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交通事故に遭ったときに支払われる「保険金」が増える!? ルールはどう変わるのか?
2014年06月21日 10時11分

一瞬にして人の命を奪う交通事故。もし、一家の大黒柱が亡くなった場合、残された家族は経済的にも苦しくなるだろう。そんなとき、遺族に支払われる「保険金」が支えとなる。その受取り金額が将来的に増額されることになりそうだ。

本来得られたはずだったのに、事故によって得られなくなった年収などの利益を、「逸失利益」と呼ぶ。受け取れる保険金の額は、逸失利益に基づいて決まる。日経新聞によると、法務省は今回、この「逸失利益」の算定方法を見直し、遺族が受け取れる保険金の額が増えるようにするのだという。

この変更は、法制審議会(民法部会)が7月にまとめる民法改正要綱原案に盛り込まれ、国会に提出されることになる。もし仮に改正案が成立すると、算定方法はどのように変わるのだろうか。交通事故の法律問題に詳しい前島申長弁護士に聞いた。

一瞬にして人の命を奪う交通事故。もし、一家の大黒柱が亡くなった場合、残された家族は経済的にも苦しくなるだろう。そんなとき、遺族に支払われる「保険金」が支えとなる。その受取り金額が将来的に増額されることになりそうだ。

本来得られたはずだったのに、事故によって得られなくなった年収などの利益を、「逸失利益」と呼ぶ。受け取れる保険金の額は、逸失利益に基づいて決まる。日経新聞によると、法務省は今回、この「逸失利益」の算定方法を見直し、遺族が受け取れる保険金の額が増えるようにするのだという。

この変更は、法制審議会(民法部会)が7月にまとめる民法改正要綱原案に盛り込まれ、国会に提出されることになる。もし仮に改正案が成立すると、算定方法はどのように変わるのだろうか。交通事故の法律問題に詳しい前島申長弁護士に聞いた。

●まずは「生涯年収」が基準になる

「まず、交通事故の『逸失利益』が、現在どのように計算されるのかを、具体的に見ていきましょう。

たとえば死亡事故なら、亡くなった人の生涯年収の計算が重要になります。

年齢35歳、年収500万円の会社員が死亡した場合の生涯年収は、500万円×32年(就労可能年数67歳)=1億6000万円となりますね」

保険金として1億6000万円を受け取れる?

「いいえ、そうではありません。『逸失利益』を計算するときには、生涯年収から『中間利息』が控除されます。

生涯年収は『将来受けるはずの利益』も含めた金額ですので、それをそのまま一度に受け取ると『利息』の分、もらいすぎになるからです」

差し引かれる「中間利息」は、どんな風に計算されるのだろうか?

「中間利息控除を計算する際には、裁判例はおおむね『ライプニッツ係数』といわれる計算方法を採用しています。

具体的には、勤続可能年数にこの係数を掛け合わせて計算します。先ほどの例なら、500万円×15.803(就労可能年数32年分)=7901万5000円が逸失利益となります」

生涯年収に比べ、半額以下になっているわけだが、ライプニッツ係数というのはどんな数字に基づいて計算されているのだろうか?

●背景には「法定金利」と「現実の金利」のギャップがある

「このライプニッツ係数は、民法の法定利率(年5%)を元に計算されています」

年5%というのは……いまの金利と合わないのでは?

「そうですね。現在、この5%と実勢金利(普通預金金利・年0.05%程度)との間には、大きな乖離があります。

そこで法務省は、今回の民法改正において、法定利率を年3%に引き下げることを検討しているのです。そうなればライプニッツ係数が計算し直され、その分だけ中間利息の控除率も低くなることが想定されます」

万が一、交通事故の被害に遭った場合に、より高い保険金が支払われる仕組みは、こうなっていたわけだ。

前島弁護士は「もっとも、保険金支払い額が増加した場合、保険料の引き上げなどのデメリットが生じる可能性も、課題として残されます」とつけ加えていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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