1274.jpg
文字がビッシリ埋まった保険の「約款」 きちんと読まないと損をする?
2014年05月04日 19時36分

生命保険や旅行保険などの契約の際に、「目を通してください」といって渡される「約款」。重要な文書だが、細かな説明や注意書きなどが満載で、見ているだけでも頭が痛くなる、という人もいるのではないだろうか。

最近では各社がネットで「電子版」を公開しており、文字拡大やキーワード検索ができるようになるなど、多少は利便性があがっているようだ。それでも、中身をきちんと読み込んで理解するには、相当な根気が必要といえる。

この「約款」。いち利用者としては、どこまで読み込むべきなのだろうか。また、そもそも約款とはどんな性質の文書なのだろうか。大手保険会社の勤務経験があり、保険の問題にくわしい好川久治弁護士に聞いた。

生命保険や旅行保険などの契約の際に、「目を通してください」といって渡される「約款」。重要な文書だが、細かな説明や注意書きなどが満載で、見ているだけでも頭が痛くなる、という人もいるのではないだろうか。

最近では各社がネットで「電子版」を公開しており、文字拡大やキーワード検索ができるようになるなど、多少は利便性があがっているようだ。それでも、中身をきちんと読み込んで理解するには、相当な根気が必要といえる。

この「約款」。いち利用者としては、どこまで読み込むべきなのだろうか。また、そもそも約款とはどんな性質の文書なのだろうか。大手保険会社の勤務経験があり、保険の問題にくわしい好川久治弁護士に聞いた。

●効率的な取引のために「約款は不可欠」

「約款は、多数の利用者との契約を大量かつ画一的に処理するため、企業などがあらかじめ作成した契約条項の集まりです」

好川弁護士は、「約款とは何か」について、このように説明する。

「生命保険に限らず、鉄道・バス・飛行機・船舶などの旅客運送や、宅配・引越などの物品運送、旅行・通信・不動産・銀行などの各種取引、ソフトウェア製品の購入、インターネットサイトの利用など、私たちの生活のなかには、約款があふれています。

約款は、数多くの定型的な取引を、すばやく効率的に行うために不可欠であり、社会的必要性はきわめて高いものです」

好川弁護士によると、裁判でも「約款の有効性」が広く認められているという。

「約款によることが通例で、利用者の信頼の高い取引分野では、利用者は『約款によって取引する意思』があるものと推定されます。そういうケースでは、たとえ利用者が個々の契約条項を知らなくても、約款が利用者を拘束する、とされています」

こうした領域では、約款が「常識的なルール」として通用していて、利用者側もそれを知っているとみなされるということだろう。

●「非常識な内容の約款」は認められない

そうなると心配なのが、もしその約款に「こっそりと常識はずれのルールが盛り込まれていたら」という点だ。

「約款は、交渉で内容を修正することは予定されていません。利用者は、約款を受け入れるか、そもそも取引をしないかの二者択一しかありません。

そのため、約款を利用した取引では、利用者保護の観点から、利用者があらかじめ約款の内容を知りえる機会が保障され、内容も合理的であることが強く要請されます」

つまり、だまし討ちや、非合理的な内容の約款は許されないということだ。なお、約款の内容については、その業界に応じた国の監視・規制があるという。

「約款に関しては、法律や行政による監督のほか、裁判所による約款の解釈適用を通じて、利用者が不利益を被らないような手当がされています。

生命保険も、保険業法によって厳しい規制が行われており、約款に記載すべき事項が法律で定められています。生命保険会社が約款を作成変更するには、内閣総理大臣の認可が必要とされています。

また、生命保険会社が利用者と保険契約を締結するにあたっては、事前に商品の仕組みや保障内容、保険料、告知義務、責任開始期、免責事由等の重要事項を適切に伝えることなど、約款の内容が確実に利用者に伝わるよう、監督上の指針が定められています」

●裁判でも読んでいて当然とみなされる

好川弁護士は生保業界の規制についてこう説明したうえで、次のように結論付けていた。

「生命保険取引においては、制度上も約款の合理性が確保され、利用者が約款に接する機会も保障されています。

したがって、裁判で約款の内容を知らなかった、読んでいなかったなどと主張して、約款の効力を争うことは極めて難しいと言えるでしょう」

そうはいっても、約款を個人で読みこなすのは難しいもの。契約を結ぶ際には、しっかりと保険会社に説明してもらい、疑問点を解消しておくのがよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る