11802.jpg
徳川「葵紋」そっくりの商標登録に当主側が異議申し立て…認められる可能性は?
2016年11月09日 09時59分

水戸徳川家の「葵紋」によく似た商標が、イベント会社によって登録されたとして、水戸徳川家15代当主が理事長を務める公益財団法人が、特許庁に対して異議を申し立てていることが11月上旬に各メディアで報じられ、話題となった。

特許庁の情報などによると、伝統芸能の上演などを行う水戸市のイベント会社が、問題となっている商標を2015年に出願し、同年12月に商標登録が認められた。水戸徳川家の15代当主、徳川斉正氏が理事長を務める公益財団法人「徳川ミュージアム」は、この商標について、ミュージアムがすでに商標登録している家紋と似ているとして2016年3月に異議を申し立てた。

徳川ミュージアムの異議申し立てが認められる可能性はあるのか。商標の問題に詳しい岩永利彦弁護士に聞いた。

水戸徳川家の「葵紋」によく似た商標が、イベント会社によって登録されたとして、水戸徳川家15代当主が理事長を務める公益財団法人が、特許庁に対して異議を申し立てていることが11月上旬に各メディアで報じられ、話題となった。

特許庁の情報などによると、伝統芸能の上演などを行う水戸市のイベント会社が、問題となっている商標を2015年に出願し、同年12月に商標登録が認められた。水戸徳川家の15代当主、徳川斉正氏が理事長を務める公益財団法人「徳川ミュージアム」は、この商標について、ミュージアムがすでに商標登録している家紋と似ているとして2016年3月に異議を申し立てた。

徳川ミュージアムの異議申し立てが認められる可能性はあるのか。商標の問題に詳しい岩永利彦弁護士に聞いた。

●家紋は、商標の「不登録事由」に含まれていない

そもそも、家紋を商標として登録することはできるのか。

「原則として可能です。商標の不登録事由(商標登録できないもの)は商標法4条1項各号に挙げられています。たとえば、菊花紋章(1号)や国の紋章(2号)です。

4条1項の不登録事由は限定列挙と考えられています。つまり、不登録事由に定められていないものは商標登録できるということです。そして、家紋が不登録事由に列挙されていないので、登録可能ということになります。

これは、家紋というものが終局的には私的なものであり、公的なものではない、ということに由来するのだと思います」

商標登録に対する異議申し立ては、どんな制度なのか。

「第三者の申し立てをトリガーとして、いったん商標登録した処分が適切だったのかどうかを、特許庁自ら再度審査する制度です。

特許庁の能力も万能ではありませんし、同業他社の方が商売の実情などをよく知っていたりします。そういう方々から提出された資料を元に、再度審査を行うわけです」

●商標の「類似性」どう判断するのか?

今回のケースで、異議申し立てが認められる可能性はあるのか。

「ポイントを簡単に言えば、登録された商標や商標の使いみちが『類似しているかどうか』を判断します。他人が既に登録している商標と類似したものを登録することはできないので(商標法4条1項11号、先願に係る他人の登録商標)、類似していると特許庁が判断すれば異議申立てが認められることになります。

公益財団法人徳川ミュージアムの登録商標のひとつは、本件のイベント会社の登録商標と、『指定役務』(商標を使用または使用を予定しているサービス)について同じ区分を指定しており(類似商品・役務審査基準41類)、類似していると考えられます。

また、商標自体は少なくとも類似だと考えられます(同一と言っても過言ではないでしょう)。

そのため、本件では商標法4条1項11号(先願に係る他人の登録商標)に該当し、異議申し立てが認められる可能性は高いと思います。

このように、本件では異議申し立てが認められる可能性が高いと思いますが、これは三つ葉葵の紋章が徳川に縁のある者にだけ認められるからだとか、公共の利益に反するからという理由ではないと思います。

徳川に縁のある者の出願の方が、単に先だったからという理由だけでしょう。本件は、問題となった商標が古くからの家紋ということで、多少ニュースにはなりましたが、法的には単なるごく普通でありふれた商標の問題に過ぎません」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る