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夫婦やカップルでも「不同意性交罪」成立、どう同意とる? 専門家「面倒くさくてもコミュニケーション積み重ねて」
2025年04月21日 09時51分
#不同意性交 #性的同意

2023年の刑法改正で、それまで「強制性交等罪」だったものが「不同意性交等罪」に変わり、「婚姻関係の有無にかかわらず」と明記された。これは、夫婦やパートナーであっても「性的同意」が求められることを示したものだ。

「カップルや夫婦は面倒くさいコミュニケーションを積み上げてほしい」

日本全国の学校を飛び回り、年間100回以上、「性」に関する講演をおこなっている助産師・櫻井裕子さんだ。

不同意性交等罪の認知件数が増加し、「性的同意」という言葉の理解が求められる中、「性への理解」について現状や課題を聞いた。

2023年の刑法改正で、それまで「強制性交等罪」だったものが「不同意性交等罪」に変わり、「婚姻関係の有無にかかわらず」と明記された。これは、夫婦やパートナーであっても「性的同意」が求められることを示したものだ。

「カップルや夫婦は面倒くさいコミュニケーションを積み上げてほしい」

日本全国の学校を飛び回り、年間100回以上、「性」に関する講演をおこなっている助産師・櫻井裕子さんだ。

不同意性交等罪の認知件数が増加し、「性的同意」という言葉の理解が求められる中、「性への理解」について現状や課題を聞いた。

●被害に「名前」がつくことで声を上げやすくなった

2023年の法改正以降、「不同意性交」への認知件数は増加している。警察庁によると、2023年には2711件だった認知件数が、2024年には3936件になった。

――この数字の増加には、どのような背景があると思いますか?

櫻井さん「いじめや虐待の問題と同じで、"被害である"と認識できるようになったことが大きいと思います。これまでは『しょうがない』『我慢するしかない』と思い込まされていた経験に言葉が与えられるようになった。

『あれは暴力だったんだ』『これは被害だったんだ』と気づくことで、言語化し、訴えることができるようになったのだと思います」

法改正による構成要件の見直しで暴力や脅迫の他にも、アルコールや薬物、社会的関係上の不利益の憂慮など幅広い言動が「同意しない意思を形成」するものと位置付けられた。

さらに、法務省のホームページで、不同意性交は「配偶者やパートナー間でも成立する」と明記された。

――今回の法改正で、「配偶者やパートナー間でも成立する」と明記された点については、どう受け止めていますか?

櫻井さん「大歓迎です。『夫婦だから』『恋人だから』、体の関係は当然だと思い込まされてきた人たちが、『拒否してもいいんだ』と気づける。それって、本当に大事なことだと思います。実際、私は"しょうがない"と諦めていた人たちの声を多く聞いてきました。

一方で、"恋人や夫婦であれば、無条件で相手の体を使ってもいい"と考えている人は意識の見直しが必要です。

少し窮屈に感じる人もいるかもしれませんが、 時代に合わせて、習慣や価値観を改めていくのはとても大事なことだと思います」

●対等な関係はないからこそ「非性的」な場面での同意が重要

性的同意という言葉が、社会的にも注目されるようになってきたが、その理解はまだ十分とは言えない。

公益財団法人「プラン・インター・ナショナル」とともに活動する若者たちの任意団体「プラン・ユースグループ」が高校生1000人に調査したところ、性的同意について「知らない」「説明できない」と答えたのは約7割に上った。

――櫻井さんの実感として、「性的同意」はどの程度認知されていると思いますか?

櫻井さん「全然されていないです。言葉としてはだいぶ浸透してますが、中身がよくわからないっていうのが現状だと感じます」

ーー櫻井さんの考える「性的同意」とはなんでしょうか

櫻井さん「難しいですよね。チェックリストがあって、達成できたら成立しますっていうものではなくて、互いのコミュニケーションの中で積み上げていくものだと思います。

私自身は性的同意の前の『非性的』な場面での同意が重要だと思っています。

性的同意はよく『対等性』『非強制性』『非連続性』『明確性』って言われますが、対等性の部分で、いつだって対等な関係って、カップルでも夫婦でも同僚でもないと思うんですよね。

強いほうの人が自分の優位性を自覚し、非性的なシーンから言いにくいことも言いやすいような誘い方をするのが、とても大事なことだと思います。

性的な場面は腕力や筋力、体格などが影響します。そのようなコミュニケーションを普段から心掛けることで、性的な場面でもシーンでもスムーズに意思疎通ができるのだと思います」

●アップデートされない昭和の価値観「絶望を覚える」

「男が引っ張る」「女は後ろをついていく」という考えは、もはや昭和の価値観のように思えるが、櫻井さんは学校での講演を通じて、この意識がアップデートされていないと感じている。

ーー令和の時代にそのような価値観は、高校生にはないと思っていました。

櫻井さん「絶望を覚えることがありますね。高校生はいまだにひきづっています。『僕は男として、女性をセックスで喜ばせなくちゃいけないと思うんだけれど、どんな努力をしたらいいですか』。 そんなことを質問してくる子がすごくたくさんいるんです。

そんな価値観が定着する前に、人権学習をする必要があると思います。ですが、定着したからって、一生変わらないっていうわけではないので、何か変わるきっかけになるような対話の機会が多くあるといいなと思います」

●夫婦間やパートナーは「面倒なコミュニケーション」積み重ねて

ーー性的同意により関係がギクシャクしませんか

櫻井さん「性的同意を取ることでギクシャクするようなら、その先に進まないほうがいいと思います。

たとえば、ワンナイトの関係ならアプリを使って手続き的にやればいいと思います。ですが、カップルや夫婦は面倒くさいコミュニケーションを積み上げてほしい。

すっきりしないかもしれないし、時間もかかるかもしれないけど、お互いに語り合いながら積み上げていくしかないと私は思います」

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