夏の全国高校野球に広島代表として出場していた広陵高校が、大会期間中に出場を辞退した。
今年1月、複数の野球部員が下級生に暴力を振るったとされる事案が、保護者とみられる人物のSNS投稿をきっかけに明らかになり、波紋を広げていた。
学校側は日本高校野球連盟(高野連)に報告し、同連盟から厳重注意を受けていたが、批判は日増しに高まっていた。甲子園大会の最中に出場辞退を決断するのは極めて異例だ。
●「投稿内容は概ね事実」
いじめ問題にくわしいジャーナリストの渋井哲也さんは8月6日、広陵高校に電話取材を行った。この日、同校には報道や関係者からの問い合わせが殺到していたとみられ、何度もかけ直してようやくつながったという。
渋井さんによると、学校側は保護者とみられるアカウントによるSNS投稿について「概ね事実」と認め、「関わった生徒の処分はすでに済ませている」と説明したという。
投稿には、監督が被害生徒に「2年生の対外試合なくなってもいいんか?」と発言したとされる場面も記されていた。渋井さんは「もし事実なら、監督の指導にも不適切さがあったのではないか」と指摘する。
●「連帯責任はやりすぎでは」
出場辞退の判断について、渋井さんは「県予選や甲子園出場決定前ならともかく、大会中は難しい判断だった」と話す。
一方で、暴力に関与していない部員もいることから「チーム全体が連帯責任を負うのはやりすぎではないか」と述べ、「関わった生徒や監督の出場停止という対応はあり得た」とも語った。
●「いじめ重大事態」に該当か
今回の事案は高野連と学校による処分はあったものの、いじめ防止対策推進法上の「いじめ重大事態」としては認定されていない。
渋井さんによると、暴行は1回であってもいじめにあたる。被害生徒はすでに転校しており、本来は重大事態として調査する必要があるという。
※渋井さんへの取材は、出場辞退発表前の8月8日に実施しました。