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新聞社が被災地支援で集めた「寄付広告」を自社の収益に・・・法的な問題は?
2016年03月26日 10時05分

愛知県豊橋市の地域紙「東愛知新聞社」が、東日本大震災の被災地に一部を寄付するとして集めた新聞広告料を、全額売り上げに計上していた問題で、同社の藤村正人社長が辞任することになった。新社長には、本多亮取締役相談役が4月1日付で就任する。

同社は愛知県東部を中心に朝刊を発行する地方新聞社。報道によると、2011年3月から2015年3月まで、震災の復興支援に関する特集面を8回掲載。広告料の半分を寄付するとし、それぞれで協賛広告を募集していたが、集まった約900万円をすべて収益として処理していた。

2015年11月、実際には寄付していなかったことが発覚し、約450万円を寄付した。同社は「経理ミス」として、故意ではなかったと説明している。

この問題で同社は、今年1月1日付で役員報酬3割減などの社内処分を実施。2月には、日本新聞協会から12カ月の会員資格停止の処分を受けた。今回のケースで同社が法的な責任を負う可能性はないのだろうか。泉田健司弁護士に聞いた。

愛知県豊橋市の地域紙「東愛知新聞社」が、東日本大震災の被災地に一部を寄付するとして集めた新聞広告料を、全額売り上げに計上していた問題で、同社の藤村正人社長が辞任することになった。新社長には、本多亮取締役相談役が4月1日付で就任する。

同社は愛知県東部を中心に朝刊を発行する地方新聞社。報道によると、2011年3月から2015年3月まで、震災の復興支援に関する特集面を8回掲載。広告料の半分を寄付するとし、それぞれで協賛広告を募集していたが、集まった約900万円をすべて収益として処理していた。

2015年11月、実際には寄付していなかったことが発覚し、約450万円を寄付した。同社は「経理ミス」として、故意ではなかったと説明している。

この問題で同社は、今年1月1日付で役員報酬3割減などの社内処分を実施。2月には、日本新聞協会から12カ月の会員資格停止の処分を受けた。今回のケースで同社が法的な責任を負う可能性はないのだろうか。泉田健司弁護士に聞いた。

●「詐欺」「横領」「契約条件の不履行」について検討

「このような話を聞くと、東日本大震災に便乗した詐欺が相次いでいたことを思い出します。こういった事案が報道されるたびに悲しい気持ちになったものです」

泉田弁護士はこのように語る。

「はじめから寄付するつもりがなかったのならば、詐欺になります。しかし、新聞社が主張しているように、単純に寄付を忘れただけだったとしたら、詐欺とは言いにくいでしょう。

また、新聞社は集まった全額を収益(売上)としていたとありますので、寄付のお金を自分のものにした(横領した)ようにも見えます。たしかに、寄付すべき部分は『預り金』とすべきであり、売上とするのは、経理上の問題があるとの指摘が可能なのかもしれません。

しかし、横領かと言われると、横領したお金を収益(売上)に計上するなどという、ちぐはぐなことは考えられませんし、新聞社がそのような大胆不敵なことをするとも思えませんから、横領とも言えないでしょう」

広告主から訴えられる可能性はないのだろうか。

「協賛広告を出した人からしてみれば、支払った額の半分が寄付されるという条件つきだったわけです。その点では、新聞社側に条件の不履行があり、支払った代金を返せと言えるのではないかという問題があるにはあるでしょう。

ただ、結局、最終的には寄付していますので、あまり議論しても仕方ないように思います。こう考えていくと、新聞社が法的な責任を負う可能性はないと考えられます」

「ただし」と言って、泉田弁護士はこう続ける。

「寄付してもらえると考えて広告料を払った企業等の善意を踏みにじっており、あまりにお粗末と言わざるを得ません。復興支援はとても大切であり、こういった取り組みは有意義なはずなのですが、肝心の寄付を忘れる程度の薄弱な意識でこのようなことをしてほしくないと一般市民としては思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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