12221.jpg
「有期雇用」10年まで更新へ 「政府の新方針」で働き方はどう変わる?
2013年11月14日 16時45分

1年間など期間限定で働く「有期雇用契約」。契約社員がその典型で、もし契約が更新されなければ失業してしまう不安定な状態と言える。

そうした状態を改善するため、今年4月に施行された改正労働契約法に、ある《ルール》が盛り込まれた。それは《有期雇用契約が5年を超えて反復・継続されれば、期間を定めない無期雇用契約に変えられる権利が与えられる》という内容だ。

ところが報道によると、政府はこのほど、この権利が発生する条件を、5年超から「10年超」に変更する方針を固めた。さらなる改正法案は来年、国会に提出される見込みだという。

たしかに、今春始まった《ルール》には、拒否反応も出ている。有名私大や大手喫茶チェーンなどが法施行直前に契約更新を打ち切ったり、「5年経つ前に契約更新をやめる」という方針を打ち出すなど、社会問題となっているのだ。

どうやら単純な問題ではなさそうだが、いま有期雇用契約で働いている人たちは、新しい政府方針をどう受け止めればいいのだろうか。日本労働弁護団事務局次長をつとめる今泉義竜弁護士に聞いた。

1年間など期間限定で働く「有期雇用契約」。契約社員がその典型で、もし契約が更新されなければ失業してしまう不安定な状態と言える。

そうした状態を改善するため、今年4月に施行された改正労働契約法に、ある《ルール》が盛り込まれた。それは《有期雇用契約が5年を超えて反復・継続されれば、期間を定めない無期雇用契約に変えられる権利が与えられる》という内容だ。

ところが報道によると、政府はこのほど、この権利が発生する条件を、5年超から「10年超」に変更する方針を固めた。さらなる改正法案は来年、国会に提出される見込みだという。

たしかに、今春始まった《ルール》には、拒否反応も出ている。有名私大や大手喫茶チェーンなどが法施行直前に契約更新を打ち切ったり、「5年経つ前に契約更新をやめる」という方針を打ち出すなど、社会問題となっているのだ。

どうやら単純な問題ではなさそうだが、いま有期雇用契約で働いている人たちは、新しい政府方針をどう受け止めればいいのだろうか。日本労働弁護団事務局次長をつとめる今泉義竜弁護士に聞いた。

●「10年」では本来の目的は骨抜きになる

「4月に施行された改正労働契約法18条は、不安定な有期契約で働いている労働者が安心して働き続けられるようにしようという目的で、『働いている人の希望によって期間を定めない契約に転換できる権利(無期転換権)』を創設したものです。

現在の『5年』という期間は諸外国と比較しても長く、たとえば韓国では2年、スウェーデンは3年、イギリスでは4年で無期転換されるというようになっているようです」

現制度の5年ですら十分「長い」といえそうだ。それをさらに延長するというのは、どんな意味をもつのか?

「『10年』に延長するというのでは、この無期転換権はほとんど意味がなくなるでしょう。『安心して働き続けられるようにする』という本来の目的は骨抜きになってしまいます。

たしかに、今問題となっている『5年直前での雇い止め』の危険は少なくなりますが、10年にわたって雇い止めの恐怖のもとにさらされて働かなければならないことになるのです。このような改正は食い止めなければいけないと思います」

しかし、そうなると現在にわかに問題となっている「5年で雇い止め問題」については、どのように対処すべきなのだろうか。

●雇用契約が「反復継続」されていれば、簡単に雇い止めはできない

「ここで有期労働者のみなさんに知ってほしいのは、改正労働契約法19条です。雇用契約が何度も反復更新されている場合や、更新されるという期待がある場合には、雇い止めが規制され、納得のいく理由のない雇い止めは無効となります」

19条は、ざっくり言うと、雇用の実態が無期契約と実質的に変わらないような場合や、契約継続が期待されている場合、会社が雇い止めをするためには「合理的な理由」などが必要、という内容だ。

そうなると、たとえば5年目や10年目で「雇い止め」を告げられたケースにも、この19条で対応できる可能性はあるのだろうか?

「無期転換権の発生を阻止するために、契約や就業規則に『契約更新は5年まで』という更新上限規定を定めてしまう例も、最近は散見されます。しかし、このような規定を作ったからといって、この19条の適用を免れることはできません。

このような『更新上限規定』は無効である、と述べている裁判官もいます。更新上限規定を契約に入れられそうになったり、雇い止めにあったりした場合には、決して自分だけで抱え込まずに、労働問題にくわしい弁護士や労働組合に相談してほしいと思います」

今泉弁護士はこのように述べ、注意を呼びかけていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る