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「日大が『選手の解釈』の問題にするのは、許せない」 弁護士が指摘するスクールパワハラの構図
2018年05月23日 14時00分

日本大学アメリカンフットボール部の選手(20)が、関西学院大学との定期戦でした「悪質タックル」問題。5月22日、タックルした日大の選手が記者会見を開き、内田正人前監督やコーチからの指示だったと明かした。

ケガをした関学大の選手には、すでに直接謝罪しており、会見では「私自身がやらないという判断ができずに、指示に従って反則行為をしてしまった」との反省の意も表明された。

会見を受けて、関学大選手の父は、「自分のしてしまったことを償い、再生していただきたい。勇気をもって真実を話してくれたことに感謝する」とする声明を発表。

一方、日大は、監督やコーチが発した「1プレー目でクオーターバックをつぶせ」は、「ゲーム前によく使う言葉で『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味」だったとする声明を発表。学生が誤った解釈をしたために起きたプレーだったと弁明した。

学校問題にくわしい高橋知典弁護士は、日大選手のタックルは「スクール・パワハラ」が招いたものだと指摘。「『選手の解釈』の問題にするのは、許せない」と憤っている。

日本大学アメリカンフットボール部の選手(20)が、関西学院大学との定期戦でした「悪質タックル」問題。5月22日、タックルした日大の選手が記者会見を開き、内田正人前監督やコーチからの指示だったと明かした。

ケガをした関学大の選手には、すでに直接謝罪しており、会見では「私自身がやらないという判断ができずに、指示に従って反則行為をしてしまった」との反省の意も表明された。

会見を受けて、関学大選手の父は、「自分のしてしまったことを償い、再生していただきたい。勇気をもって真実を話してくれたことに感謝する」とする声明を発表。

一方、日大は、監督やコーチが発した「1プレー目でクオーターバックをつぶせ」は、「ゲーム前によく使う言葉で『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味」だったとする声明を発表。学生が誤った解釈をしたために起きたプレーだったと弁明した。

学校問題にくわしい高橋知典弁護士は、日大選手のタックルは「スクール・パワハラ」が招いたものだと指摘。「『選手の解釈』の問題にするのは、許せない」と憤っている。

●「選手の誤解」は言い逃れの常套句 

――日大は「選手の誤解」と言っているようだが?

私は、指導者からパワハラを受けている学生の代理人をすることもあります。今回のような問題が起きたとき、学校側が「選手が勝手に解釈した」と主張するのは、典型的な対応と言えるでしょう。言葉の解釈の話にして、指導者は「そんな指導をしたつもりはなかった」と弁明するわけです。

そうすると、明確に責任があるといえるのは、問題行為に直接関わっていて、決して言い逃れができない選手本人だけということになりますから、卑劣としか言いようがありません。

今回のようなケースは、大学スポーツの構造的な問題が表れていると思います。

――構造的な問題と言うと?

高校スポーツ以上に、大学スポーツの強豪校では「就職」先の紹介が、優秀な選手たちを集める力になります。指導者の口利きやチームの実績によって、選手の就職先や進路が決まるため、チーム内で指導者は絶対的な存在になるのです。

日大選手の陳述書によれば、監督から「やらないと意味がない」と言われたうえ、コーチからも「できませんでは済まされない。分かってるな」と念を押されたといいますから、事実ならパワハラであることは明白です。

しかし、そのような状況であっても、大学スポーツでは、指導者に苦言を呈したり、パワハラだとして学校に助けを求めたりすることが難しい。同じようにパワハラを受けている仲間たちからも「この先生がいなくなるなら学校をやめる」などと、敵視されかねないのです。

●大学にとってスポーツは「広告」 指導者に強く出づらい側面がある

――選手が不当な指示にも従わざるを得ない環境ができている?

チーム種目では、選手は個人のパフォーマンスを高めるだけでなく、チームのために尽くすことが求められます。もちろん、それ自体は決して悪いことではありません。

しかし、チームの方針は指導者が打ち出すわけですから、彼らのエゴや独善が表に出てくると、非常に厄介です。チームの顔は指導者ですから、選手がチームのためと思ってした言動も、指導者に否定されればチームの輪を乱すものといわれてしまいます。

このため、「(監督の)言うことを聞かないやつは、チームワークを乱す」だから「チームプレーができないので使えない」という判断が、まかり通っていることも、指導者に逆らいづらい状況をつくっていると思います。

――構造的に指導者の良識に委ねられている部分が大きい?

指導者がおかしなことをやっていたら、本来は学校側が、適切な対応をとるよう強く指導すべきです。しかし、大学にとってスポーツ実績は入学希望者を集めるための看板・広告なので、指導者に強く出ることができません。

大学が指導できないでいると、組織のおかしさは是正されないままです。選手たちは、指導者らに逆らっても無駄だと感じ、ますます従わざるを得なくなります。

●対応の遅れは大学のブランドを棄損しかねない 積極的な対策を

――どうやって、変えていけばよい?

大学は指導者に対し、ものをいえる環境を作る必要があるでしょう。たとえば、積極的に指導者の評価を行うなどして、まずいところは指摘できるようにしなければなりません。

最終的な責任を負うのは選手や指導者だけではなく、学校も同様です。今回の日大の問題は、単にアメフト部にとどまらず、他の部にも波及するでしょうし、日大のブランドにも大きな傷がついてしまいますから、主体的な取り組みが求められます。

また、指導者は「言葉」に対してより敏感にならなくてはならないと思います。選手たちは一生懸命スポーツと向き合っており、競技に人生さえ懸けていることがあります。そうした選手に対し、たとえば「〇〇をしないと試合に出さない」といった言葉は非常に重いものといえます。

スポーツでは、時として言葉足らずだったり、乱暴だったりする言葉が飛び交うことがありますが、表現によっては相手の人格を損ないます。言葉の重みについての常識から、指導を考える必要もあるのではないでしょうか。

(弁護士ドットコムニュース)

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