1321.jpg
社長からセクハラ、断っても「幸せにしたい」「訴えないでね」 退職を決意した女性、失業手当はどうなる?
2020年08月02日 09時59分

社長からのセクハラが止まず、退職を考えている女性が、その方法について弁護士ドットコムに質問を寄せました。

セクハラ加害者は、女性の勤務先の社長です。女性によれば「断っても執拗に食事に誘われる」「前髪を触られたり、触ろうとしてくる」「告白したいから食事に行こうと言われた」「セクハラで訴えないでねと念を押される」などの被害にあっているそうです。

メモ、トークアプリのスクショ、「いい子だから幸せにしたいなって思った」などの録音データも証拠として持っています。

「どうしても気持ち悪いので退職を考えている」という女性。このような場合、女性の退職理由は「自己都合」となってしまうのでしょうか。櫻町直樹弁護士に聞きました。

社長からのセクハラが止まず、退職を考えている女性が、その方法について弁護士ドットコムに質問を寄せました。

セクハラ加害者は、女性の勤務先の社長です。女性によれば「断っても執拗に食事に誘われる」「前髪を触られたり、触ろうとしてくる」「告白したいから食事に行こうと言われた」「セクハラで訴えないでねと念を押される」などの被害にあっているそうです。

メモ、トークアプリのスクショ、「いい子だから幸せにしたいなって思った」などの録音データも証拠として持っています。

「どうしても気持ち悪いので退職を考えている」という女性。このような場合、女性の退職理由は「自己都合」となってしまうのでしょうか。櫻町直樹弁護士に聞きました。

●退職理由はどうなる?

ーー今回のようなケースでも、自分から退職を望めば、自己都合になるのでしょうか

質問にお答えする前に、「失業手当」の仕組みについて解説します。というのも、会社を退職したときに頼りになる失業手当ですが、これは退職理由に関係してくるからです。

失業手当は、「雇用保険法」(以下「法」といいます)に基づいて支給されるもので、法律上は「求職者給付」(法10条)と呼ばれています。

なお、雇用保険法に基づく給付には、求職者給付のほかにも、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があり、総称して「失業等給付」といいます。

ーーもらうためには、どのような要件が必要ですか

失業手当の給付を受けるには、一定の受給資格要件を満たす必要がありますが、退職の理由が何であるかによって、受給資格(の種類)が変わってきます。

具体的には、勤務先の倒産や、解雇・退職勧奨などによって退職した場合には「特定受給資格者」(法23条2項)となります。

また、有期雇用契約が更新されず退職した場合や「正当な理由のある自己都合」によって退職した場合には「特定理由離職者」(法13条3項)となります。

ーーよく「会社都合」という表現が使われますが、これは法的にはどのような位置付けにありますか

日常的な用法でいう「会社都合退職」は、自己都合退職よりも、失業手当の受給において有利になるという意味では、上記の特定受給資格者・特定理由離職者にあたる場合、と考えればよいでしょう。

退職した労働者が、特定受給資格者や特定理由離職者に該当するときは、そうではない場合と比較して次のような利点があります。

・被保険者期間が離職前1年間に通算6カ月で足りる(通常は離職前2年間に通算12か月)
・給付制限期間(3カ月)の適用がない
・失業手当の支給期間が長くなる場合がある

このように、特定受給資格者・特定理由離職者に該当しない退職者よりも、手厚い保護が受けられるようになっています。

ーー退職する人にとっては、理由が非常に重要となってくるのですね

そうです。今回のように、社長からセクシュアル・ハラスメントの被害に遭っているという場合について考えます。

厚生労働省が公表している『特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準』(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000147318.pdf)では、「特定受給資格者の判断基準」の「Ⅱ  解雇等により離職した者 」において、「(9)上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者 」が挙げられています。

この中で、上司等から「嫌がらせを受けたこと」について、具体的には、次のように説明されています。

「(2)事業主が男女雇用機会均等法第 11 条に規定する職場におけるセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)の事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかった場合に離職した場合が該当します。」

「事業主が直接の当事者であり離職した場合や対価型セクハラに該当するような配置転換、降格、減給等の事実があり離職した場合も該当します。 」

ーー今回のケースではどう判断されますか

今回のケースでは、社長がセクハラの当事者であり、労働者が社長の行為に対して拒否・拒絶の意思を示しているにもかかわらずセクハラにあたる行動を改めていません。

その結果、セクハラに遭った労働者が退職を余儀なくされたという状況であれば、いわゆる会社都合退職である「特定受給資格者」に該当するといえるでしょう。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る