13285.jpg
パワハラ調査をめぐる訴訟「会議の秘密録音は違法性高い」証拠不採用に
2016年05月19日 18時32分

パワハラ問題を審議する委員会の調査が不十分だとして、私立大学の職員が勤務する大学を訴えていた裁判の控訴審判決が5月19日、東京高裁であった。委員会の会議を秘密録音したデータが証拠として採用されるかどうかが争点の1つになっていたが、裁判所は、会議の秘密性の高さを理由に「録音することの違法性の程度は極めて高い」として排除。調査自体についても、「違法ないし不当であると評価することはできない」などとして、控訴を棄却した。

控訴していたのは、女性上司からのパワハラ被害にあったと主張する私立大学の男性職員。大学のパワハラ防止委員会に申し立てを行ったが、十分な調査をしてもらえず、また、会議の中で、委員が男性の名誉を毀損する発言をしていたとして、大学側に200万円の慰謝料を請求していた。

男性職員の代理人によると、委員会の会議を録音したとされるデータには、「なんかちょっと家庭環境が…」「どちらがハラスメントかなっていうのは感じちゃう」などの発言が収録されていた。また、委員長らしき人物の「これ、貶めようとしたら簡単にできちゃうよね。だって自分がそう思えばいいんでしょ」「冤罪と一緒で、ええ、セクハラの痴漢行為のね」といった声も含まれていたという。

しかし、裁判所は録音について、「控訴人(男性職員)が関わっている可能性がある」「議事録と一致しないので信憑性が低い」などと評価。一審同様、違法性の高い録音として証拠から排除するとともに、仮に証拠として採用された場合にも、公開を前提としていない議論であることなどから、証拠価値が乏しいとした。

男性職員の代理人・笹山尚人弁護士は、判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた会見で次のように語った。

「パワハラを実証する上で、『秘密録音して良いのか』という相談はよく受けます。今までの裁判で、秘密録音による証拠が違法だと排除されたことはほとんどないし、私に関しては一度もない。だから、どんどんしてくださいとアドバイスしてきました。

この判決が、どれだけ一般に影響するのかという部分はあるが、職場の中で『今から会議をするからな、秘密だからな』みたいな話をされた時に、これと同じ論理で録音が使えないとなると、何を言ってもオッケーということになる。そういう意味で(今回の)証拠排除はものすごく慎重であるべきだったと思います。裁判所の捉え方が変わってきている可能性があるなと思って心配です。これが一般化すると怖いなと思っています」

男性側は上告を検討しているという。

(弁護士ドットコムニュース)

パワハラ問題を審議する委員会の調査が不十分だとして、私立大学の職員が勤務する大学を訴えていた裁判の控訴審判決が5月19日、東京高裁であった。委員会の会議を秘密録音したデータが証拠として採用されるかどうかが争点の1つになっていたが、裁判所は、会議の秘密性の高さを理由に「録音することの違法性の程度は極めて高い」として排除。調査自体についても、「違法ないし不当であると評価することはできない」などとして、控訴を棄却した。

控訴していたのは、女性上司からのパワハラ被害にあったと主張する私立大学の男性職員。大学のパワハラ防止委員会に申し立てを行ったが、十分な調査をしてもらえず、また、会議の中で、委員が男性の名誉を毀損する発言をしていたとして、大学側に200万円の慰謝料を請求していた。

男性職員の代理人によると、委員会の会議を録音したとされるデータには、「なんかちょっと家庭環境が…」「どちらがハラスメントかなっていうのは感じちゃう」などの発言が収録されていた。また、委員長らしき人物の「これ、貶めようとしたら簡単にできちゃうよね。だって自分がそう思えばいいんでしょ」「冤罪と一緒で、ええ、セクハラの痴漢行為のね」といった声も含まれていたという。

しかし、裁判所は録音について、「控訴人(男性職員)が関わっている可能性がある」「議事録と一致しないので信憑性が低い」などと評価。一審同様、違法性の高い録音として証拠から排除するとともに、仮に証拠として採用された場合にも、公開を前提としていない議論であることなどから、証拠価値が乏しいとした。

男性職員の代理人・笹山尚人弁護士は、判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた会見で次のように語った。

「パワハラを実証する上で、『秘密録音して良いのか』という相談はよく受けます。今までの裁判で、秘密録音による証拠が違法だと排除されたことはほとんどないし、私に関しては一度もない。だから、どんどんしてくださいとアドバイスしてきました。

この判決が、どれだけ一般に影響するのかという部分はあるが、職場の中で『今から会議をするからな、秘密だからな』みたいな話をされた時に、これと同じ論理で録音が使えないとなると、何を言ってもオッケーということになる。そういう意味で(今回の)証拠排除はものすごく慎重であるべきだったと思います。裁判所の捉え方が変わってきている可能性があるなと思って心配です。これが一般化すると怖いなと思っています」

男性側は上告を検討しているという。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る