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「統一教会だけに全部押し付けて終わりにしないで」 宗教2世の漫画家、詩人が支援や注視うったえ
2022年10月31日 12時00分

「あんなに熱心に信じていた宗教は幸せにしてくれなかったと思いました」

安倍晋三元首相の銃撃事件に端を発して、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に注目があつまる中、宗教にのめりこんだ親のもとで育った「宗教2世」らが10月17日、弁護士ドットコムニュースのYouTube生放送で実態を語った。

壮絶な虐待の体験や家族の自死を経験したのは、漫画『「神様」のいる家で育ちました〜宗教2世な私たち〜』(文藝春秋)を著した漫画家の菊池真理子さんと、漫画のモデルの一人となった詩人のiidabii(イーダビー)さんだ。

宗教2世としてどのように生きてきたのか。そして、銃撃事件を踏まえて、私たちはどうしていくべきか。

【動画】宗教二世が語る家族の実像
https://www.youtube.com/watch?v=pPxrgaUhZEE

「あんなに熱心に信じていた宗教は幸せにしてくれなかったと思いました」

安倍晋三元首相の銃撃事件に端を発して、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に注目があつまる中、宗教にのめりこんだ親のもとで育った「宗教2世」らが10月17日、弁護士ドットコムニュースのYouTube生放送で実態を語った。

壮絶な虐待の体験や家族の自死を経験したのは、漫画『「神様」のいる家で育ちました〜宗教2世な私たち〜』(文藝春秋)を著した漫画家の菊池真理子さんと、漫画のモデルの一人となった詩人のiidabii(イーダビー)さんだ。

宗教2世としてどのように生きてきたのか。そして、銃撃事件を踏まえて、私たちはどうしていくべきか。

【動画】宗教二世が語る家族の実像
https://www.youtube.com/watch?v=pPxrgaUhZEE

●虐げられてきた子ども時代

菊池さんもiidabiiさんも、新興宗教の宗教2世だ。ともに母親が活動に熱心に取り組んでいた。

iidabiiさんの母親は、就学前からiidabiiさんを布教活動や集会に連れて行った。

教義に反する言動をすれば、容赦なく鞭で打たれた。おかしいと感じ、抵抗したいと思っても、身体的な虐待であきらめざるをえなかったという。

(iidabiiさんインタビュー記事)虐待受けた「宗教2世」、詩人として生きる「見て見ぬふりする世間が被害助長させた」
https://www.bengo4.com/c_18/n_13389/

菊池さんもまたネグレクトに近い生活を送った。

「小学校から帰ると、母は基本的に宗教の活動に出ていました。ご飯を食べさせてもらっても、お風呂にはあまり入れてもらえなかった。家族の温かみみたいなものが一切ない状態でずっと育ちました」

教えを強制する母親に、菊池さんはあることを感じていた。

「母が本当は宗教を信じていないんじゃないかと疑いだしたのは、小学校高学年くらいでした。母は宗教が嫌で泣いている時間があったんです」

次第に、母親は宗教活動に没頭し、病気もしたことで、鬱のような症状となり、菊池さんが中学生のときに自ら命を断った。

「母が自死をしてしまったとき、あんなに熱心に信じていた宗教は幸せにしてくれなかったと思いました」

菊池真理子さん 菊池真理子さん(左)と司会をつとめた田上嘉一弁護士

●たどりついた「表現活動」への反応

宗教活動からようやく離れたあとも、社会とのギャップを埋めることに苦労しながら、漫画と詩という「表現」で、自らの体験を発信した二人。

iidabiiさんが『虐待の証人』のPVをリリースすると、同じような環境で育った宗教2世らから、ものすごい数のDMがツイッターに届いたという。

「作品を見てくれたのは、うれしいんですけど、状況としては全然喜べない。想像以上に水面下で被害者がいることがわかった」

発信は2世を勇気づける一方、教団批判にもつながる。教団や現役信者からのネガティブな反応も懸念された。楽曲の発信にあたっては弁護士に相談をするほどの「覚悟」をもって臨んだ。

「その覚悟が私にも伝染した。怖いとは思わなかった」と勇気をもらって漫画を描いたのが菊池さんだ。漫画の連載は当初、別の出版社だったが、宗教団体からクレームが入ったことで打ち切りになった。

●文藝春秋から出版した経緯

「クレームに出版社が応じたかたちで漫画が休止になった。宗教2世は一回も声を取り上げられてこなかったし、宗教団体はお金も人数も大きな権力をもっている。その人たちと個人である2世の声を両論併記にしてはどうかと出版社から言われた。

それは全然平等じゃない。ものすごい力の差があるので、一度も声をあげていない2世の声を取り上げたい、圧力があっても描きたいと伝えたが、『どうしてもできません』と言われたので、私のほうから『やめます』と伝えた」

そのような経緯を知ったうえで、文藝春秋が声をかけた。

通常は編集者とおこなう編集会議に、弁護士や法務部が参加して、法的な問題がないか調査したうえで、問題ないという認識を共有したという。

●襲撃事件の前に「可視化」し、置き去りにするべきじゃなかった

可視化といえば、旧統一教会の問題、宗教2世の問題が大きくフォーカスされるようになったのは、安倍元首相の銃撃事件がきっかけだった。菊池さんたちはどのように受け止めているのか。

「とても嫌な事件だったが、ずっと社会から問題を置き去りにしてきた結果が、暴発のかたちで起こってしまったと思っている。ただ、学校の教員、地域の方や、友だちなど、(宗教2世を)助けたいと思ってくれる人はいたと思う。強い『信教の自由』の力の前に、手出しができないという事態が続いた」(iidabiiさん)

●旧統一教会を解散させるだけで終わりにしてはいけない

政府では現在、旧統一教会に対して、宗教法人法にもとづく質問権の行使や解散命令を出すか議論を進めている。

菊池さんたちは旧統一教会の法人解散要求を呼びかけているが、解散するだけで問題は解決せず、宗教2世を支援する枠組みも必要と考えている。

宗教と離れたあとで、普通の人のスタートラインに立つのも大変だったというiidabiiさんは、宗教2世が社会で活動する際に必要なサポートにたどりつくための情報や、支援が必要だと強調した。

また、菊池さんの視点は「統一教会の問題」より大きな枠組みに注がれた。

「統一教会だけを悪者にして全部押し付けて終わりにしようとする動きも感じます。そうではなくて、他の宗教の人も2世の人も、現役信者さんも差別することなく、社会全体の問題として、引き続き注視してほしいです」

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