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女性弁護士が「グラビア」に挑戦した理由 「固定観念へのチャレンジなんです」
2013年06月23日 13時40分

今年1月、男性向け雑誌『週刊プレイボーイ』に、ある女性の大胆なグラビア写真が掲載された。上半身裸になって豊満な胸を手のひらで押さえ、カメラに微笑んでいるかと思えば、別の写真では、胸が透けそうなシースルーの肌着姿を着て窓辺に座り、妖艶なポーズをきめている。女性の正体は現役弁護士の三輪記子(ふさこ)さん。女性弁護士による異例の挑戦として、記事は話題を集めた。

記事のなかで、三輪弁護士はこう語る。「写真をご覧になっていろいろな人が『なんで弁護士がグラビアを?』と思われることでしょう。でも、弁護士だって市井に生きる普通の人間として、喜怒哀楽、いろんな感情があります」。ここからは批判も覚悟して、撮影にのぞんだことが推察される。それはどのような心情だったのか。話を聞くべく、京都市内にある三輪弁護士の事務所を訪ねた。(取材・構成/松岡瑛理)

●映画監督に「いいかげんにしろ」と言われて、弁護士をめざした

三輪弁護士は京都府出身。私立名門の同志社中学校・高等学校を経て、東京大学法学部を卒業している。大学に入ったとき、もともとは官僚を志望していたという。

――同志社大学に進学しないで、東大を目指したのはなぜですか。

「外交官になりたかったんです。官僚になるなら東大だな、と。入学して『行政機構研究会』というサークルに真っ先に入ったんですけど、雰囲気になじめなくて、すぐに挫折しちゃって。それ以降は、将来のビジョンがまったくなかったんです。授業も出ないし、就職もまったく考えてなかったんです。自分はけっこう賢いと思ってたのに、東大には賢い人がいっぱいいて。『闘うのやめよう』って思ったら、何もしなくなっちゃって(笑)。

 で、ひたすら飲んだりしていて。そんななか出会った林海象さん(映画監督)が、あまりに私が目的のない生活してたから『いいかげんにしろ』と。で、『ふさこ、お前は弁護士になれ』って言われたのが、弁護士を目指したきっかけです」

●「最初、グラビアへの迷いはありました」

1999年、授業にほとんど出ていなかった状況から、一念発起して勉強を始めた三輪弁護士。しかしながら司法試験の壁は険しく、旧司法試験はすべて落ちた。その後、新しくできた法科大学院に通って、新司法試験にチャレンジ。新旧あわせて8回目の受験で、ようやく弁護士への切符を手にすることができた。

2010年12月に弁護士登録。グラビアのきっかけは、弁護士1年目に週刊プレイボーイの編集者と知り合いになり、声をかけられたことだという。

「最初、グラビアへの迷いはありました。同業者や世間からの批判は逃れられないだろうなと。だから、やる前はほとんど誰にも言わなかった」

――迷ったけれど、結局、グラビアに出ることにしたのは、なぜですか?

「一番言いたかったのは、『●●だったら●●』っていう構図がおかしい、っていうこと。みんなの頭の中に『弁護士だったらグラビアはやらない』という構図があるから、そういうグラビアを見たときに『えっ』って違和感を持つ。じゃあ、何で『えっ』てなるのか、考えてほしかったんです、本当は。

たとえば、記事のタイトルでも『弁護士』の上に『美人』ってつけてるでしょ。これって、『弁護士には美人がいない』と思われているんです。世間の前提が、この『美人弁護士』という言葉にあわられているわけですよね。

極端な話ですけど、グラビアアイドルが弁護士になったら世間はどう言いますか。『よくやった』って言うでしょ? でも、弁護士がグラビアをやったら、『ハレンチや、けしからん!』でしょ。おかしくない? これは、固定観念へのチャレンジなんです」

――「弁護士がグラビア?」という反応のほかに、「女性を性の対象にするな」というフェミニズム的な反応もありませんでしたか?

「そうですね。それも、雑誌が出た後で、すごい言われました。ただ言っておきたいのは、過剰な露出はやりたくなかった、ということです。自分のなかでは、さきほど述べたような『チャレンジ』という意味合いの方が大きかったです」

●「やらなきゃ良かった」なんて、1回も思ったことはない

雑誌が世に出てからの反響は大きかった。批判を受け、落ち込む日々も続いたという。しかし三輪弁護士は現在も、グラビアに挑戦したことを後悔していない。

「雑誌が出た直後は、すごく落ち込みました。ネットに流れている自分の悪口をずっと見たりして、すごいシンドかったんだけど、『やらなきゃ良かった』とは1回も思ったことなくて。

私は典型的なタイプじゃないから、どこに行っても疎外感を感じるんです。でもそこは割り切っていて、『そういうもんや』と思っています」

●「人生、あまり決めつけないほうがいい」

現在は常に数十件の案件を抱え、多忙な日々を過ごす三輪弁護士。今後は弁護士活動と並行しながらタレント活動も行っていくという。

――今後「こういう弁護士になりたい」というイメージはありますか。

「ないんですよね。男の人の場合は『いくら稼いで、ビッグになって』とかあるというでしょ。でもそういうのは本当にないんです。

そもそも弁護士になったのも、人に言われたのがきっかけじゃないですか。外交官も自分で『なる』と思っていたわりには、すぐに諦めたでしょ。グラビアにしたって、前からやりたかったかっていうと、別にそういうわけじゃない。

だから、あまり決めつけないほうがいい、って思ってるんですよ、何事も。法律相談に来てくれるお客さんであれ、グラビアであれ、人から求められることに精一杯答えていきたいと思ってます。それが自分の、すごく大きな人生哲学。自分で決めて、いいことは1個もなかったから(笑)」

「グラビア弁護士」という先入観だけで相手を決めつけるのは簡単だ。しかし、実際に話を聞いてみなければ、分からないこともある。三輪弁護士の挑戦、あなたはどう見るだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

今年1月、男性向け雑誌『週刊プレイボーイ』に、ある女性の大胆なグラビア写真が掲載された。上半身裸になって豊満な胸を手のひらで押さえ、カメラに微笑んでいるかと思えば、別の写真では、胸が透けそうなシースルーの肌着姿を着て窓辺に座り、妖艶なポーズをきめている。女性の正体は現役弁護士の三輪記子(ふさこ)さん。女性弁護士による異例の挑戦として、記事は話題を集めた。

記事のなかで、三輪弁護士はこう語る。「写真をご覧になっていろいろな人が『なんで弁護士がグラビアを?』と思われることでしょう。でも、弁護士だって市井に生きる普通の人間として、喜怒哀楽、いろんな感情があります」。ここからは批判も覚悟して、撮影にのぞんだことが推察される。それはどのような心情だったのか。話を聞くべく、京都市内にある三輪弁護士の事務所を訪ねた。(取材・構成/松岡瑛理)

●映画監督に「いいかげんにしろ」と言われて、弁護士をめざした

三輪弁護士は京都府出身。私立名門の同志社中学校・高等学校を経て、東京大学法学部を卒業している。大学に入ったとき、もともとは官僚を志望していたという。

――同志社大学に進学しないで、東大を目指したのはなぜですか。

「外交官になりたかったんです。官僚になるなら東大だな、と。入学して『行政機構研究会』というサークルに真っ先に入ったんですけど、雰囲気になじめなくて、すぐに挫折しちゃって。それ以降は、将来のビジョンがまったくなかったんです。授業も出ないし、就職もまったく考えてなかったんです。自分はけっこう賢いと思ってたのに、東大には賢い人がいっぱいいて。『闘うのやめよう』って思ったら、何もしなくなっちゃって(笑)。

 で、ひたすら飲んだりしていて。そんななか出会った林海象さん(映画監督)が、あまりに私が目的のない生活してたから『いいかげんにしろ』と。で、『ふさこ、お前は弁護士になれ』って言われたのが、弁護士を目指したきっかけです」

●「最初、グラビアへの迷いはありました」

1999年、授業にほとんど出ていなかった状況から、一念発起して勉強を始めた三輪弁護士。しかしながら司法試験の壁は険しく、旧司法試験はすべて落ちた。その後、新しくできた法科大学院に通って、新司法試験にチャレンジ。新旧あわせて8回目の受験で、ようやく弁護士への切符を手にすることができた。

2010年12月に弁護士登録。グラビアのきっかけは、弁護士1年目に週刊プレイボーイの編集者と知り合いになり、声をかけられたことだという。

「最初、グラビアへの迷いはありました。同業者や世間からの批判は逃れられないだろうなと。だから、やる前はほとんど誰にも言わなかった」

――迷ったけれど、結局、グラビアに出ることにしたのは、なぜですか?

「一番言いたかったのは、『●●だったら●●』っていう構図がおかしい、っていうこと。みんなの頭の中に『弁護士だったらグラビアはやらない』という構図があるから、そういうグラビアを見たときに『えっ』って違和感を持つ。じゃあ、何で『えっ』てなるのか、考えてほしかったんです、本当は。

たとえば、記事のタイトルでも『弁護士』の上に『美人』ってつけてるでしょ。これって、『弁護士には美人がいない』と思われているんです。世間の前提が、この『美人弁護士』という言葉にあわられているわけですよね。

極端な話ですけど、グラビアアイドルが弁護士になったら世間はどう言いますか。『よくやった』って言うでしょ? でも、弁護士がグラビアをやったら、『ハレンチや、けしからん!』でしょ。おかしくない? これは、固定観念へのチャレンジなんです」

――「弁護士がグラビア?」という反応のほかに、「女性を性の対象にするな」というフェミニズム的な反応もありませんでしたか?

「そうですね。それも、雑誌が出た後で、すごい言われました。ただ言っておきたいのは、過剰な露出はやりたくなかった、ということです。自分のなかでは、さきほど述べたような『チャレンジ』という意味合いの方が大きかったです」

●「やらなきゃ良かった」なんて、1回も思ったことはない

雑誌が世に出てからの反響は大きかった。批判を受け、落ち込む日々も続いたという。しかし三輪弁護士は現在も、グラビアに挑戦したことを後悔していない。

「雑誌が出た直後は、すごく落ち込みました。ネットに流れている自分の悪口をずっと見たりして、すごいシンドかったんだけど、『やらなきゃ良かった』とは1回も思ったことなくて。

私は典型的なタイプじゃないから、どこに行っても疎外感を感じるんです。でもそこは割り切っていて、『そういうもんや』と思っています」

●「人生、あまり決めつけないほうがいい」

現在は常に数十件の案件を抱え、多忙な日々を過ごす三輪弁護士。今後は弁護士活動と並行しながらタレント活動も行っていくという。

――今後「こういう弁護士になりたい」というイメージはありますか。

「ないんですよね。男の人の場合は『いくら稼いで、ビッグになって』とかあるというでしょ。でもそういうのは本当にないんです。

そもそも弁護士になったのも、人に言われたのがきっかけじゃないですか。外交官も自分で『なる』と思っていたわりには、すぐに諦めたでしょ。グラビアにしたって、前からやりたかったかっていうと、別にそういうわけじゃない。

だから、あまり決めつけないほうがいい、って思ってるんですよ、何事も。法律相談に来てくれるお客さんであれ、グラビアであれ、人から求められることに精一杯答えていきたいと思ってます。それが自分の、すごく大きな人生哲学。自分で決めて、いいことは1個もなかったから(笑)」

「グラビア弁護士」という先入観だけで相手を決めつけるのは簡単だ。しかし、実際に話を聞いてみなければ、分からないこともある。三輪弁護士の挑戦、あなたはどう見るだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

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