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「歩きスマホ」VS「3人乗り自転車」歩道で事故になったらどっちが悪い?
2016年09月19日 09時01分

「歩きスマホやめて下さい!危ない!」。都内で派遣社員として働くユウコさん(30代)は地元の商店街を歩道で、前から走ってきた自転車に乗った女性から突然怒鳴られた。

ユウコさんは、近所にできた評判のレストランを探すために、スマートフォンの地図アプリを起動させていた。スマホの画面を凝視して歩いていたわけではないが、ちらちらと見ながら歩いていた。すると、前から自転車の前後に子どもを乗せた女性が、ベルを鳴らしながら怒鳴ってきたのだ。

ユウコさんは何も言い返すことはなかったが、女性から一方的に怒鳴られたことをモヤモヤしている。歩道は車道と段差が設けられたおり、人がすれ違うことがやっとという広さだ。また、歩道には、「この歩道上は、自転車から降りて押して歩きましょう」と地元警察による看板がところどころに立てかけてある。

ユウコさんは、スマホの画面を見ながら歩いていたことは反省しつつも、自転車に乗って歩道を我が物顔で走ることも問題ではないのかと考えている。

歩道を自転車が走ることは法的には問題ないのか。もし、歩きスマホの人と、自転車に乗った人が歩道で接触事故を起こした場合、どちらの責任が重いと判断されるのだろうか。道交法の問題に詳しい木野達夫弁護士に聞いた。

「歩きスマホやめて下さい!危ない!」。都内で派遣社員として働くユウコさん(30代)は地元の商店街を歩道で、前から走ってきた自転車に乗った女性から突然怒鳴られた。

ユウコさんは、近所にできた評判のレストランを探すために、スマートフォンの地図アプリを起動させていた。スマホの画面を凝視して歩いていたわけではないが、ちらちらと見ながら歩いていた。すると、前から自転車の前後に子どもを乗せた女性が、ベルを鳴らしながら怒鳴ってきたのだ。

ユウコさんは何も言い返すことはなかったが、女性から一方的に怒鳴られたことをモヤモヤしている。歩道は車道と段差が設けられたおり、人がすれ違うことがやっとという広さだ。また、歩道には、「この歩道上は、自転車から降りて押して歩きましょう」と地元警察による看板がところどころに立てかけてある。

ユウコさんは、スマホの画面を見ながら歩いていたことは反省しつつも、自転車に乗って歩道を我が物顔で走ることも問題ではないのかと考えている。

歩道を自転車が走ることは法的には問題ないのか。もし、歩きスマホの人と、自転車に乗った人が歩道で接触事故を起こした場合、どちらの責任が重いと判断されるのだろうか。道交法の問題に詳しい木野達夫弁護士に聞いた。

●歩道では「歩行者優先」

「自転車は道路交通法において『軽車両』とされ、『車両』の一種です。同法17条1項によれば、『車両』は車道を通行する義務がありますから、自転車も原則として車道を通行しなければなりません。

ただし、自転車の場合、例外的に歩道を通行できる場合があります。例外として認められるのは次の3つです。

(1)『自転車通行可』の道路標識がある場合

(2)運転者が13歳未満もしくは70歳以上、または身体障害者の場合

(3)安全のためやむを得ない場合(道交法63条の4第1項1号〜3号)」

木野弁護士はこのように述べる。こうした例外にあたる場合であれば、歩道において、自転車と歩行者は同じ立場だということなのだろうか。

「そうではありません。例外として自転車が歩道を通行できる場合でも、自転車は徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げることとなるときには一時停止しなければなりません(道交法63条の4第2項)」

歩きスマホについて、法的な規制はあるのか。

「歩きスマホについては危険性が指摘され、社会問題となっていますが、現時点において法規制はありません」

●事故が起きたら、「過失割合」はどうなるのか?

では、仮に今回のようなケースで接触事故が起きたような場合、責任の所在はどうなるのか。

「本件では、歩道の道幅は『人がすれ違うことがやっと』ということです。また、『自転車の方は、自転車から下りて押して歩きましょう』と地元警察署の看板が立てかけてあるとのことですから、『自転車通行可』の標識がある歩道とは考えられないでしょう。

また、『自転車の前後に子供を乗せた女性』ですので、13歳未満もしくは70歳以上または身体障害者のいずれにも該当しないと思われます。『安全のためやむを得ない』場合かどうかは不明ですが、特にそのような事情は見受けられません。

仮に、例外的に歩道を通行できる場合であったとしても、自転車には徐行義務がありますし、ぶつかりそうになれば一時停止義務があります。本件の自転車運転者がそれらの義務を守っていたようには思えません。

他方、歩きスマホについて現状では法規制がないことを考えると、今回のケースでは、明らかに自転車運転者のみが法令違反を犯しているといえるでしょう。仮に接触事故を起こした場合、明らかに自転車側の責任が大きいことになります。

歩道での自転車と歩行者の接触事故に関する過去の裁判例からすれば、過失割合は、自転車側が100、歩行者側が0となる可能性が高いのではないでしょうか。

もっとも、歩きスマホと自転車の接触事故の裁判例は今のところまだ少なく、歩きスマホが大きな社会問題になりつつあることを考えると、今後の裁判例の動向には注意が必要でしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

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