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「こんなミス新入社員でもしない」うつで休職、復職後に自死…地裁が労基署処分取り消して労災認定
2025年01月19日 10時00分
#労災 #長時間労働 #自死 #うつ病

大手住宅設備会社に勤めていた男性社員(当時36歳)が2017年に自死したことについて、男性の妻が国に対し、労災認定に基づく遺族補償などの不支給処分を取り消すよう求めた訴訟で、東京地裁は12月12日、不支給処分の取り消しを命じた。

判決は、業務量の増加や2週間以上休日のない連続勤務、上司から受けた「こんなミス新入社員でもしない」といった発言などを認定。業務に起因して発症したうつ病により自死に至ったと判断したケースだった。

裁判では、最初に発症したうつ病がいったん寛解したのかどうかで、業務上の出来事など業務起因性などの判断対象が異なってくるため、寛解の有無などが争点となった。

妻の代理人を務めた波多野進弁護士は、判決について「全体として適正な判決」と評価する。以下、波多野弁護士による判決の振り返りをお送りする。

大手住宅設備会社に勤めていた男性社員(当時36歳)が2017年に自死したことについて、男性の妻が国に対し、労災認定に基づく遺族補償などの不支給処分を取り消すよう求めた訴訟で、東京地裁は12月12日、不支給処分の取り消しを命じた。

判決は、業務量の増加や2週間以上休日のない連続勤務、上司から受けた「こんなミス新入社員でもしない」といった発言などを認定。業務に起因して発症したうつ病により自死に至ったと判断したケースだった。

裁判では、最初に発症したうつ病がいったん寛解したのかどうかで、業務上の出来事など業務起因性などの判断対象が異なってくるため、寛解の有無などが争点となった。

妻の代理人を務めた波多野進弁護士は、判決について「全体として適正な判決」と評価する。以下、波多野弁護士による判決の振り返りをお送りする。

●争点は「最初に発症したうつ病が寛解したのかどうか」

東京地裁2024年12月12日、労基署が男性の自死について労災と認めない判断が誤りであり、業務によって自死に至ったことを認める判決が出されました。

未経験の不慣れな業務や長時間労働、「こんなミス新入社員でもしない」などの上司からの不相当な言動、職場の閉鎖性(3名のみで実質は上司と被災者の1対1の関係)が心理的負荷として重なり、2014年12月下旬頃までにはうつ病を発症し、翌年1月初旬から8月中旬頃まで休職し、復職後の2017年1月、自死に至りました。

主な争点は、最初に発症したうつ病が寛解したのかどうか、という点でした。

労災と認めるかどうかの司法における基準は、当該疾病等(本件ではうつ病)の結果が、当該業務に内在又は通常随伴する危険が現実化したものであると評価し得ることが必要である(最高裁平成8年1月23日判決、最高裁平成8年3月5日判決参照)ということで、精神障害の認定基準(行政基準)ではないですが、行政基準も事実上参考となるので、この寛解の行政の基準(取扱い)は行政訴訟でも無視できません。

(1)寛解していなければ、2014年12月下旬頃からさかのぼった6カ月間の業務上の出来事が評価の対象となり、(2)寛解していれば、2017年1月までに再度新たなうつ病を発症したことになるため、2017年1月からさかのぼった6カ月間の業務上の出来事が評価の対象となるためです。

労基署は、(2)と判断し、過重な業務などがあった(1)の時期を評価の対象とせず、結論として労災認定が認められませんでした。

●心理的負荷の強度→個別の「中」積み重ね、全体として「強」に

一方、東京地裁は、医学的な証拠や証言や供述を総合した結果、(1)の時期にうつ病を発症したと認定しました。後述のように、複数の業務上の出来事に関する心理的負荷の強度をそれぞれ「中」とし、総合して心理的負荷を「強」と評価し業務起因性を認めました。

【仕事内容、仕事量の変化】

うつ病発病前において、時間外労働時間数が大幅に増加したことや、発病前4カ月は会社の製品を取り扱う流通企業の代表者が集まる会の準備期間であり業務量が増加したことなどを認定し、心理的負荷の強度を「中」と判断されました。

【連続勤務】

男性は、発病前に2回の休日のない連続勤務(それぞれ12日間連続勤務)をしたことから、「心理的負荷による精神障害の認定基準別表1項目13『2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った』」に当たり、その心理的負荷の強度は「中」に該当すると認められるとしました。

【上司とのトラブル】

判決はハラスメントではなく上司とのトラブルという出来事として評価したものの、上司が認めていない「こんなミス新入社員でもしない」との発言について、発言直後に原告へ送信したLINEでのメッセージをもとに明確に認定しました。他の関係者の供述やLINEでのメッセージ、原告の供述の信用性を丁寧に検討して事実認定し、かつ、上司の発言についての心理的負荷も適正に評価し、心理的負荷の強度を「中」としました。

●判決の意義

判決は、業務上の複数の出来事を丹念に検討しそれぞれ「中」とし、かつ、支援・協力の欠如という観点も踏まえて上司とのトラブルの心理的負荷の強度を適正に評価しました。

また、上司とのトラブルは証拠が残りにくく、立証に困難を伴う、あるいは立証できないケースも珍しくありませんが、本件では被害の直後にLINEのメッセージを送信していることなどを適正に評価して、上司の発言はあったものと認定し、全体として適正な判決となっていると思います。

労基署は、カルテの表面的な記載内容(それとてわずか)をもとに男性のうつ病は寛解したと判断しましたが、判決は、原告側の医学意見書、LINEのメッセージ、妻の供述、購入した本の内容・時期(睡眠の本を購入しているが、それは不眠について対処するためのもので復職相当期間経過してから後に購入)などを踏まえて寛解を否定しており、個々の判断も適正だったと考えます。

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