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外国産アサリを「国産」として販売…数十年間にわたる「産地偽装」の実態とは?
2023年02月13日 11時03分

韓国から輸入したアサリを「熊本県産」と偽装して販売したとして、熊本県内の水産会社の男性役員が、このほど食品表示法違反の疑いで福岡県警に逮捕された。

報道によると、この役員は2020年から2021年にかけて、産地偽装したアサリ約100トンを販売して、約4100万円分を売り上げた疑いがもたれている。

警察の調べに対して、役員は「国産アサリでなければ売れない」などと述べて、容疑を認めているという。

これまでも「熊本県産」として販売されていたアサリの多くが「外国産」だったという、いわゆる「産地偽装」問題が指摘されている。

はたして、どのような実態があるのだろうか。かつて検事として、アサリの産地偽装にまつわる事件を担当したことがある西山晴基弁護士に聞いた。

韓国から輸入したアサリを「熊本県産」と偽装して販売したとして、熊本県内の水産会社の男性役員が、このほど食品表示法違反の疑いで福岡県警に逮捕された。

報道によると、この役員は2020年から2021年にかけて、産地偽装したアサリ約100トンを販売して、約4100万円分を売り上げた疑いがもたれている。

警察の調べに対して、役員は「国産アサリでなければ売れない」などと述べて、容疑を認めているという。

これまでも「熊本県産」として販売されていたアサリの多くが「外国産」だったという、いわゆる「産地偽装」問題が指摘されている。

はたして、どのような実態があるのだろうか。かつて検事として、アサリの産地偽装にまつわる事件を担当したことがある西山晴基弁護士に聞いた。

●関係者は口をそろえる「国産でないと売れない」

――どのような実態があるのでしょうか?

ある業界関係者によると、過去数十年間にわたり、輸入アサリをいったん日本の海にまいて、短期間後に引き揚げるという作業を経ただけで、その輸入アサリを「国産アサリ」として表示して販売するという「産地偽装」が常態化していたようです。

今回の摘発事件と同じように、関係者の多くは、口をそろえて「国産でないと売れない」と吐露していました。

周りも輸入アサリを「国産」と表示して取引していたことから、自分だけ適切に「外国産」と表示しようにも、それでは売れなくなってしまうと考えざるをえない状況だったわけです。

――どうしてこのような事態に陥っていたのでしょうか?

その原因の1つとして、いわゆる「長いところルール」による運用があります。

「長いところルール」とは、アサリなどの水産物を複数の産地で育成した場合、最も育成期間が長い場所を原産地として表示するという考え方です。

この考え方による運用の下、育成期間を偽り、外国産アサリを「国産アサリ」と偽る取引が繰り返されてきたのです。

●国内での「育成期間」が長いと偽装されてきた

――具体的にはどのような「偽装」がおこなわれていたのでしょうか?

2010年(平成22年)にも、「食品表示に関するQ&A」が公表されて、アサリの稚貝を輸入し、又は国内から移植して繁殖させ、成貝を漁獲する場合、当該アサリの最も育成期間が長い産地を表示することとし、その場所での育成期間が長いことを証明できる必要があるという考え方が示されました。

しかし、その後も、育成期間を偽装した書類などで、国内での育成期間が海外での育成期間より長いと偽って、「国産」と表示する状況が続きました。偽装の方法には、こうした偽装書類の作成に加え、責任主体を曖昧にするため取引過程に複数の架空業者(輸入業者や蓄養業者)が介在しているかのように装うケースもありました。

――法制度はそのままだったのでしょうか?

アサリの産地偽装は、たびたび問題視されてきたこともあり、2022年(令和4年)3月、食品表示法に基づくルールが改正され、輸入アサリは、日本の海に短期間撒く「蓄養」をしただけの場合には、「外国産」と表示するものとし、例外として、国内において1年半以上育成し、その根拠書類(通関証明等)を保存している場合には、「国産」として表示できるものとされました。

この改正の背景には、アサリの採捕までの期間がおおむね3年程度であること、現状、稚貝の輸入は確認されていないのに対し、成貝を1年半以上育てることは難しいことなどから、前記改正後のルールの下では、輸入アサリを「国産」と例外的に表示できるケースに当たる場合はほとんどないだろうとの見込みがあったようです。

●さまざまな法令に違反するおそれ

――産地偽装の法的責任は?

産地偽装した場合の法的責任には、(1)食品表示法違反、(2)景品表示法違反、(3)不正競争防止法違反――などがあります。

食品表示法は、食品表示基準に違反する場合を措置命令等の対象とするとともに、虚偽の原産地表示をした食品を販売した代表者等を2年以下の懲役または200万円以下の罰金に(19条)、その代表者等の法人を1億円以下の罰金に処するとしています(22条1項2号)。

また、景品表示法は、実際よりも著しく優良な商品であると示して不当に顧客を誘引する表示を禁止しています(5条1号)。そのような表示をした場合には、課徴金命令の対象とするとともに(8条1項)、措置命令に違反した代表者等を2年以下の懲役、300万円以下の罰金に(36条1項)、代表者等の法人を3億円以下の罰金に処するとしています(38条1項1号)。

不正競争防止法は、原産地を誤認させる表示をした商品を売買する行為を「不正競争」の1つとして規定しています(2条1項20号)。その行為を他の業者からの販売差止や損害賠償請求の対象とするとともに(3条、4条)、不正の目的をもって、その行為をおこなった代表者等を5年以下の懲役、500万円以下の罰金に(21条2項1号)、その代表者等の法人を3億円以下の罰金に処するとしています(22条1項3号)。

さらに加えて、産地偽装するにあたり、取引過程に複数の架空業者(輸入業者や蓄養業者)を介在させる場合には、書類上、仕入価格(経費)等を架空計上するに至るケースもあり、この場合には、法人税法違反等の脱税事件に発展する可能性もあります。

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