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義母と「同居しない」と約束して結婚したのに、翻した夫…離婚話にどう影響する?
2016年09月12日 10時11分

「義姉が亡くなり、夫が義母を我が家に引き取りたいと言いだした」。そんな不満が、ネットの掲示板に書き込まれ、話題になった。書き込んだ妻(37)によれば、夫(39)とは「同居はしないという条件で結婚した」はずだった。

ところが、義母と同居していた義姉が死去。夫が「義母を引き取りたい」と言い始めたのだ。妻は、プロポーズされた時に「将来も含めて同居はしたくない」と伝えていたことを理由に抵抗すると、夫は、結婚前に子どもを作らない約束をしていたが、自分が折れて娘が生まれたことを理由に反論したそうだ。

夫は「俺は(投稿した妻の)希望を叶えるための譲歩や努力をしたのに、おまえは自分のことばっかりなんだな」と、言い捨てた。離婚話に発展していくが、妻は「離婚はしたくないんです」、「出産と同居が交換条件にされるとわかっていたら、そこまでして子どもを望まなかったのに、と思ってしまいます」。

そこで「結婚の条件として同居はしないと約束してあるので、同居はしないし、だからと言って離婚も認めないという風にできないものでしょうか?」と投げかけている。妻の言い分は通るのか、木下貴子弁護士に聞いた。

「義姉が亡くなり、夫が義母を我が家に引き取りたいと言いだした」。そんな不満が、ネットの掲示板に書き込まれ、話題になった。書き込んだ妻(37)によれば、夫(39)とは「同居はしないという条件で結婚した」はずだった。

ところが、義母と同居していた義姉が死去。夫が「義母を引き取りたい」と言い始めたのだ。妻は、プロポーズされた時に「将来も含めて同居はしたくない」と伝えていたことを理由に抵抗すると、夫は、結婚前に子どもを作らない約束をしていたが、自分が折れて娘が生まれたことを理由に反論したそうだ。

夫は「俺は(投稿した妻の)希望を叶えるための譲歩や努力をしたのに、おまえは自分のことばっかりなんだな」と、言い捨てた。離婚話に発展していくが、妻は「離婚はしたくないんです」、「出産と同居が交換条件にされるとわかっていたら、そこまでして子どもを望まなかったのに、と思ってしまいます」。

そこで「結婚の条件として同居はしないと約束してあるので、同居はしないし、だからと言って離婚も認めないという風にできないものでしょうか?」と投げかけている。妻の言い分は通るのか、木下貴子弁護士に聞いた。

●「同居しない」約束はまだ有効

ご質問は(1)結婚前の約束通り、同居はしないことができるのか (2)その場合でも、離婚しないことが可能か、の2点ですね。

まず(1)については、同居を拒否することはできます。「子どもを作らない」という約束のように、結婚前の約束を、結婚後に話し合いで変更することはできます。

しかし「子どもを作らない」約束と、「同居しない」約束は、別の約束です。1つの約束を変更したからと言って、別の約束も変更すべきということにはなりません。

まだ「同居はしない」という約束は生きています。このような約束に法的拘束力があるとは言えませんが、話し合いのベースになりますし、(2)の離婚で検討する時には裁判所が参考にするものとなります。

●「結婚後に事情が変わることはよくある」

次に(2)離婚を拒否した場合に、離婚しないことが可能か、という問題について検討してみましょう。

夫が離婚を希望し、妻が応じない場合には、夫が家庭裁判所にまず調停を申し立て、そこでも結論がでなければ、裁判となります。

では、裁判所はどのように判断するのでしょうか。結婚前に「同居しない」と合意していたことは、判断材料として重視されます。しかし、結婚前の合意だけを理由に「合意があるのだから、離婚は認められない」と、決まるわけではありません。結婚前に「合意」していたとしても、結婚後に事情が変わることはよくあることだからです。

裁判では、義姉が亡くなったこと以外に、義母の健康状態、経済状態、他に面倒を看る子(夫の兄弟・姉妹)の有無などが検討されることになるでしょう。また、義母を引き取る必要性、引き取る以外の方法の可能性、引き取りたくない理由の正当性、他に可能な方法を模索したか否か、なども判断材料になると思います。

その結果、「夫が引き取らざるを得ない状況」と裁判所が判断すれば、離婚が認められることがあり得ます。「夫が引き取らざるを得ない状況」である以上、それに応じる意思のない妻側に「夫婦関係が破綻した原因がある」とみられるからです。

一般的には,このような、他の責められる事情が相当揃わなければ、裁判で離婚が認められることにはならないでしょう。もっとも、「親と同居するくらいなら、あなたの子などいらなかった」と言うなど、妻側に、夫婦関係を破壊するような、他の責められる事情がある場合、これを加味して離婚が認められることはありえるでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

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