中居正広氏とフジテレビによる一連の問題について、フジテレビと親会社が設置した第三者委員会はトラブルを「業務の延長線上の性暴力」と認定した。
第三者委員会はどのような理由で性暴力を認定したのか。フジテレビのどんな企業体質に問題があったのか。そして、フジテレビが改革を果たすために必要なものは何か。元テレビ朝日アナウンサーの西脇享輔弁護士の解説を3回にわたり、お届けする。
1回目は第三者委員会の報告書の評価。西脇弁護士はフジテレビの「企業体質」をつまびらかにした報告書を「よくあそこまで可視化した」と高く評価した。
●見えない“企業体質“を可視化した第三者委員会報告書
――今回、フジテレビの第三者委員会の報告書が公開されました。全体としてどのようにご覧になりましたか?
西脇:やはりあれだけの報告書を、たった2カ月という短期間で作り上げたという点に驚きました。法曹界でも「よくあそこまで可視化した」と高く評価されていると思います。特に、企業の「体質」という本来は目に見えないものを、過去の事例や社員の証言などを通じて明確に描き出した点がすごいなと思いながら見ていました。
報告書では、直接の指示がなかったにも関わらず、被害女性が“行かざるを得なかった“状況が詳細に記されています。たとえば、キャスティングの仕組みや、番組を降板したくないというプレッシャー、過去のハラスメント事案など、さまざまな背景が複雑に絡み合っている。これらがフジテレビの「企業体質」として浮かび上がってきたのです。
――中でも印象的だった点はありますか?
西脇:被害女性が療養中に、番組降板の知らせを病室で受けたときの「私からすべてを奪うのか」と泣いてうったえたという件ですね。この一言に、彼女がどれだけ追い詰められていたかが凝縮されているように感じました。
●中居氏が守秘義務の解除に応じないまま「性暴力認定」
――今回の調査は、中居氏が守秘義務を解除しないことで調査が難しい部分もあった。その中でどのように性暴力を認定したのでしょうか?
西脇:はい、これは刑事事件でもよくあることで、供述がなくても客観的な証拠から事実は導き出せます。今回は復元されたメールや医療機関の診療記録、女性が事案の直後に周囲に何と言ったかなどがその役割を果たしました。むしろ供述よりも、動かぬ証拠の方が真実を示す力は強いんです。
今回はプロフェッショナル中のプロフェッショナルが確実な証拠から認定しています。大筋については十分認定できるから、性暴力と判断されたんだと思います。
事案の中身が不明というのはまた別の話。分かっているんだけど、プライバシーの問題があるから公表がされていないだけ。そこの線引きを誤解するとおかしな議論が出るんだろうなと思います。
●フジは「これでおしまい」にしてはいけない
ーー不足していたものや今後、必要な点はありますか?
フジテレビ側が過去の事案を「これでおしまい」にしてはいけない。これまで声を上げられなかったであろう人もちゃんとすくい上げるために、むしろここをスタート地点にして 調べていく必要があると思います。
そのために、今回の第三者委員会とは別に、フジテレビの体質全体を変えていくための第三者を入れた組織を立ち上げて、安心して話ができるような体制を作ってもいいのかなと思います。