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那須雪崩事故「賠償責任が発生する可能性は高い」山の法律問題に詳しい弁護士が解説
2017年03月30日 09時49分

栃木県那須町のスキー場付近で3月27日に発生した雪崩事故は、高校生7人、教員1人が死亡するほか、40人が重軽傷を負う大惨事となった。

巻き込まれたのは、栃木県高体連主催の「春山安全登山講習会」の参加者たち。講習会には、県内高校の山岳部1、2年生の生徒51人と引率の教員11人の計62人が参加していた。

当日は朝から雪で、雪崩注意報が継続発令中。悪天候のため、引率教員らの判断で本来予定していた往復登山を中止し、ゲレンデ周辺で、雪を踏み固めながら進む「ラッセル訓練」をしていたという。

29日、記者会見した県高体連登山専門部の猪瀬修一委員長は「絶対安全だと判断した」と発言。危険な場所には近づかないため、生徒にはビーコン(電波受発信器)を持たせていなかったとも説明した。

栃木県警は業務上過失致死傷容疑での捜査を始めている。今後、責任問題はどうなっていくのだろうか。登山の問題にくわしい溝手康史弁護士に聞いた。

栃木県那須町のスキー場付近で3月27日に発生した雪崩事故は、高校生7人、教員1人が死亡するほか、40人が重軽傷を負う大惨事となった。

巻き込まれたのは、栃木県高体連主催の「春山安全登山講習会」の参加者たち。講習会には、県内高校の山岳部1、2年生の生徒51人と引率の教員11人の計62人が参加していた。

当日は朝から雪で、雪崩注意報が継続発令中。悪天候のため、引率教員らの判断で本来予定していた往復登山を中止し、ゲレンデ周辺で、雪を踏み固めながら進む「ラッセル訓練」をしていたという。

29日、記者会見した県高体連登山専門部の猪瀬修一委員長は「絶対安全だと判断した」と発言。危険な場所には近づかないため、生徒にはビーコン(電波受発信器)を持たせていなかったとも説明した。

栃木県警は業務上過失致死傷容疑での捜査を始めている。今後、責任問題はどうなっていくのだろうか。登山の問題にくわしい溝手康史弁護士に聞いた。

●過去の判例からすると、民事で賠償責任が発生する可能性は高い

今回の事故について、民事責任と刑事責任の両方が問題になります。民事責任は、損害賠償の問題です。登山講習を指導した教員には、生徒の安全を確保すべき注意義務があり、義務違反がなかったかがポイントになります。

国は、過去に何度も、原則として高校での冬山登山を行わない内容の通達を出しています。ただし、国の通達が直ちに法的な注意義務を構成するものではありません。

今回は、雪崩が起きたときに被害を受ける危険の高い場所にいたことが、事故につながりました。引率した教員は「雪崩の危険がない」と考えていたと思われますが、この点に判断ミスがあったということになります。この判断ミスが直ちに法的な過失を意味するわけではありませんが、同種事故の判例の傾向からすれば、民事裁判で雪崩の予見可能性が認められ、教員の過失が認められる可能性が高いでしょう。

なお、公務員である教員に過失があっても、国家賠償法の規定により、教員は損害賠償責任を負わず、代わりに学校を管理する自治体が損害賠償責任を負うことになります。

●近年、起訴された山岳事故の刑事裁判はすべて有罪判決

刑事責任については、業務上過失致死傷罪が問題になります。業務上過失致死傷罪の対象者は、現場で生徒を引率した教員や安全管理に携わった教員です。

かつて、山岳事故は刑事事件で捜査を受けても、不起訴になることが多く、刑事裁判の件数はわずかでした。しかし、近年、過失事故に対する世論の非難が厳しく、1999年頃からツアー登山を中心に、検察官が起訴するケースが増えています。

刑事裁判でも問題になるのは、「雪崩を予見できたかどうか」です。今回の警察の捜査では、どういう経緯で事故の起きたコースでの「ラッセル訓練」が決まったかなどが、調べられると考えられます。

一般的に刑事責任における予見可能性は、民事責任の場合よりも厳格に解釈されます。しかし、近年、裁判所は山岳事故の刑事上の予見可能性を広く認める傾向があり、1999年以降、起訴された山岳事故の刑事裁判はすべて有罪判決が出ています(ただし、すべて執行猶予付きの禁錮刑)。

今回の事故は、スキー場付近の樹林帯での訓練という油断と、講習会の指導者が相当の経験者だったことからくる過信が、判断ミスにつながったと思われます。無雪期の登山を含めて、あらゆる登山にリスクがあることを銘記する必要があるでしょう。過去に、無雪期でも学校登山で大量遭難事故が起きています。

(弁護士ドットコムニュース)

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