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長浜から「屋台」が消える? 福岡市の新条例は「屋台減らし」が目的なのか
2013年07月09日 12時45分

福岡の夜といえば、屋台だ。地元に文化として根付き、これが目当ての観光客も多い。だが、この屋台を厳しく規制する条例が福岡市議会で可決され、9月から実施されるというのだ。

この条例は、屋台減らしを狙っていると見えなくもない。屋台の営業権譲渡が許されるのは1回だけ。それも相手は親族に限られる。血縁の跡継ぎがいなければ即廃業。将来的に新規参入店の公募は行うというが、営業期間は最長でも10年間までという。

そして、通行確保の観点から、屋台を設置した後の歩道の幅にも厳しい規制があるらしい。この道幅の関係で「長浜ラーメン」の発祥地、長浜からも屋台が消えるのではないかという話もささやかれている。

長浜の屋台は今後なくなる運命なのか。この条例は福岡市民にとってプラスになるのか。福岡市で法律事務所経営36年の中島繁樹弁護士に話を聞いた。

●長浜の屋台は、新条例では許可されない

中島弁護士自身にとっても、長浜は馴染み深い場所だという。

「長浜は、私の中島法律事務所から北西方向にほんの500メートルほど行った目と鼻の先です。ここは道路脇に、屋台10軒が並んでいます。極細めん、豚骨スープが特徴の博多ラーメン発祥の場所です。今は、ラーメンだけでなく焼鳥などのメニューもありますね。たしかに、ここの屋台がなくなってしまうのではないかと、地元では噂されています」

もともと長浜の屋台の営業には法律上の問題もあったようだ。

「長浜地区の屋台は、道路の歩道部分をいっぱいに占拠して営業していますが、福岡市から有効な『市道占用許可』をもらわないまま長年にわたって営業を続けているようなのです」

この状態が、「福岡市屋台基本条例」で変わるのか?

「9月1日から福岡市は、この条例にしたがって、屋台を設置しても『歩道の有効幅員が2メートル以上確保されること』を市道占用許可の条件とし、これに合わない場所で営業する屋台には『屋台除去命令』を出すことになります」

どうやら、長浜の屋台がなくなるというのは、単なる噂の次元ではないようだ。

●「都市資源としての屋台」の健全化を目指す条例

観光客には人気の屋台だが、地元では、かねてから問題が指摘されてきた。

「実は地元の福岡市民からは、屋台への苦情が多いのです。『不衛生だ』、『会計が不明朗だ』、『道路の通行を阻害している』という声は絶えません。福岡市にとっては、屋台の行政的規制は長年の懸案だったのです。そこで、できたのがこの条例です。目的は、『まちににぎわいや人々の交流の場を創出する』ための都市資源としての役割を、屋台に果たさせようとするところにあります」

「屋台減らし」が目的というより、むしろ市道占用許可を出す場合をはっきりさせ、同時に営業を健全化して都市資源として維持しようという意図のようなのだ。

しかし、博多ラーメンの発祥の地の長浜の屋台がなくなるのはやはり寂しい。中島弁護士も、個人的な希望と断ったうえで、こう提言している。

「今、福岡市は、長浜にある10軒に対して、すぐ近くの別の広い歩道を用意して、そこへの移転を打診していると聞きます。屋台経営者の方々は色々な思い入れがあって、難色を示しているようですが、ここはやむを得ないことと受け入れて、新しい安全な場所で長浜屋台の伝統を残していただけたらと思っています」

(弁護士ドットコムニュース)

福岡の夜といえば、屋台だ。地元に文化として根付き、これが目当ての観光客も多い。だが、この屋台を厳しく規制する条例が福岡市議会で可決され、9月から実施されるというのだ。

この条例は、屋台減らしを狙っていると見えなくもない。屋台の営業権譲渡が許されるのは1回だけ。それも相手は親族に限られる。血縁の跡継ぎがいなければ即廃業。将来的に新規参入店の公募は行うというが、営業期間は最長でも10年間までという。

そして、通行確保の観点から、屋台を設置した後の歩道の幅にも厳しい規制があるらしい。この道幅の関係で「長浜ラーメン」の発祥地、長浜からも屋台が消えるのではないかという話もささやかれている。

長浜の屋台は今後なくなる運命なのか。この条例は福岡市民にとってプラスになるのか。福岡市で法律事務所経営36年の中島繁樹弁護士に話を聞いた。

●長浜の屋台は、新条例では許可されない

中島弁護士自身にとっても、長浜は馴染み深い場所だという。

「長浜は、私の中島法律事務所から北西方向にほんの500メートルほど行った目と鼻の先です。ここは道路脇に、屋台10軒が並んでいます。極細めん、豚骨スープが特徴の博多ラーメン発祥の場所です。今は、ラーメンだけでなく焼鳥などのメニューもありますね。たしかに、ここの屋台がなくなってしまうのではないかと、地元では噂されています」

もともと長浜の屋台の営業には法律上の問題もあったようだ。

「長浜地区の屋台は、道路の歩道部分をいっぱいに占拠して営業していますが、福岡市から有効な『市道占用許可』をもらわないまま長年にわたって営業を続けているようなのです」

この状態が、「福岡市屋台基本条例」で変わるのか?

「9月1日から福岡市は、この条例にしたがって、屋台を設置しても『歩道の有効幅員が2メートル以上確保されること』を市道占用許可の条件とし、これに合わない場所で営業する屋台には『屋台除去命令』を出すことになります」

どうやら、長浜の屋台がなくなるというのは、単なる噂の次元ではないようだ。

●「都市資源としての屋台」の健全化を目指す条例

観光客には人気の屋台だが、地元では、かねてから問題が指摘されてきた。

「実は地元の福岡市民からは、屋台への苦情が多いのです。『不衛生だ』、『会計が不明朗だ』、『道路の通行を阻害している』という声は絶えません。福岡市にとっては、屋台の行政的規制は長年の懸案だったのです。そこで、できたのがこの条例です。目的は、『まちににぎわいや人々の交流の場を創出する』ための都市資源としての役割を、屋台に果たさせようとするところにあります」

「屋台減らし」が目的というより、むしろ市道占用許可を出す場合をはっきりさせ、同時に営業を健全化して都市資源として維持しようという意図のようなのだ。

しかし、博多ラーメンの発祥の地の長浜の屋台がなくなるのはやはり寂しい。中島弁護士も、個人的な希望と断ったうえで、こう提言している。

「今、福岡市は、長浜にある10軒に対して、すぐ近くの別の広い歩道を用意して、そこへの移転を打診していると聞きます。屋台経営者の方々は色々な思い入れがあって、難色を示しているようですが、ここはやむを得ないことと受け入れて、新しい安全な場所で長浜屋台の伝統を残していただけたらと思っています」

(弁護士ドットコムニュース)

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