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「このたび会社をやめました」 ブログで「退職エントリ」を書くときに注意すべきこと
2013年12月23日 12時31分

「このたび○○社を退職することになりました」――会社を辞めるにあたり、退職に至るまでの経緯や理由、在職中のエピソードなどをブログに書く人が増えている。社名を明記した記事も多い。

こうした「退職エントリ」と呼ばれる記事は、その人が関わった業務内容や会社の雰囲気など、外からは見えない内部の様子をうかがい知ることができるものもある。しかし、待遇への不満など、ネガティブな情報が含まれていることもあり、会社の内部事情を一方的に書くことへの批判がないわけではない。

こういった「退職エントリ」が、法的に問題となることはあるのだろうか。もし自分が退職エントリを書くとしたら、どのようなことに注意すべきだろうか。労働問題にくわしい古金千明弁護士に聞いた。

「このたび○○社を退職することになりました」――会社を辞めるにあたり、退職に至るまでの経緯や理由、在職中のエピソードなどをブログに書く人が増えている。社名を明記した記事も多い。

こうした「退職エントリ」と呼ばれる記事は、その人が関わった業務内容や会社の雰囲気など、外からは見えない内部の様子をうかがい知ることができるものもある。しかし、待遇への不満など、ネガティブな情報が含まれていることもあり、会社の内部事情を一方的に書くことへの批判がないわけではない。

こういった「退職エントリ」が、法的に問題となることはあるのだろうか。もし自分が退職エントリを書くとしたら、どのようなことに注意すべきだろうか。労働問題にくわしい古金千明弁護士に聞いた。

●内容によっては「秘密保持義務違反」や「名誉毀損」となる

「会社の就業規則や入社・退職時の誓約書等で、従業員の『秘密保持義務』が定められていれば、退職後も会社の情報について秘密保持義務を負う場合があります。この場合、秘密保持の対象となる会社の情報をブログに書き込むと、秘密保持義務違反となります」

たとえば、どんな情報を書き込んだらダメなのだろうか?

「秘密保持義務の範囲は、就業規則や誓約書等で定められていることですので、一概にはいえません。ただ、進行中のプロジェクトや取引先の情報、個人情報については、秘密保持義務の対象となっている場合が多いので、ブログには記載しないほうがよいでしょう」

もう1点、気をつけるべき点が「名誉毀損」だという。古金弁護士はまず、このように指摘する。

「特定の会社の社会的な評価(=評判)を下げる事実(または意見・論評)を含む表現をブログに書き込む行為は、民事上は不法行為(民法709条)に該当しうる違法な行為です。

この場合、会社の評判が下がるかどうかは、一般読者を基準として判断されることになります」

●会社の評判を下げる内容でも、「違法性がない」場合もある

ただし、こうした表現の「違法性がなくなる」場合もあるようだ。「違法性がなくなる条件」とはどのようなものなのだろうか。

「『事実』を指摘する表現の場合には、(1)その事実が公共の利害に関する事実であること、(2)その表現が会社に対する攻撃目的等ではなく専ら公益を図る目的でなされたこと、かつ、(3)その事実が真実である場合、または表現者がその事実を真実と信じるに足りる相当な理由がある場合は、違法性がなくなります。

また、『意見・論評』形式の表現では、(1)、(2)に加えて、(4)その意見・論評が前提としている事実が重要な部分について真実である場合、または、表現者が当該事実を真実と信じるに足りる相当な理由がある場合で、かつ、(5)人格攻撃などの意見・論評としての域を逸脱した表現でない限り、違法性がなくなります」

まとめると、会社の評判を下げるネガティブなブログ記事は、名誉毀損となる場合がある。ただし、名誉毀損となる場合でも、(1)(2)(3)または(1)(2)(4)(5)の要件を満たせば違法性がなくなる、ということだ。

「注意すべき点は、上記の要件を満たすことの立証責任は、退職した従業員側にあることです。実務的には、(3)または(4)が立証できるかどうか、そして意見・論評による表現の場合は、当該書込みが(5)の要件を満たすかどうかが重要です」

元従業員が書いた退職エントリ程度で名誉毀損とは、ものものしい気もするが……。古金弁護士は、そうした考えは現在では通用しなくなってきていると指摘し、次のようなアドバイスを送っていた。

「インターネットが普及し、ブログやSNS等で個人が情報を発信できる時代となった現在では、個人が行った名誉毀損も問題とされやすい時代になっています。

個人がネットに書き込んだ表現でも、名誉毀損の違法性がなくなる要件が緩和されることはないと考えるのが多数説です。

退職エントリを書く際には、こうした点も考慮したうえで、慎重に対応したほうがよいかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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