韓国の人気グループ「BTS」のメンバー、ジョングクさんの自宅に、日本人の女性が侵入を試みて、現地の警察が捜査を進めているという報道がありました。
韓国メディア(「中央日報日本語版」など)の報道によると、50代の日本人女性が11月12日から14日にかけて、ソウルの龍山(ヨンサン)区にあるジョングクさんの自宅玄関ドアの暗証番号を何度も押した疑いが持たれています。
このような行為は、韓国の法律上はどのように扱われるのでしょうか。
●「住居侵入未遂罪」が適用される可能性
今回の行為に対し「住居侵入罪」(韓国刑法第319条)の未遂罪(同第322条)の適用が考えられます。
住居侵入罪は、他人の住居や管理する建物などに無断で入った者を罰するもので、3年以下の懲役または500万ウォン(日本円で約50万円)以下の罰金とされています。
今回の事件では、女性はドアの暗証番号を押したものの、実際には中に入ることができなかったようです。これが事実であれば、「住居侵入未遂罪」が適用されることになりそうです。
●実際に侵入していなくても処罰される
韓国の刑法も、日本の刑法と同様に、未遂犯は法律に特別の規定がある場合に限り処罰されます(韓国刑法第29条)。
住居侵入罪については、上に書いたように未遂犯を処罰する規定がある(韓国刑法第322条)ため、実際に侵入できなかった場合でも、侵入しようとした段階で処罰の対象となります。
なお、未遂犯の場合、実際に侵入した場合(既遂)よりも軽くすることができます(韓国刑法第25条第2項)。ただし、これは軽く「できる」のであって、必ず軽くなるわけではありません。
●女性が日本に帰国していたらどうなる?
報道によると、この女性が日本に帰国したかどうかは確認されていません。
まだ韓国にいる場合は、逮捕される可能性があります。一方、以前BTSのジンさんへの強制わいせつの疑いで問題となった日本人女性が逮捕されずに在宅起訴されたと報じられており、今回も同様に逮捕を伴わない手続きとなる可能性もあります。
すでに日本に帰国している場合はどうでしょうか。日本と韓国の間には犯罪人引渡条約があり、制度上は韓国が日本に対して引渡しを請求することは可能です。
この条約では、長期1年以上の拘禁刑に当たる犯罪が引渡しの対象とされており、住居侵入罪(3年以下の懲役)も形式的には該当します。また、日本国民であっても、この条約に基づき引き渡すことは法的には可能とされています(条約第6条第1項で裁量による引き渡しが可能)。
ただし、実際に引渡しが行われるには、韓国側からの正式な請求や日本国内での審査など、複雑な手続きが必要です。
住居侵入未遂という比較的軽い罪について、韓国側がそこまでの手続きを踏むかどうかは不透明ですし、日本側がこのような犯罪について引き渡しに応じるかどうかも分かりません。
現時点では捜査の初期段階であり、今後どのような処分になるかは韓国の捜査機関の判断次第です。逮捕を伴わない在宅での手続きとなる可能性も十分にあります。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)