1216.jpg
子も孫もいない私が死んだらどうなる? 「一度も会ったことのない甥や姪」にも財産は相続されてしまうのか
2024年08月30日 09時51分
#相続放棄 #相続人の範囲 #遺贈 #死因贈与

家族・親戚との折り合いが悪く、兄弟姉妹の子どもである甥や姪とほとんど面識がないという人もいるだろう。

一方で、自分に子どもや孫がなく、やがて訪れる死を意識した際、こんな気持ちが湧くかもしれない。あいつらに自分の遺産をやりたくない――。

一度も会ったことがないような甥や姪にも相続する権利はあるのだろうか。甥や姪に相続させたくなければ、対処する方法はあるのだろうか。山口真吾弁護士に聞いた。

家族・親戚との折り合いが悪く、兄弟姉妹の子どもである甥や姪とほとんど面識がないという人もいるだろう。

一方で、自分に子どもや孫がなく、やがて訪れる死を意識した際、こんな気持ちが湧くかもしれない。あいつらに自分の遺産をやりたくない――。

一度も会ったことがないような甥や姪にも相続する権利はあるのだろうか。甥や姪に相続させたくなければ、対処する方法はあるのだろうか。山口真吾弁護士に聞いた。

●「面識があるかどうか」は関係ない

——面識のない甥や姪にも相続権はあるのでしょうか

亡くなった人が、甥や姪と面識があるかどうかは、相続の権利を決める要素にはなりません。相続人の範囲や法定相続分は、民法に定められています(887条、889条、890条)。

まず、亡くなった人の配偶者は常に相続人となります。亡くなった人に子どもがいる場合は、子どもは配偶者とともに相続の第一順位となります。

子どもがいない場合は、亡くなった人の直系尊属が相続の第二順位となります。第一順位、第二順位の相続人がいない場合は、亡くなった人の兄弟姉妹が、相続の第三順位となります。

さらに、この兄弟姉妹が相続時にすでに亡くなっており、その子ども(亡くなった人から見て甥や姪)がいる場合は、甥や姪が相続する権利を持つことになります。

このように、相続人の範囲は民法で決まっていますので、甥や姪と面識がないからといって相続の権利を決める要素にはなりません。したがって、冒頭の事例では、甥や姪が相続権を持つことになります。

●知らない親族に相続させたくない→「遺贈」や「死因贈与」がある

——面識がまったくない甥や姪に相続させない方法はありますか

相続させない方法としては、遺贈や死因贈与が考えられます。

遺贈とは、遺言によって、遺産を相続人以外の人や団体に無償で譲ることをいいます。死因贈与とは、贈与者が亡くなったら、あらかじめ取り決めた財産を受贈者に贈与するという契約をしておく方法です。

遺贈は、亡くなった方の遺言によって一方的に決めることが可能ですが、死因贈与は、贈与者と受贈者の間であらかじめ合意をしておくことが必要となる点で違いがあります。

遺贈や死因贈与によって財産を第三者に譲る場合、第一順位の子どもや、第二順位の直系尊属が相続人となる場合は、民法に定められた最低限の相続財産を取得する権利である「遺留分」を侵害することはできません。

遺留分を侵害してしまうと、遺留分侵害請求をされてしまい、最低限の相続財産を取得されることになります。しかし、第三順位の相続人である兄妹姉妹やその子である甥や姪には、遺留分がありません。

したがって、遺贈や死因贈与によって、甥や姪以外の第三者に財産をすべて譲ることで、まったく面識のない甥や姪に遺産を相続させないことが可能となります。

——甥や姪も、面識のないおじ・おばからの相続を拒否できるのでしょうか

甥や姪からしても、面識のないおじ・おばからの相続を断りたい場合もあると思います。その場合、自分が相続人となったことを知ったときから3カ月以内に、家庭裁判所で相続放棄の手続きをとることで相続を拒否することが可能です。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る