「旅費を全額出してもらったのに『体の関係』を持たなかったのは、法的に問題があるのでしょうか」
弁護士ドットコムにこんな相談が寄せられました。
相談者は、男性の友人と東京旅行を計画。ホテルの部屋は別々に取り、ディズニーランドにも出かけました。旅費はすべて友人が負担してくれたといいます。
ところが、旅行の最終夜、友人から「全額払ったのに何もなし?」と言ってきたそうです。相談者は性的関係を持つつもりはなく、断ったそうです。
その後、友人は落ち込んで「俺なんか生きている価値はない」といったメッセージを送り、体調不良も訴えてきたといいます。
罪悪感を覚えた相談者は「旅費を出してもらったのに、関係を持たなかったのはひどい話でしょうか」と悩んでいます。
旅行やデートなどの費用を負担してもらった場合、性的な関係を求められたらどうすべきか。また、断った場合に費用を返金する必要があるか。男女問題にくわしい古関俊祐弁護士に聞きました。
●関係断ったら返金義務はある?
──旅行やデートで一方が全額負担した場合、断った側に法的責任は生じますか。
お金のやり取りと性的な関係を結びつける合意は「公序良俗」に反し、無効とされるため、法的に強制できません。
「お金を払ったのだから性的な関係を持て」とか「性的な関係を持ったのだからお金を払え」という請求は認められないのです。
今回のようなケースでは、明確な合意はないようですが、仮にあったとしても、断った側に民事上の責任(性的関係を持つ義務や旅費返還の義務、慰謝料の支払い義務)は生じません。
●犯罪や不法行為にあたる可能性は?
──費用負担を理由に性的関係を迫る行為は、犯罪にあたりますか。
ただちに犯罪になるわけではありません。しかし、「パパ活」のように金銭を介した関係で「性的関係を結ばないと支払った金を返せ」と脅して強引に性的関係を持てば、不同意わいせつ罪や不同意性交罪にあたる可能性が出てきます。
逆に、性的関係をダシにしてお金をだまし取る行為(最近の言葉でいう『匂わせ』)は、詐欺罪に該当する可能性があります。『頂き女子』の事件がニュースを騒がせたこともありましたが、相手の恋愛感情をもてあそんでお金をだまし取る行為も犯罪になりえるものです。
●楽しい関係のために大切なこと
──デートや旅行をする際、トラブルを避けるためには、事前にどうすればよいのでしょうか。
弁護士的には「食事だけ」「遊びに行くだけ」というように、性的関係には発展させる気がないことをSNSなどで記録しておくことをおすすめします。ただ、それでは楽しめないかもしれません。
誘う側も、高額なデートに過度な期待をせず、手軽なところから誘うようにしましょう。出したお金の金額ではなく、自分自身の魅力やデート中の盛り上げで勝負してみてはいかがでしょうか。
誘われる側も相手との関係を壊したくないということであれば、2人きりではなく友だちを誘ったり、昼間のデートを重ねるなど、距離感を探るべきでしょう。世間を騒がせた頂き女子のようなことはせず、匂わせはほどほどにしていく「さじ加減」が必要です。
誘うも誘われるも人生の花。お互いが楽しいと思える時間を作るためにはお互いの気遣いが大事だと思います。