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ゲーム依存で大学中退の男性、「社会のクズ」と自分を責めて…それでも見つけた「自分の居場所」
2021年11月21日 09時49分

コロナ禍の外出自粛の影響もあって、子どもたちのゲーム時間が増えている。

文科省の「全国学力・学習状況調査」(2021年度)によると、小中学生ともにテレビゲームをしている時間は増加しており、平日に1時間以上テレビゲームをしていると回答した生徒の割合は、それぞれ75%以上となっている。

ゲーム依存に悩む人たちが集まる自助グループを運営する白水(しろうず)宗一さん(26)は「現代のゲームは依存性が高く、子どもたちがのめり込みやすい要素が多い。誰でもゲーム依存になりうる」と指摘する。

白水さんもネットやゲームをやめられなくなり、苦しんだ経験を持つ1人だ。現在は回復の道を歩み続けているが、「治らないのでは」と諦めそうになる日々を送っていたこともあるという。

コロナ禍の外出自粛の影響もあって、子どもたちのゲーム時間が増えている。

文科省の「全国学力・学習状況調査」(2021年度)によると、小中学生ともにテレビゲームをしている時間は増加しており、平日に1時間以上テレビゲームをしていると回答した生徒の割合は、それぞれ75%以上となっている。

ゲーム依存に悩む人たちが集まる自助グループを運営する白水(しろうず)宗一さん(26)は「現代のゲームは依存性が高く、子どもたちがのめり込みやすい要素が多い。誰でもゲーム依存になりうる」と指摘する。

白水さんもネットやゲームをやめられなくなり、苦しんだ経験を持つ1人だ。現在は回復の道を歩み続けているが、「治らないのでは」と諦めそうになる日々を送っていたこともあるという。

●大学生で「ガチモード」に突入…昼夜逆転し、ゲーム三昧の日々に

子どものころからゲームが好きだったという白水さん。「やり始めると止まらなくなるタイプ」ではあったが、ゲームを楽しみながら日常生活を送っていた。

ゲームの時間が増えたのは、高校2年でカナダに留学したことがきっかけだった。

「ホームステイ先は​​半径数キロは農地が続き、どこに行くにも車が欠かせませんでした。加えて、言葉の壁もあり、同級生に話しかけられても、うまく会話できなかったんです。そんなときに、同級生がMMORPG(多人数のプレーヤーが同時接続できるオンラインゲーム)に誘ってくれて、ドハマりしました」

ゲームを通じて、友人と一緒に遊んでいる感覚になれた。ホストブラザー(ホスト先の同年代の家族)もゲームが好きだったため、毎日遊ぶようになった。部活がない平日は約4時間、休日は約8時間ほどゲームに時間を使う日々だった。

留学時に滞在した地域の風景 留学時に滞在した地域の風景(白水さん提供)

高校3年で日本に帰国すると、海外のゲームで遊ぶことはできなくなったが、留学前よりもパソコンに向き合う時間が長くなった。日本で遊べる別のゲームをしたり、動画をみたりしながら高校生活を送った。

ところが、大学に入学後、白水さんはゲームやネットに本格的にのめり込むようになった。 きっかけは、所属したサークルでの「つまずき」だった。

「サークルは英語の活動が盛んで、スピーチの全国大会などに出場歴もありました。でも、スピーチのための原稿がうまく書けなくて…。遅れを取るようになり、サークルに行きづらくなったんです。それからは、逃避するようにアニメなどの動画を見るようになりました」

授業がない日は、食事の時間以外は貪るようにネットで動画を見た。レポートも提出せず、試験もまったくできなかったため、単位は1つも取得できなかった。

そのまま迎えた大学生初の夏休み。サークルに行かなくなり、バイトもしていなかった白水さんは、ゲームの攻略動画を見て「本腰でやってみよう」と「ガチモード」に入った。

それからは、15時ごろに起きてゲームに没頭し、朝8〜10時に寝る昼夜逆転の生活。気づけば、ゲームをやめられなくなっていた。

●「社会のクズ」「みっともない」と自分を責める日々

ゲーム三昧になった白水さんの異変に気づいたのは、家族だった。母親がネット依存症について書かれた新聞記事を持ってきて、通院をすすめてきたという。

「記事に書かれている内容はすべて当てはまると思いましたが、病気とは思わず、『ネット依存症』はメディアが作り出した言葉だと思っていました。ただ、良くなるのであれば行こうという軽い気持ちで病院に行ったところ、『重症』と言われて…。正直、安心する自分もいました」

こうして、月に1回の通院を始めた白水さん。夏休みが終わり、新学期が始まると「やり直すぞ!」と気合いを入れた。ところが、1カ月も経たないうちに、ゲームに明け暮れる日々に戻っていた。以前と違ったのは、別のサークルに入り直したことだ。

「ボランティアサークルに入ったんです。医師に『人間関係を切ると、ゲームしかなくなってしまう』と言われたので、サークルだけは続けていました。サークルの部屋にこもり、ゲームばかりしていたのですが…。文書を書いたり、発表したりすることはできなかったけれど、ボランティア活動だけは真面目にしていました」

バイトも始めた。しかし、授業には行くことができないまま、大学4年目には休学した。病院は転院を繰り返した末に、徐々に行かなくなった。「治す気もゲームから離れられる気もしなかった」ためだ。ただ、白水さんはゲームやネットを心から楽しんでいたわけではなかった。やめられない自分をずっと責め続けていたという。

「学生として機能していませんし、単位もまったく取らずにみっともない、『社会のクズ』と思っていました。バイト先にも単位が取れていないことを隠していましたし、ゲームをしていることも自分からは言えませんでした」

大学は約1年半休学。いつの間にか、同期の学生は卒業し、社会人になっていた。単位を落として留年した同期も大学5年目を終えていなくなり、自分がただ取り残されていくことに気付いた白水さんは絶望の淵に立たされた。

「延命治療のように休学期間を延ばしても、何も残りませんでした。ゲームをやり出してから何も変わらなかった。もう生きていけないと思い、うつ状態になったんです」

休むことなく行き続けたバイトも休みがちになり、無断欠勤するようになった。家族に他県にある病院への入院をすすめられ、「もう、ここまで来たら」と受け入れた。

●自ら自助グループを立ち上げ、居場所をつくる

白水さんにとって、入院は「引き出しを増やしてもらう大事な経験」となった。

「どういう状況でゲームをしやすいのか、イライラするのか、メンタルが沈みがちになるのかなどを教えてもらいました。入院している人だけではなく、通院している人たちとも一緒に治療を受けたことも良かったと思います。回復が進んでいる同年代の人たちの中には、大学に復学し、単位を取り直している人もいました」

「治らない病気なのでは」と思っていた白水さんにとって、回復に向かっている仲間は「希望」となった。ただ、同じ大学への復学は難しいと考え、入院期間中に中途退学し、フリーターになった。

退院後の白水さんを悩ませたのは、仲間とのつながりや通院先だ。住んでいる地域にはネット・ゲーム依存の自助グループはなく、以前通院していた病院は半年先まで予約が埋まっている状況だった。そんな中、入院していた病院からボランティアの誘いがあった。

「ネット依存状態あるいは依存気味の中高生を対象としたキャンプのボランティアでした。同時期に入院していた同年代の仲間もボランティアや参加者として集まり、キャンプに参加したことで仲間の輪が広がったんです。日常的に通えるようなところで、まわりにこんな集まりがあればいいなと思いました」

知り合いに病院を教えてもらい、毎週通える通院先はみつかった。ところが、ようやく持ち直し始めたころに、新型コロナウイルスの感染が拡大。緊急事態宣言などにより、2020年はボランティアをしたキャンプが中止になったという知らせを受けた。

「知らせを聞いて、ボランティア仲間に久しぶりにオンラインで再会したんです。仲間も居場所の必要性を感じていて、オンラインで自助グループを作ろうという話になりました」

こうして、2020年に仲間とネット・ゲーム依存症の自助グループ「FiSH(Field of Sharing Hearts)」を立ち上げ、約1年以上になる。参加者の多くは、10代・20代の学生や社会人だ。同じ年にASK認定依存症予防教育アドバイザーにも認定され、啓発のための講演活動もおこなうようになった。

「運営側としての責任を感じるようになったのもありますが、ゲームに依存していたときにもう戻りたくないと思ったんです。いろいろなつながりに恵まれたことで、ゲームでまた独りになって、つながりを失うことになりたくないとも思うようになりました。ネットや動画はまだまだ見ていますが、ゲームはやらなくなって500日以上が経ちました」

2021年4月からは建築関連の専門学校に進学し、木造大工を目指している白水さん。学生時代を取り戻すべく、勉強に励む毎日を送っている。

白水さんが製作した課題 白水さんは専門学校生として、授業の製作課題にも熱心に取り組んでいる(白水さん提供)

●「子ども」や「ゲーム」だけを悪者にしないで

白水さんは、タバコやアルコールと同じように、ゲームを「使う側」や保護者も気をつける必要があると指摘する。

「最近のゲームは昔と違って『プレイしたければ、無制限にできるスタイル』のものが少なくなく、依存させるようにできています。そのため、子どももやめられず、無制限にやりたくなるのです。子どもたちには保護者が『気をつけよう』と声がけし、保護者もゲームについて知ることが必要だと思います」

CERO(対象年齢) 各ゲームには対象年齢(CERO)があるが、白水さんはCEROが機能していないことにも懸念を示す(弁護士ドットコム撮影)

ゲーム依存を予防するため、保護者は子どもにどう接すればよいのか。白水さんは、頭ごなしに叱ったり、ゲームを取り上げたりするなど、子どもを否定するのではなく、家族全体で話し合うことを提案する。

「子どもと一緒にゲームをすることもよい方法の一つだと思います。家族でコミュニケーションを取ることができますし、子どもの立場を理解できるためです。

もしかしたら、家族もゲームをやりすぎてしまうことがあるかもしれません。その場合は、やめられないことや課金したくなる子どもの気持ちを理解でき、問題意識が芽生えると思います。家族みんなでルールをつくることもよいでしょう。

子どもやゲームだけを悪者にするのではなく、どうしたらゲームをやり過ぎずに楽しむよい方法があるかを一緒にみつけていくことが大事だと思います」

【白水宗一さんプロフィール】専門学校生。ASK認定依存症予防教育アドバイザー。ネット・ゲーム依存症のオンライン自助グループ「FiSH(Field of Sharing Hearts)」(https://fish-net-game-addiction.hatenablog.com/)を運営するほか、依存症オンラインルーム「ルームNG」のホストを務める。啓発のための講演活動もおこなう。

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