11974.jpg
「金子勇さんの無念を忘れてはならない」 Winny事件・桂充弘弁護団長の追悼文
2013年07月09日 20時40分

ファイル共有ソフト「Winny」の開発者である金子勇さんが7月6日、急性心筋梗塞で死去した。42歳。ネットではその早すぎる死を惜しむ声が沸き起こっているが、ここでは、金子さんと深い関わりのあった弁護士の追悼の言葉を紹介したい。

金子さんは卓越したソフトウェアの開発力によって高く評価されたが、2004年5月、Winnyの開発をめぐり著作権法違反幇助の疑いで逮捕された。一審の京都地裁で有罪判決を受けたが、二審の大阪高裁は逆転無罪の判決。2011年12月に最高裁が検察の上告を棄却し、無罪が確定した。

その無罪判決を勝ち取った弁護団の団長をつとめた桂充弘弁護士に、追悼文を寄稿してもらった。その全文を、以下に掲載する。

●Winny事件の弁護団長・桂充弘弁護士の追悼文

「Winnyの作者、金子勇さんが、42歳の若さで亡くなられた。慙愧に堪えない。

金子さんは、欲得とは無縁の、正に天才プログラマーでした。恥ずかしそうな伏し目がちの笑顔が印象的でした。

構成要件の曖昧な「幇助」での逮捕・起訴は、金子さんだけでなく、プログラマー全体に与えた萎縮効果が大きく、日本のプログラム開発は大きく出遅れてしまいました。日本の産業政策上も大きな汚点です。同様のシステムを利用しているSkypeなどの隆盛を見ても、金子さんの不当逮捕・不当起訴が大きな誤りだった事は、無罪判決を持ち出すまでもなく明らかです。

人生の中でもっとも技術者として充実していたはずの7年間、刑事裁判という後ろ向きの活動を強いられ、そしてその肉体までも蝕ばまれてしまった。捜査機関の責任は重大です。司法に係る者の一員として、捜査機関の「おごり」「誤り」を許すことができません。

失われた7年間を取り戻すべく本格的な活動を再開されたはずなのに、最高裁での無罪確定から僅か1年半で帰らぬ人となってしまった金子さん。金子さんの無念を忘れてはなりません。

Winny事件を、そして金子さんを忘れ去らせることなく、司法に係る全ての人が刑事司法を見直し、技術者の活躍できる国に変わることを心より願うものです。

弁護士 桂充弘」

(弁護士ドットコムニュース)

ファイル共有ソフト「Winny」の開発者である金子勇さんが7月6日、急性心筋梗塞で死去した。42歳。ネットではその早すぎる死を惜しむ声が沸き起こっているが、ここでは、金子さんと深い関わりのあった弁護士の追悼の言葉を紹介したい。

金子さんは卓越したソフトウェアの開発力によって高く評価されたが、2004年5月、Winnyの開発をめぐり著作権法違反幇助の疑いで逮捕された。一審の京都地裁で有罪判決を受けたが、二審の大阪高裁は逆転無罪の判決。2011年12月に最高裁が検察の上告を棄却し、無罪が確定した。

その無罪判決を勝ち取った弁護団の団長をつとめた桂充弘弁護士に、追悼文を寄稿してもらった。その全文を、以下に掲載する。

●Winny事件の弁護団長・桂充弘弁護士の追悼文

「Winnyの作者、金子勇さんが、42歳の若さで亡くなられた。慙愧に堪えない。

金子さんは、欲得とは無縁の、正に天才プログラマーでした。恥ずかしそうな伏し目がちの笑顔が印象的でした。

構成要件の曖昧な「幇助」での逮捕・起訴は、金子さんだけでなく、プログラマー全体に与えた萎縮効果が大きく、日本のプログラム開発は大きく出遅れてしまいました。日本の産業政策上も大きな汚点です。同様のシステムを利用しているSkypeなどの隆盛を見ても、金子さんの不当逮捕・不当起訴が大きな誤りだった事は、無罪判決を持ち出すまでもなく明らかです。

人生の中でもっとも技術者として充実していたはずの7年間、刑事裁判という後ろ向きの活動を強いられ、そしてその肉体までも蝕ばまれてしまった。捜査機関の責任は重大です。司法に係る者の一員として、捜査機関の「おごり」「誤り」を許すことができません。

失われた7年間を取り戻すべく本格的な活動を再開されたはずなのに、最高裁での無罪確定から僅か1年半で帰らぬ人となってしまった金子さん。金子さんの無念を忘れてはなりません。

Winny事件を、そして金子さんを忘れ去らせることなく、司法に係る全ての人が刑事司法を見直し、技術者の活躍できる国に変わることを心より願うものです。

弁護士 桂充弘」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る