの酒を飲ませて金品を奪ったとして、昏睡強盗の罪に問われている女性が7月下旬、裁判で「別人格が起こした」と主張したと報じられた。

報道によると、女性は昨年9月の初公判で罪を否認したが、その後、起訴内容を認めていた。ところが、今年7月27日の東京地裁の被告人質問で、自身の中に複数の人格があると主張。「事件は自分の中にいる別の人格の犯行だ」などと述べたというのだ。

弁護側は、解離性同一性障害、いわゆる多重人格の可能性があるとして、女性の精神鑑定の実施を求めているという。一般的に、刑事裁判で罪を問われている被告人が「多重人格」だった場合、罪に問われないのだろうか。刑事事件にくわしい本多貞雅弁護士に聞いた。

●「多重人格だからといって、ただちに責任能力が否定されるわけではない」

「刑事罰を与えるべきかどうかの前提として、『責任能力』というものがあります。

たとえば、幼い子どものように、自分が行ったことの結果を理解できないのであれば、『責任能力はない』とされます。責任能力がない人には、刑事罰を与えることができません。

ただし、被告人がいわゆる多重人格(解離性同一性障害)の場合、その責任能力について、特に確立された判断基準はありません」

本多弁護士はこのように述べる。多重人格の場合は「責任能力がない」とされるのだろうか。

「被告人が解離性同一性障害だからといって、ただちに責任能力が否定されるわけではありません。

責任能力があるかどうかは、被告人の(1)犯行当時の病状(2)犯行前の生活状態(3)犯行の動機・態様などを総合して判断されます。

解離性同一性障害の影響によって、犯行時に事理弁識能力(自分の行為の結果を理解できること)がなかったり、その事理弁識能力にしたがって行動を制御することができなかったと認められれば、心神喪失として無罪となります(刑法39条1項)。

これらが著しく減退していたと認められれば、心神耗弱として、刑が軽くなります(同39条2項)」

●解離性同一性障害で「責任能力」を否定したケースはあるか?

これまでに「解離性同一性」で無罪になったケースはあるのだろうか。

「公表されている裁判例を概観すると、弁護人が、解離性同一性障害により心神喪失または心神耗弱であると主張して、責任能力を争う事案は散見されます。しかし、その主張を認めた確定裁判例はないようです。

たとえば、主人格が別人格の行動を記憶しているなどとして、解離性同一性障害の症状自体を認めなかったり、あるいは、解離性同一性障害を患っていることは認めつつも、犯行時には犯行に影響を及ぼすような解離状態には陥っていなかったと判断するなどして、責任能力を認めています。

ただし、主人格と別人格が明確に分かれて存在し、主人格が別人格の行動を認識できず、かつ、コントロールもできなかったような場合は、別人格の犯行について責任能力が否定される余地はあるでしょう」

本多弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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