11317.jpg
「名ばかり取締役」に労災認定 取締役会に全く出ず、倉庫で仕分け作業 月220時間残業で脳出血
2021年04月23日 18時12分

運送会社の取締役だった男性(60)が脳出血を発症したことについて、いわゆる「名ばかり取締役」だったとして、長時間労働が原因の労災だと認められた。最長で月220時間を超える残業があったという。

男性はこのほど、会社に安全配慮義務違反があったなどとして約7500万円の損害賠償と、労働者としての地位確認を求めて東京地裁に提訴した。4月23日、男性の代理人弁護士が発表した。

残業代の削減などのため、権限のない「名ばかり管理職」にするケースが知られているが、今回のような「名ばかり役員」も珍しくないという。

運送会社の取締役だった男性(60)が脳出血を発症したことについて、いわゆる「名ばかり取締役」だったとして、長時間労働が原因の労災だと認められた。最長で月220時間を超える残業があったという。

男性はこのほど、会社に安全配慮義務違反があったなどとして約7500万円の損害賠償と、労働者としての地位確認を求めて東京地裁に提訴した。4月23日、男性の代理人弁護士が発表した。

残業代の削減などのため、権限のない「名ばかり管理職」にするケースが知られているが、今回のような「名ばかり役員」も珍しくないという。

●残業時間の平均は月180時間

男性が働いていたのは、千代田運送(千葉県松戸市)。同社のウェブサイトによると、従業員数は400名いる。

男性は1988年に入社、99年に取締役として登記された。

2015年2月に脳出血を発症し、その後、取締役を退任、2016年8月で退職扱いとなった。現在も身体にしびれが残った状態だという。

労基署の調査などによると、男性が働いていた配送センターでは2014年に人手が減り、男性の負担が増加。午前6時半までに出社し、午後10時ごろまで、場合によっては日をまたいで働くこともあったという。

労基署の認定では、男性の発症前の残業時間は、6カ月平均で182時間56分、最長で月223時間47分あり、過労死ラインとされる月80時間を大きく超えるものだった。

役員扱いだったため、労働時間の記録はなかったが、妻に退勤メールを送る習慣があり、その送信時間が同僚の終業時間とほぼ一致していることが、労働時間の推計に役立ったという。

●「取締役」の労働者性が争われた

男性は2017年7月に労災を申請したが、「取締役」のため、第一ラウンドの労基署、第二ラウンドの審査請求でも「労働者ではない」として、労災は認められなかった。

しかし、第三ラウンドに当たる再審査請求をへて、2020年6月に労災が認められた。労働者性が認められた理由については、主として次のような要素が考慮されている。

(1)会社全体に係る重要な方針を決定する立場になかったこと(業務執行権を有していない)

(2)取締役会にまったく出席していないこと

(3)他の従業員とともに、食料品の入庫・仕分けなどの現業業務に主として従事していること

(4)取締役就任後も退職手続きがなく、雇用保険も払われていること(労働契約が終了していないこと)

男性の「役員報酬」は月50万円だったが、労働者性が認められたことで、残業代を加味した給付基礎日額はおよそ4万1000円という高額になった。

なお、労災の再審査で判断が覆ることはあまり多くなく、2019年度の救済件数(取消件数)は442件中29件(6.56%)。今回のような労働者性をめぐるものは、2010年度からの10年間で見ても95件中4件(4.21%)だという。

会社を提訴したのは、2021年4月22日付。取材に対し、会社側は「コメントは差し控えたい」としている。

男性のコメント

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る