11058.jpg
「イスラム」という名前が入った口座はNG――こんな金融機関の対応は許されるのか?
2015年03月12日 15時03分

「イスラム」という単語が入った名義の口座を開設しようとしたら断られた――。そんな信用金庫の対応が新聞で報じられ、議論を呼んでいる。

報道によると、静岡県御殿場市に住む男性が2月下旬、自ら立ち上げた任意団体「日本イスラーム圏友好協会」の名義で沼津信金に口座を開設しようと、市内の支店に電話で相談したところ、職員から「イスラムという名前が入った団体では口座は開けない」と言われたという。

報道に対して、沼津信金はウェブサイトで、団体名に「イスラム」が含まれていることを理由に口座開設を拒否したわけではないと主張。「電話における当金庫とまったく取引のないお客様からのお申し込みであったこと」や「電話でのやり取りにおいて、お客様の口座開設の目的を十分に把握できなかったこと」が、口座開設を断った理由だと説明している。

このように、報道と信金の言い分は一部で異なっているようだが、一般論として、信金や銀行が「特定の名称を使っている」という理由で口座開設を拒むことは許されるのだろうか。金融取引にくわしい高島秀行弁護士に聞いた。

「イスラム」という単語が入った名義の口座を開設しようとしたら断られた――。そんな信用金庫の対応が新聞で報じられ、議論を呼んでいる。

報道によると、静岡県御殿場市に住む男性が2月下旬、自ら立ち上げた任意団体「日本イスラーム圏友好協会」の名義で沼津信金に口座を開設しようと、市内の支店に電話で相談したところ、職員から「イスラムという名前が入った団体では口座は開けない」と言われたという。

報道に対して、沼津信金はウェブサイトで、団体名に「イスラム」が含まれていることを理由に口座開設を拒否したわけではないと主張。「電話における当金庫とまったく取引のないお客様からのお申し込みであったこと」や「電話でのやり取りにおいて、お客様の口座開設の目的を十分に把握できなかったこと」が、口座開設を断った理由だと説明している。

このように、報道と信金の言い分は一部で異なっているようだが、一般論として、信金や銀行が「特定の名称を使っている」という理由で口座開設を拒むことは許されるのだろうか。金融取引にくわしい高島秀行弁護士に聞いた。

●口座開設を拒否できる場合とは?

「金融機関に口座を開設するということは、申込者と金融機関との間で契約を結ぶことです。契約を結ぶかどうかは、原則として当事者が自由に決めることができます。これを『契約自由の原則』といいます。

しかし、信金や銀行は、社会にとって不可欠な公共的な機関です。合理的な理由がない場合は、口座開設を拒否できないでしょう」

合理的な理由とは、どんなケースだろう?

「金融機関には、テロや犯罪に関する預金取引かどうかを確認し、疑わしいときには行政庁に届出する義務があります。

こうした義務は、犯罪収益移転防止法、テロ資金提供処罰法、組織的犯罪処罰法、麻薬特例法などに定められています。

これらの法律に照らして、違法な取引を目的としているという疑いがある場合は、預金口座開設などを拒否できると考えます」

●国家公安委員会等に照会したのか?

では、名称を理由にして拒否することは「合理的理由」があるといえるだろうか。

「仮に今回のケースで、一部報道にあるように、信金側が『イスラム』という名称が含まれていたことを理由に口座開設を拒否したとしましょう。

『イスラム』という単語から、テロ組織との関係を疑うというのであれば、国家公安委員会等に照会をするなどして、回答を得てから対応すべきだと思います。

そうした事実確認をせずに、単に『イスラム』という名前を見て、漫然と口座開設を拒否するというのであれば、合理的理由があるとはいえません。拒否することが許されない可能性があります」

高島弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る