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「やすぅ〜い」夢グループに6589万円の課徴金納付命令 何が問題になったのか?
2025年04月08日 10時03分

「やすぅ〜い」「でも社長、お高いんでしょう?」などのテレビCMでおなじみの通販会社「夢グループ」に対し、消費者庁が不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景表法」とします。)違反で6589万円の課徴金納付命令を発出したとの発表が消費者庁からなされました。

消費者庁のリリース等によると、夢グループは、コロナ禍の際に、「立体マスク30枚セット」を3600円(税抜)で販売したそうです。その際、1)「本日の広告の有効期限5日間」と表示し、2)他に負担すべき費用はないかのような表示をしていたそうです。

しかし実際には、1)広告の有効期間5日間を経過した後も、広告した条件で商品を購入することが可能であり、2)購入には3600円の他、送料や手数料を負担する必要があったそうです。

「課徴金」とは、どのような制度なのでしょうか。また、課徴金を支払わないとどうなるのでしょうか。景表法に詳しい弁護士に聞いてみました。

「やすぅ〜い」「でも社長、お高いんでしょう?」などのテレビCMでおなじみの通販会社「夢グループ」に対し、消費者庁が不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景表法」とします。)違反で6589万円の課徴金納付命令を発出したとの発表が消費者庁からなされました。

消費者庁のリリース等によると、夢グループは、コロナ禍の際に、「立体マスク30枚セット」を3600円(税抜)で販売したそうです。その際、1)「本日の広告の有効期限5日間」と表示し、2)他に負担すべき費用はないかのような表示をしていたそうです。

しかし実際には、1)広告の有効期間5日間を経過した後も、広告した条件で商品を購入することが可能であり、2)購入には3600円の他、送料や手数料を負担する必要があったそうです。

「課徴金」とは、どのような制度なのでしょうか。また、課徴金を支払わないとどうなるのでしょうか。景表法に詳しい弁護士に聞いてみました。

●「課徴金」とは?

——課徴金とは、どのような場合に課されるのでしょうか。

課徴金制度は、景表法において一般消費者に誤認を与えるとして禁止されている不当表示のうち、優良誤認表示、有利誤認表示を行った企業に対して、不当表示の対象となった商品やサービス(以下「商品等」といいます。)の売上額に対して課徴金算定率3%を乗じた額を課徴金として国庫に納付するべきことを、消費者庁が当該企業に命じなければならないという制度です。

課徴金は、商品等の品質、規格その他の内容について実際のものよりも著しく優良であることを示す優良誤認表示や、商品等の価格その他の取引条件について実際のものよりも著しく有利であることを示す有利誤認表示を行った場合に課されます。

例えば、おとり広告や、ステマに関しては「告示」というルールで景表法違反となる場合が定められていますが、これらの告示違反にとどまる場合(つまり、告示違反であるとともに優良誤認表示、有利誤認表示にもあたると認定されなかった場合)は課徴金の対象にはなりません。

また、自社では仕入の原材料の品質、規格を確認して表示の内容について十分に注意を尽くしていたものの、仕入先のミス等によって仕入先から提供された誤った情報をもとに表示をしてしまったような場合には、客観的には事実と異なる内容の表示をしてしまっているため、措置命令の対象にはなりますが、課徴金については「不当な表示であることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるとき」には課徴金の対象にはなりません。

今回、夢グループには課徴金の支払いを命じられていますが、課徴金納付命令書上でも「不当な表示であることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者」とは認められなかったと記載されています。

●課徴金を課すための手続の流れ

課徴金納付命令をするための手続は、まず優良誤認表示、有利誤認表示に当たる景表法違反行為が認定されていることが必要になります。

消費者庁や都道府県知事は、優良誤認表示、有利誤認表示をした企業に対して、自社の表示が景表法に違反するものであったことを一般消費者に周知することや、再発防止のための措置をとること等を命じる措置命令を行っています。

多くの場合は、措置命令で認定された違反行為を前提に、違反行為の対象となった商品等の売上額を調査して課徴金額を計算して、課徴金納付命令書案を企業に提示して意見を述べる機会を与える「弁明機会の付与」という手続を行い、課徴金納付命令に至ります。

——今回の納付命令について、他の場合と異なる何か特殊なことはありますか?

課徴金納付命令は措置命令より1年から2年程度後に行われることが多いですが、本件は埼玉県が令和2年6月11日に措置命令を行った後、5年弱経過した令和7年3月21日に消費者庁が課徴金納付命令をしている点が珍しいように思います。

課徴金納付命令は、課徴金の対象となる行為をやめた日から5年を経過すると命令をすることができないとされていますので、期限に迫った時期に命令がなされているといえます。

●「6589万円」という金額の根拠

——今回、「6589万円」とかなり大きな金額の課徴金が課されていますが、なぜこの金額になったのでしょうか。

これは今回問題とされた商品(立体マスク30枚セット)の売上額が、21億9662万8642円であると認定されたことから、その3%に当たる額から1万円未満を切り捨てた額が6589万円であったためです。

売上額が計算される対象期間は、不当表示とされる表示がなされていた期間と、原則として、表示の終了後6カ月間でのうち最後に不当表示の対象になった商品等の取引を行った日までの期間とされています。

不当表示の終了後も、不当表示を見た一般消費者が誤認をしたまま取引をすることが想定されるため、不当表示の終了後の売上額も加算されることとなっています(例外的に、6カ月経過するよりも前に一般消費者向けに不当表示であった旨を周知する措置をとれば課徴金の計算の対象になる期間は短くなるとされています。)。

●課徴金を支払わなかった場合、強制執行される

——消費者庁のリリースによると、夢グループは、令和7年10月22日までに、6589万円を支払わなければならないそうです。支払わなかった場合にはどうなるのでしょうか?

課徴金納付命令に対して、課徴金の納付を行わなかった場合には、課徴金納付命令は執行力のある債務名義と同一の効力を有するとされているので、民事執行法の手続に基づいて強制執行がなされることになります(景表法19条)。

別途不払いに対して裁判を経る必要はありません。

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