13521.jpg
体調不良で出張に行けず→会社「キャンセル料は自己負担で」 そんなのアリ?
2024年10月01日 10時30分

「体調不良で予定していた出張に行くことができなかったのに、キャンセル料を会社が精算してくれません」。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談を寄せた男性は、直前に急病となり予定していた出張をキャンセルしました。航空券などに一部キャンセル料がかかりましたが、「体調不良は自己負担になる」と言われ、会社から支払ってもらえていないそうです。

男性としては、「出張は業務命令なのに」と精算が認められないことに納得できないようです。キャンセル料は自腹になるのでしょうか。会社に支払ってもらうことはできないのでしょうか。労働問題に詳しい大西信幸弁護士に聞きました。

「体調不良で予定していた出張に行くことができなかったのに、キャンセル料を会社が精算してくれません」。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談を寄せた男性は、直前に急病となり予定していた出張をキャンセルしました。航空券などに一部キャンセル料がかかりましたが、「体調不良は自己負担になる」と言われ、会社から支払ってもらえていないそうです。

男性としては、「出張は業務命令なのに」と精算が認められないことに納得できないようです。キャンセル料は自腹になるのでしょうか。会社に支払ってもらうことはできないのでしょうか。労働問題に詳しい大西信幸弁護士に聞きました。

●必要経費なのに労働者が負担?

——出張がキャンセルになった場合のキャンセル料について、従業員は会社に請求できるのでしょうか?

そもそも出張旅費は実費弁償であり、労働の対価ではないので賃金ではありません。そのため、出張旅費やキャンセル料の負担について定めた法律上の規制はありません。一般的には、会社の内部規定に従うことになります。

多くの企業では、出張旅費やキャンセル料についてのルールを定めた出張旅費規程を設けています。一般的な出張旅費規程では、業務上の理由で出張が中止された場合、旅費やキャンセル料を会社が負担すると定められているケースがほとんどです。

例えば、取引先の都合や社内の事情によって出張が取りやめになった場合、業務に関連する費用とみなされ、会社がキャンセル料を負担することになります。

——今回のケースのように、「体調不良による出張キャンセルの場合は自己負担」という会社の反論は認められるのでしょうか?

従業員の体調不良など個人的な事情による出張のキャンセルについては、各会社の出張旅費規程によって扱いが異なり、原則として、その定めに従うことになります。ただし、本件の相談者のように出張直前に急病になった場合にキャンセル料を従業員に負担させることは、妥当ではないでしょう。

従業員の体調不良による出張の取り消しが出張旅費規程で定められていない場合、問題になることがよくあります。従業員の体調不良が業務上の負傷や疾病を原因とする場合は、会社がキャンセル料を負担するべきでしょう。

もっとも、二日酔いなど体調不良の原因が専ら従業員個人の自己管理の問題であった場合、従業員がキャンセル料を負担する可能性があります。

——業務のために必要な費用だったのに、従業員に負担させることには法的な問題はないのですか?

出張旅費のような業務遂行に必要な費用は、本来、会社が負担するべきものであり、従業員に負担させることは法的に問題が生じることがあります。従業員がキャンセル料を立て替えた場合、会社は従業員からの返還請求に応じるべきです。

上述した通り、二日酔いなど体調不良の原因が専ら従業員個人の自己管理の問題であった場合に、従業員がキャンセル料を負担することはやむを得ないと考えます。ただし、会社は、従業員にキャンセル料を負担させることには慎重になるべきでしょう。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る