13281.jpg
飛行機内で日本人が暴れてアラスカに臨時着陸・・・どの国の法律で裁かれるの?
2014年02月26日 17時57分

誰でも「空の旅」は穏やかなものであってほしいはずだ。だが、2月上旬、成田発ニューヨーク行きの全日空旅客機の機内で、日本人の男性客が暴れて、アラスカの空港に臨時着陸するというトラブルがあった。

報道によると、この男性は機内で、客室乗務員やほかの乗客を怒鳴りつけたり、前の座席の背もたれを叩く迷惑行為をはたらき、乗務員の制止にも応じなかったため、結束バンドで座席に縛り付けられた。男性はそれでも大声を出したり、つばを吐くなどの行為をやめず、着陸後に米連邦捜査局(FBI)に逮捕されたという。

今回報道されているような迷惑行為への対処は、法律上、どのように決まっているのだろうか。航空に関する法律にくわしい金子博人弁護士に聞いた。

誰でも「空の旅」は穏やかなものであってほしいはずだ。だが、2月上旬、成田発ニューヨーク行きの全日空旅客機の機内で、日本人の男性客が暴れて、アラスカの空港に臨時着陸するというトラブルがあった。

報道によると、この男性は機内で、客室乗務員やほかの乗客を怒鳴りつけたり、前の座席の背もたれを叩く迷惑行為をはたらき、乗務員の制止にも応じなかったため、結束バンドで座席に縛り付けられた。男性はそれでも大声を出したり、つばを吐くなどの行為をやめず、着陸後に米連邦捜査局(FBI)に逮捕されたという。

今回報道されているような迷惑行為への対処は、法律上、どのように決まっているのだろうか。航空に関する法律にくわしい金子博人弁護士に聞いた。

●離陸から着陸までの間は「特別なルール」がある

「国際線内の迷惑行為については、『航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約』(1970年8月発効)という条約があります。航空会社を持つ大部分の国が、この条約に加盟しています。

この条約が適用されるのは、航空機の動力が離陸のため作動したときから、着陸の滑走が終了するまでの間です。

規制の対象となる行為は、機内での(1)刑法上の犯罪と、(2)航空機や機内の人・財産を害したり、害するおそれのある行為、および、機内の秩序・規律を乱す行為です」

もし機内で、条約の対象となるような犯罪や問題行為が起きた場合、どんな対処がなされるのだろうか?

「まず、行為者を拘束したり、飛行機から降ろしたり、当局へ引き渡したり、その他必要な措置をする権限は、『機長』に与えられています。

本件のように暴れた乗客がいれば、結束バンドで縛り付ける権限が機長にはあります。それでも止めなければ、航空機や乗員・乗客のため、機長の権限で、緊急着陸し、当局に引き渡すのは当然です。

なお、機長以外の乗員や乗客についても、機体や人、財産の安全を守るため、『直ちに必要であると信じるに足りる相当な理由』がある場合には、機長の承認を得ることなく防止措置を取ることができることになっています」

なぜ飛行機では、機長にこれほどの権限が与えられているのだろうか。金子弁護士は、次のように指摘する。

「それは、航空機は脆弱な運搬手段であり、閉鎖空間で逃げ場がないという特殊性があるからです」

ちなみに、このようなルールは日本の航空法にも取り込まれていて、国内線も同じルールが適用されるということだ。

●飛行機の登録国に管轄があるのが原則

一方、ひとくちに「犯罪」といっても、その定義や内容は国によっても違う。機内での「犯罪」は、どこの国で裁かれるのだろうか?

「機内の犯罪行為は、航空機が登録している国が刑事手続き上の管轄を持つのが原則で、日本の刑法1条2項で明記されています(属地主義の延長。旗国主義)。本件は、日本の航空機ですから、日本が管轄権を持ちます。

ただし、航空機の場合、ある国の上空で事件が起きれば、属地主義の原則により、その国が持つこともありえます(管轄が並存します)。したがって、日本の航空機内で起きた犯罪でも、FBIにより現行犯で逮捕されるということもありえます(ただし、日本の刑法が適用されるという前提の場合でもFBIは逮捕します)」

そのとき飛んでいた土地の法律が適用されることもある、ということだが、実例はあるのだろうか?

「国内線ですが、2012年、兵庫県の上空で、客室乗務員(CA)のスカートの中を盗撮したとして、兵庫県の迷惑防止条例違反で、羽田で、警視庁に逮捕されたというケースがありました」

飛んでいる航空機の中は、法律上も、特殊な場所として扱われるということだ。いくら身近な乗り物になったとはいえ、利用の際には、きちんと気を引き締めて搭乗するのが良さそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る