群馬県草津町の元町議、新井祥子氏が黒岩信忠町長から性被害を受けたとの虚偽の告発をした事件で、当初、町長や町を批判していた関係者らが謝罪する動きが相次いでいる。
社民党党首で参院議員の福島瑞穂氏は「町長の名誉と人権を著しく傷つけ、多大なご迷惑とご心痛をおかけしました」と書面で謝罪した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●民事・刑事ともに「虚偽認定」司法判断固まる
事件をめぐっては、虚偽の告発をした新井祥子氏に対し、民事裁判で黒岩町長への損害賠償を命じる判決が先に確定。さらに今年9月、刑事裁判でも有罪判決が言い渡され、その後確定した。
民事・刑事の両面で「黒岩町長によるわいせつ行為はなかった」とする司法判断が固まったことを受け、かつて新井氏の主張を信じて町長や町を批判した人から、謝罪やお詫びの表明が相次いでいる。
虚偽告訴事件の経緯をまとめた表(弁護士ドットコムニュース作成)
●福島氏「重大な誤りだった」と陳謝
草津町によると、10月21日、福島瑞穂氏から町に謝罪文が届いたという。
福島氏は文書で「新井祥子元町議による告発について、私がその内容を事実であると信じ、それを前提に発言したことにより、町長の名誉と人権を著しく傷つけ、多大なご迷惑とご心痛をおかけしました」と認めた。
前橋地裁の有罪判決が確定したことを踏まえて「私の認識と発言が重大な誤りであったことを厳粛に受け止めております」と記した。
さらに「町長としてのご職責を果たされる中で、私の言動により大きなご負担をおかけしたこと、そしてご家族や関係者の皆様にもご心労をおかけしたことに対し、重ねて深くお詫び申し上げます」と結んでいる。
●支援者グループや団体も次々に謝罪
新井氏をサポートしてきた「新井祥子元草津町議を支援する会」の関係者も10月8日、ネット上に「新井に騙され切って、本当に潔白で被害者だったあなたを性加害者と前提して、新井を支援しその犯罪活動を助け、あなたの名誉を傷つけてしまったことは幾重にもお詫び申し上げます」などと記載した文章を掲載した。
また10月15日には、性被害当事者の団体「一般社団法人Spring」が黒岩町長に面会して謝罪。翌日公表した文書で「私たちの行動が、草津町長への人権侵害に加担してしまっていたことが明らかになりました」「黒岩信忠様及び草津町並びに関係者の皆様に、深くお詫び申し上げます」などと述べた。
草津町などによると、有罪判決が出る前には、事件の発端となった電子書籍のライター男性や東京大学名誉教授の上野千鶴子氏が書面で謝罪しており、2024年衆院選に立候補した井戸正枝氏は面会の場で謝罪。国民民主党の玉木雄一郎代表も電話で謝罪したという。
草津町役場。3階にある町長室はガラス張りになっている(2024年5月、群馬県草津町で、弁護士ドットコムニュース撮影)
●事件の経緯と裁判所の判断
黒岩町長は、当初から性被害の疑惑を否定。2019年12月、新井氏と電子書籍を出版したライターを名誉毀損の疑いで刑事告訴した。
その後、新井氏が黒岩町長を強制わいせつ容疑で刑事告訴したことを受けて、町長は2021年12月、虚偽告訴の疑いで新井氏を刑事告訴。前橋地検が2022年10月に新井氏を起訴した。
一方、民事では、黒岩町長は2019年12月、虚偽の告発により名誉を毀損されたとして新井氏とライター、新井氏を支援していた町議の男性の計3人に損害賠償を求めて提訴。
前橋地裁は2024年4月、黒岩町長と新井氏の間に性交渉はなかったと認定し、新井氏に275万円(うち110万円をライターと連帯して)を支払うよう命じた。東京高裁も控訴を棄却し、165万円の支払いを命じる判決を下した。
刑事裁判では、前橋地裁が今年9月29日、名誉毀損と虚偽告訴の罪で懲役2年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡し、判決はその後確定した。