去年夏から始まった米不足に伴う価格高騰から半年以上。政府は3月に備蓄米を放出することを決定したが、スーパーなどでは依然として品薄、価格の高止まりが続いている状態だ。
そんな中、インターネットのフリマサイトでは米の出品が相次いでいる。中には農家から直接買い付けたと思われる米袋での出品もあり、都内で精米店を営む五つ星お米マイスターの小池理雄さんは「品質が担保されていない」と警鐘を鳴らす。(弁護士ドットコムニュース・玉村勇樹)
●フリマサイトでは注意喚起
フリマサイトの「メルカリ」で「新米」と検索してみると、「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」などといったブランド米がずらり。
中にはすでに売れているものや、2キロ2900円と高値に設定されているものも見受けられた。
フリマサイトに出品された米 注意喚起を促す表記もある
メルカリでは検索結果のすぐ下に「米の流通状況に関して、政府・行政機関の発表をご確認いただき、販売や購入においては冷静なご対応をお願いいたします」と表記した上で、農林水産省のホームページが更新している米の流通状況をリンクさせるなど注意喚起を行っている。
●転売は「相手にしていない」一方、消費者への心配も
米がフリマサイトで出品されていることについて小池さんは「お好きにどうぞって感じ。量も大したことないし、相手にしていない」と話す一方、購入者が安全面などでトラブルに巻き込まれることを憂慮する。
最も考えられるのが知らずに「未検査米」を買ってしまうケースだ。
米は農産物検査法に定められた検査を受けることにより品質が担保される。検査を受けた米には米袋に等級や検査員、検査日が明記されたスタンプが押されているため、一目で分かる。
検査された証であるスタンプの押された米袋
小池さんは「未検査米の場合、品質の悪い米が入っている場合もある。もし入っていても素人では見分けることは難しい」と話す。実際にフリマサイトの中には、スタンプが押されていない、未検査と思われる米も出品されていた。
「検査するにも費用が必要なため、フリマサイトで出品されている米の場合、仕入れた人が生産者から十分な説明を受けないまま、品質の悪い未検査米を買っている可能性も否定できない」(小池さん)。また、精米過程で異物が混入する危険性もあるという。
加えて米を販売する事業者は米トレーサビリティ法により、業者間取引等の記録の作成、保存が義務付けられている。これは米や加工品に問題が発生した際の流通ルートを特定するためだ。フリマサイトで未検査米を購入した場合、これらの記録が成されている確証はない。
●政府の備蓄米放出は歓迎も「少なすぎる」
米不足による価格の高騰は去年の夏に始まり、半年以上になる。実際に筆者が住んでいる千葉県内のスーパーでも米の販売コーナーは売り切れで商品が並んでいなかった。
小池さんは現状について「ここまで長引くのは予想外。新米が市場に出たら高騰は落ち着くというのが販売店の見方だった」と話す。
販売店にとって予想外だったのは集荷業者や大手外食による買い占め。「去年の米不足を懸念した業者がJAより高い金額で直接買っていた」(小池さん)という。
小池さんは政府に対して「輸出や備蓄米に回す予定だった米を市場に出すなど方法はあったはず」と注文をつける。
そんな中、事態の沈静化を図るため、政府は備蓄米21万トンを市場に放出することを決定した。小池さんは「スーパーに米が並ぶことで消費者が安心することは大事」と放出を歓迎する一方、21万トンという量に対しては「少なすぎる」とうったえる。
農林水産省によると2024年7月末現在で、全国の米の民間在庫は出荷・販売の段階の合計で82万トン。前年の同時期と比べて、40万トン減少している。
「うちのような小さなお店でも50トン足りない状況。日本全国で見た場合、40万トンは必要だ」と強調。その上で消費者に向けては「こういう状況だからこそ、安全性の確保されている専門店などで購入して欲しい」と話した。