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偽物のブランド品を買ったら「返金」してもらえるか?
2013年01月29日 12時00分

偽物のブランド品を店に陳列していたとして、大阪市のブティック経営者が2013年1月20日、商標法違反の疑いで逮捕された。新聞報道によると、ブティック経営者は高級ブランド「ボッテガ・ヴェネタ」の偽物の財布を販売目的で所持していたとされる。

大阪府警は、家宅捜索で「エルメス」や「ロレックス」などのブランド名が入った商品約400点を押収。いずれも偽物とみて、捜査を進めているという。ブティック経営者は「2年くらい前から偽物を売っていた」と供述しているとのことで、偽ブランドを購入した客が多数いるとみられる。

そのなかには偽ブランド品と知らないで商品を買った人もいるかもしれない。そのような購買者は、ブティック経営者に対して代金の返還を求めることができるのだろうか。西田広一弁護士に話を聞いた。

●「偽物」を買ったからといって、必ず返金してもらえるわけではない

「このようなケースで代金返還を求める方法としては、まずブティック経営者の『詐欺』を理由にして、商品の購入契約を取り消して、代金を取り戻す方法があります(民法96条、703条)」

では、「詐欺」といえるためには、どんな条件が必要なのだろうか。

「詐欺が成立するためには、(1)経営者が偽物を本物と偽っていたことと、(2)購入者が本物と信じて購入の意思表示をしたことが必要です。ところが、このような店の経営者は、(1)を否定して『もともと偽物と言って売っていた』などと主張することが多いでしょう。刑事事件の取り調べで認めていない場合は、広告や発言の録音などから立証するほかありません」

さらに、「(2)の点についても、かなり安い金額の場合は問題となるでしょう」と西田弁護士は指摘する。また、消費者を守るための消費者契約法を根拠に、購入契約の取り消しを主張することも考えられるというが、「消費者契約法4条1項1号の『重要事項の不実告知』の場合も、経営者が真実でないことを認識している必要がないこと以外は、ほぼ同様の問題があります」

もう一つの手段として、「購入者が本物と信じて購入した場合、『錯誤』による契約の無効を主張する方法もあります(民法95条、703条)」という。「しかし、金額がかなり低いとか、怪しい店であったとかの事情があると、重過失ありとしてこの主張ができなくなります」

また、現実的な問題として、「経営者が逮捕されたような場合、実際の返金をしてもらえるか難しい可能性があります」と西田弁護士は説明する。結局のところ、「ブランド品を購入される方は、信用できる店で購入されるのが適切でしょう」ということだ。

今回の事件の場合、商品を買った客がどのように考えていたのかはわからないが、偽物を買ったからといって必ず返金してもらえるわけではない、という点には注意が必要だろう。

(弁護士ドットコムニュース)

偽物のブランド品を店に陳列していたとして、大阪市のブティック経営者が2013年1月20日、商標法違反の疑いで逮捕された。新聞報道によると、ブティック経営者は高級ブランド「ボッテガ・ヴェネタ」の偽物の財布を販売目的で所持していたとされる。

大阪府警は、家宅捜索で「エルメス」や「ロレックス」などのブランド名が入った商品約400点を押収。いずれも偽物とみて、捜査を進めているという。ブティック経営者は「2年くらい前から偽物を売っていた」と供述しているとのことで、偽ブランドを購入した客が多数いるとみられる。

そのなかには偽ブランド品と知らないで商品を買った人もいるかもしれない。そのような購買者は、ブティック経営者に対して代金の返還を求めることができるのだろうか。西田広一弁護士に話を聞いた。

●「偽物」を買ったからといって、必ず返金してもらえるわけではない

「このようなケースで代金返還を求める方法としては、まずブティック経営者の『詐欺』を理由にして、商品の購入契約を取り消して、代金を取り戻す方法があります(民法96条、703条)」

では、「詐欺」といえるためには、どんな条件が必要なのだろうか。

「詐欺が成立するためには、(1)経営者が偽物を本物と偽っていたことと、(2)購入者が本物と信じて購入の意思表示をしたことが必要です。ところが、このような店の経営者は、(1)を否定して『もともと偽物と言って売っていた』などと主張することが多いでしょう。刑事事件の取り調べで認めていない場合は、広告や発言の録音などから立証するほかありません」

さらに、「(2)の点についても、かなり安い金額の場合は問題となるでしょう」と西田弁護士は指摘する。また、消費者を守るための消費者契約法を根拠に、購入契約の取り消しを主張することも考えられるというが、「消費者契約法4条1項1号の『重要事項の不実告知』の場合も、経営者が真実でないことを認識している必要がないこと以外は、ほぼ同様の問題があります」

もう一つの手段として、「購入者が本物と信じて購入した場合、『錯誤』による契約の無効を主張する方法もあります(民法95条、703条)」という。「しかし、金額がかなり低いとか、怪しい店であったとかの事情があると、重過失ありとしてこの主張ができなくなります」

また、現実的な問題として、「経営者が逮捕されたような場合、実際の返金をしてもらえるか難しい可能性があります」と西田弁護士は説明する。結局のところ、「ブランド品を購入される方は、信用できる店で購入されるのが適切でしょう」ということだ。

今回の事件の場合、商品を買った客がどのように考えていたのかはわからないが、偽物を買ったからといって必ず返金してもらえるわけではない、という点には注意が必要だろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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