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75歳以上の「ATM利用上限」30万円検討、どう思う? 賛成派「特殊詐欺に遭うよりマシ」反対派「大きなお世話だ」
2025年04月06日 08時16分
#ATM利用制限 #ATM30万円

特殊詐欺の深刻な被害をおさえるため、警察庁は「75歳以上の高齢者」を対象に「1日のATMの利用上限額を30万円」に制限する方向で検討しています。

報道によると、今後は国民からの声を聞いたうえで、ルールの改正に向けた調整が進められていくそうです。

詐欺グループに狙われる高齢者を守るためには、やむをえない措置かもしれませんが、引き出しや振り込みなどの用事の際に不都合が生じる人もいるでしょう。

弁護士ドットコムニュースが、高齢者やその家族らに考えを聞いたところ、賛成・反対双方の立場から、さまざまな意見が届きました。

「上限30万円」に反対した人にはどんな困りごとや不安があるのでしょう。賛成した人が考える利点とは。声を紹介します。

特殊詐欺の深刻な被害をおさえるため、警察庁は「75歳以上の高齢者」を対象に「1日のATMの利用上限額を30万円」に制限する方向で検討しています。

報道によると、今後は国民からの声を聞いたうえで、ルールの改正に向けた調整が進められていくそうです。

詐欺グループに狙われる高齢者を守るためには、やむをえない措置かもしれませんが、引き出しや振り込みなどの用事の際に不都合が生じる人もいるでしょう。

弁護士ドットコムニュースが、高齢者やその家族らに考えを聞いたところ、賛成・反対双方の立場から、さまざまな意見が届きました。

「上限30万円」に反対した人にはどんな困りごとや不安があるのでしょう。賛成した人が考える利点とは。声を紹介します。

●利用制限に賛成する人たち「親が詐欺にあいかけた」「何度も不便があるわけじゃない」

すでに制限対象の人、遠からず対象になる人たちが「上限制限」に賛成しました。

「ATMは高齢者には禁止しても良い。必要なら窓口で」(70代男性/埼玉)

「原則は、30万円とし、本人からの申請があれば50万円ないし100万円にできるようにするべき」(75歳男性/京都)

30万円以上の多額の支払いが必要なシーンが多いわけではないため、一時的な不便は仕方ないという人もいました。

「75歳以上の方が、ATMを使って30万円以上引き出す、振り込むというのは、1年間の何度もあることではないと思います」(65歳男性)

「自分の親が80代になり、はたして1日に30万円以上必要になる時はどんな時だろうと考えてみたのですが、入院費や葬儀費など大きくかかるときもありますが、ほとんどは分割や支払い期限の延長がきくものです」(50代女性/宮城県)

「店舗や事業者、公的機関など社会が、高齢者に現金で『まとまった金額が必要な時』を作らなければ、おおむね大丈夫じゃないかと思います。75歳以上の方の1日の現金支払額を30万円以内とする、高額なものは数日に分けて無利子で分割払い可とする、など」(48歳女性/フランス)

●「1日30万円でも甘すぎる」「私の母は窓口でも被害受けた」

「詐欺にあった自分を誰も助けてくれない」という指摘は痛切です。

「振込制限を50万円に設定しています。間違いを防ぐ意味も込めています。面倒だとは思いますが、老後の資金の確保のためにも制限があった方がいいと思います。無くなっても戻ってきません。自分で守るしか方法は無いので」(58歳女性/埼玉)

「実家の母(当時85歳)が3年前に電話でキャッシュカードの暗証番号を聞かれ、週明けにカードを回収に家に取りに来るという特殊詐欺に遭いかけたので、振り込み限度額を20万円に引き下げる手続きをしました。

大きな振り込みはマイナンバーカードがあれば窓口で対応してくれますし、業者の請求書や付添人の本人との関係を念入りに聞き取りされます。確かに面倒ですが、何百万も詐欺に遭うよりは良いと思います。高額振込は滅多にありません。制限は有効だと思います」(60歳女性/東京)

今回の制限の検討はATMでの利用を想定したものですが、このような制限ではまだ足りないという人もいました。

「うちの母親の被害はATMではなく、窓口からでした。銀行などの窓口からも制限をつけたほうが良いのではないでしょうか?」(54歳女性/福岡)

「高齢者のATM利用制限について、1日30万円では甘すぎると考えます。むしろ、上限は1日10万円、場合によっては5万円でも十分です。特殊詐欺が深刻な社会問題となっている現在、何の対策も取らないのは行政の不作為です」(60代男性/東京)

「特殊詐欺に関しては、騙し取られたお金に関しては戻らないので、被害を少なくするための措置は必要かと思います。私は高齢者福祉施設に勤務しており、高齢者の認知機能を懸念しています」(59歳女性/福岡)

続いては、制限に反対する人たちの意見です。

画像タイトル hellohello / PIXTA(ピクスタ)

●反対する人たち「個人の基本的人権が罪なく制限されて良いはずはない」

制限に反対する人たちは、不便を強いられることへの反発や、年齢を理由とした規制は「権利侵害」と主張しました。

「娘に10万円以上振り込みしたところ、一日に9万円以下しか、送信できないため、とても困りました」(68歳女性/愛知県)

「現在でも規定以上の現金を下ろすのに必要以上に本人確認書類を求められたり、使い道を聞かれたりして不愉快な気分になる。本来自分のお金だからいくら下ろそうと何に使おうと自由のはず。年齢で一律に制限するのはどうかと思う」(78歳男性/神奈川)

「まだ75歳未満ですが、75歳以上にATMの取引金額の利用制限されると、非常に困ります。頻繁ではありませんが、まとまったお金を引き出すことがあります。それができないとなると、とても困ります」(73歳女性/東京)

「88歳の母に頼まれて、銀行のATMに行ったらおろせなかった。銀行の人に聞いたら、一度に10万円までしか下ろせなくなってます。2回やってくださいと言われた。意味がわからない。勝手に制限されても入院費用とか困るんですけど」(59歳女性/東京)

「高齢者と騒ぎすぎ。免許証返納、預金引出し限度額などそれぞれ理由があり、一律で他人が決めるのは大きなお世話です」(76歳男性)

「特殊詐欺の取り締まりの問題のすり替えだと思います。簡単だから制限をかける、高齢者を守っているというのは詭弁だと考えます。高齢であっても、個人の基本的人権が罪なく制限されて良いはずはありません」(72歳女性/兵庫)

「親が亡くなったときに即座に下ろす当座の葬式費用などに不都合が出そうです」(52歳男性/埼玉県)

なお、今回の規制においては、多額の金銭を動かす個人事業主などは対象外になることも検討されているといいます。

「事業者は困りますね。もっと多額で動かすことが有るので」(66歳男性/宮崎県)

●「警察は詐欺する側をなんとかしろ」

また、特殊詐欺の被害を受ける側に不便を強制するのではなく、犯人側への取り締まりを強化するべきであり、警察の能力不足を指摘するような意見もありました。

「高齢者側に落ち度はないのだから、犯人側が悪さをできないような工夫に関して論点を進めていくべきで、守るという言葉を建前に、高齢者側に制限を加えてしまっては良くないと思います。この事件は根本に高齢者に対しての侮辱、不敬な部分がある。それを解決しないでただ単に高齢者を厄介者扱いでは高齢者がいたたまれない」(30代/東京)

「『オレオレ詐欺』が初めて発生してから20年以上は経過しているかと思いますが、特殊詐欺は一向に減少しません。行政や警察は『電話でお金の話は全て詐欺!!』と、もっと強いメッセージをたくさん発信して、国民全員に詐欺への警戒心をより一層高めると同時に、詐欺事件の罰則や刑罰をより一層重くして犯罪を抑止する強い政策が必要なのではないかと思います」(57歳男性)

「金額を制限するより、振込先が問題なので、振込先を事前登録するとか、振込時に何らかのチェックをする」(60代女性/神奈川)

編集部に連絡をくれた人たちの意見はどれも理解できるものでした。権利制限と被害防止のバランスを考えていく必要があります。

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