12257.jpg
東京入管の外国人収容者「ハンスト」決行背景「在留資格のない外国人には人権がない」
2017年05月25日 17時56分

東京入国管理局の施設に収容された外国人が、施設内の待遇改善をもとめて、食事を一切とらない「ハンガーストライキ」を実施したことについて、非正規滞在者の支援活動をおこなっている団体が5月25日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。「仮放免者の会」事務局長の宮廻満氏は、被収容者たちの人権状況を改善するよう訴えた。

東京入国管理局の施設に収容された外国人が、施設内の待遇改善をもとめて、食事を一切とらない「ハンガーストライキ」を実施したことについて、非正規滞在者の支援活動をおこなっている団体が5月25日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。「仮放免者の会」事務局長の宮廻満氏は、被収容者たちの人権状況を改善するよう訴えた。

●ハンガーストライキのきっかけは?

宮廻氏によると、今回のストライキは、収容施設のあり方を考え直すようもとめる要望書を提出しようとしたところ、入管側が受け取りを拒否したことがきっかけ。5月9日の夕食から、東京入管の被収容者22人が食事をとらなくなり、最大70人が参加した。この動きに呼応して、名古屋入管でも5月15日、16日の2日間、約30人がハンガーストライキを決行。一時、全国約100人が参加した。

東京入管でのハンガーストライキは、12日から14日にかけて、3人(中国人、ナイジェリア人、バングラディッシュ人)が相次いで倒れたことから、参加者は水だけはとるようになり、22日の夕食まで続いた。最後まで参加していた一人は「体力の限界だけど、社会に知ってもらって、入管の対応が変化するか様子を見たい」と話したという。

●被収容者は、医者になかなか診てもらえない

そもそも、収容施設はどのような環境なのだろうか。宮廻氏によると、被収容者たちは、4〜11人部屋で生活している。部屋の広さは、定員数プラス1畳程度(たとえば、4人なら5畳)。被収容者の待遇は年々厳しいものになっているという。特に、体調悪化した場合にすぐに医者の診察を受けられない問題が深刻化している。

仮放免者の会の顧問弁護士をつとめる指宿昭一弁護士は「身体におかしいところあって診察を求めても、対応してもらえないことがよくある。急にひどい痛みが生じたり、発作が生じても、土日夜間は施設内に医者がいないので診てもらえない。外部の医者に診てもらえることもほとんどない」と述べた。

ある被収容者の場合、土曜日に痛みを訴えて電話をかけてきたため、指宿弁護士が救急車を呼んだところ、入管の入り口で追い返されたケースもあったという。結局、その被収容者が医者に診てもらえたのは月曜日だったそうだ。指宿弁護士は「こういうことが日常茶飯事に起きている」と怒りをにじませた。

ハンガーストライキに参加した一人は、指宿弁護士に対して「入管は、私たちのことを人間として扱っていない。これに抗議するためにハンストをするのだ」と話したという。

●「在留資格のない外国人には人権が保障されていない」

日本では、難民も移民も「入国管理法」のもと一元的に管理されている。たとえば、本国で迫害されて来日し難民申請しても、認められるまで、非正規滞在者として扱われる。法務省は近年、非正規滞在者(不法滞在、オーバーステイ、難民申請者)の取り締まりを強めている。

宮廻氏によると、入管施設に収容される人の中には、帰国すると迫害されるおそれがある人や、日本人と結婚した人、長期にわたって暮らして日本に生活基盤がある人も含まれており、いったん収容されるとなかなか出られなくなっているという。

指宿弁護士は「在留資格のない外国人には人権が保障されていない」「日本にも非正規滞在者を救済する制度はあるが、正しく運用されていない。日本人や永住者と結婚している場合など、合法的に滞在できるケースがある。すみやかにその制度を使うことが大事だ」と訴えていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る