12263.jpg
“子持ち様論争” 当事者の葛藤 キャリアを積みたいと思っても「柔軟な働き方」認められず、将来に不安
2024年05月24日 09時55分
#子持ち様 #ワンオペ #フレックス #看護休暇

SNS上で幼い子どもがいる職場の同僚を「子持ち様」と揶揄(やゆ)するような投稿がSNSで散見されています。

弁護士ドットコムニュースが「子持ち様」をめぐる意見や体験談をLINEで募集したところ、さまざまな立場から多くの情報が寄せられました。

広島県の製造会社で正社員として働く30代女性には5歳と2歳の2人の子どもがいますが、「子持ち様と言いたくなる気持ちもわかる」と話します。

「それでも…」。女性が抱えるモヤモヤを聞きました。

画像タイトル 朝、女性が子どもを保育園に送りに行く際、車の助手席は荷物の布団やかばんでいっぱいになる(女性提供)

SNS上で幼い子どもがいる職場の同僚を「子持ち様」と揶揄(やゆ)するような投稿がSNSで散見されています。

弁護士ドットコムニュースが「子持ち様」をめぐる意見や体験談をLINEで募集したところ、さまざまな立場から多くの情報が寄せられました。

広島県の製造会社で正社員として働く30代女性には5歳と2歳の2人の子どもがいますが、「子持ち様と言いたくなる気持ちもわかる」と話します。

「それでも…」。女性が抱えるモヤモヤを聞きました。

画像タイトル 朝、女性が子どもを保育園に送りに行く際、車の助手席は荷物の布団やかばんでいっぱいになる(女性提供)

●有休や看護休暇を使い切る

女性の夫は単身赴任中で、週末だけ自宅に帰ってくる生活です。そのため、平日は女性が仕事をしながら子ども2人の世話をしています。

幸いにも親が近くに住んでおり、勤務中に子どもが体調を崩した場合などは親に頼んで迎えにいってもらっているといいます。

しかし、子どもの歯科検診や予防接種、アトピーの治療に加えて、保育園の行事や保護者懇談会など、子どもの外せない予定や行事が次々と入るため、1年間に会社が認めている有給休暇20日間と看護休暇80時間をここ数年はずっと使い切っています。

子どもの用事自体は1〜2時間で終わるものであっても、女性の会社にはその日の都合に合わせて勤務時間を早めたり遅らせたりできる「フレックスタイム」や時間単位で休みを取れる「時間休」、「リモートワーク」の制度が整っていないため、休みを半日か1日消化せざるを得ない状況です。

そこで女性は、子どもの急用に対応しやすくするため、1日6.5時間の時短勤務で働く選択をしています。

●「社員の可能性をつぶしている」

10年以上前から組合を通してフレックスタイム制度などの導入を会社に要望していますが、なかなか改善されていません。

「うちはそもそも女性が少ない会社なので、女性にバリバリ働くことを求めてはいない雰囲気があります。柔軟な働き方ができればもっと働ける女性がいるのに、働き方がガチガチに固定されているので、どうしても最低限の勤務時間の設定になってしまいます。これでは会社やそこで働く女性の可能性をつぶしていると思います」

画像タイトル 女性が子どもを預けている保育園の出席カード(女性提供)

そう話す女性ですが、「昔はもっとキャリアを積みたいと思っていました」。

社会人になって約15年が経ちますが、子どもを産んで育休を取ったり時短で働いたりする中でふと振り返ることがあるといいます。

「私はフルで働いてきた同期の3分の2ぐらいしか働いてこなかったのかなって。ついまじまじと計算してしまって、この先の希望がなくなってしまいました。これからは親の介護もあります。私自身どうしていきたいのか、迷走中です」

●柔軟に働ける環境を 「フォローはお互いさま」

”子持ち様”論争をめぐっては、女性にも思い当たる経験があります。

以前あるイベントに参加した際、多くの人が列で並んでいる中をベビーカーを押した女性が無理やり割り込むように通って行ったのを見て、嫌な気持ちがしたといいます。

「子持ち様とは言いたくないが、言いたくなる気持ちもわかります。職場のことで言うと、そもそも会社が専業主婦を想定しているので、制度が整えば子育て中の人ももう少し働けるようになり、他の人の負担も減ると思います。育児に関係なく、もっと柔軟に働けるようになってほしいです。誰もがいつ病気になるかわかりませんし、フォローされる側になるかもしれないので、お互いさまの気持ちでいたいです」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る