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コストコが正社員にも「時給制」を導入、「同一労働同一賃金」のメリットと課題
2016年08月21日 10時17分

大手外資系ショッピングセンターのコストコが、管理職以外の正社員でも時給制を導入していることが、情報サイト「ビジネス+IT」の記事「コストコが管理職以外『全員時給制』なワケ」で紹介されていた。

記事によると、コストコでは同一労働同一賃金の考え方で、全体の約50%を占める正社員にも時給制を導入しているという。全国で同じ仕事をするのであれば、同じ時給が支払われる。

正社員にも時給制を導入すれば、バイトや契約社員との格差も少なくなり、より柔軟な働き方が実現しそうだ。実際に同社の中途採用募集のページを見ると、パートタイムと正社員で全く同じ金額の時給が掲載されていた。

同一労働同一賃金を導入するかどうかは、日本でも議論になっているが、一般的な日本の企業が導入するにあたっては、どのようなメリットや課題が考えられるのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。

大手外資系ショッピングセンターのコストコが、管理職以外の正社員でも時給制を導入していることが、情報サイト「ビジネス+IT」の記事「コストコが管理職以外『全員時給制』なワケ」で紹介されていた。

記事によると、コストコでは同一労働同一賃金の考え方で、全体の約50%を占める正社員にも時給制を導入しているという。全国で同じ仕事をするのであれば、同じ時給が支払われる。

正社員にも時給制を導入すれば、バイトや契約社員との格差も少なくなり、より柔軟な働き方が実現しそうだ。実際に同社の中途採用募集のページを見ると、パートタイムと正社員で全く同じ金額の時給が掲載されていた。

同一労働同一賃金を導入するかどうかは、日本でも議論になっているが、一般的な日本の企業が導入するにあたっては、どのようなメリットや課題が考えられるのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。

●均等待遇を導入することのメリット

今回、一般的な議論として、仕事の内容や責任等の要素に鑑みて、バランスのとれた待遇を行う、いわゆる「均衡待遇」ではなく、正社員や非正規社員の仕事の内容や責任等が同一であれば同一の待遇を行う「均等待遇」であることを前提に話を進めていきたいと思います。

まず、一般的な日本の企業で導入するにあたってのメリットについては、以下の5点などが考えられます。

(1)非正規社員の待遇を正社員並みに引き上げることで、非正規社員の収入が増加し生活が安定化すること

(2)(1)により特に年収が低い男性の非正規社員の婚姻率の改善

(3)(2)により少子化対策にもつながる

(4)特に、家庭生活上の制約が大きい女性、正規雇用に就けない若者、定年後の高齢者などにおいて、その働きぶりに見合わない低い処遇を受け、その能力を発揮できていない者にとって、意欲向上や能力発揮が可能となり労働生産性が向上し、また、個人のライフプランやライフサイクルに応じて勤務形態を選択できる

(5)非正規社員の待遇改善により、企業側は優秀な人材を確保できる

●事実上の人件費削減に使われるリスクも

その一方で、一般的な日本の企業で導入するにあたってのデメリットにつきましては、以下の点が挙げられます。

まず、(1)日本では、職種別賃金制度(企業を超えて、職種が同一であれば同一の賃金が支払われる制度)がある欧米と異なり、何が同一の労働であるかが曖昧であるため、企業内でも何が同一の労働であるかが定まっておらず、混乱を招く可能性があります。

また、(2)日本の賃金制度は、欧米とは異なり「職務給」ではなく「職能給」を採用していることが多いため、職種が同一でも賃金が異なることが一般的である以上、いわゆる「均等待遇」の考え方は、本来、日本に馴染まないのではないかという懸念があります。

さらに、(3)今後これを導入する際、非正規社員の時給を正社員に合わせた高水準に引き上げて同等の賃金にするのではなく、正社員の時給を非正規社員の時給まで引き下げることで同等の賃金にしようとする企業が出てくる可能性が考えられます。

このように、事実上の人件費削減に使われるリスクがあり、その結果、正社員の意欲を減退させるというリスクもあります。

最後に、(4)非正規社員の雇用の減少という弊害を招く可能性もあります。これは、非正規社員に対して正社員並みの賃金を支払うことのできない企業としては、非正規社員を雇用することが割に合わないと考えることで、非正規社員を雇用しなくなるリスクを指します。このような結果になっては本末転倒ですので、慎重な検討が必要でしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

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