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東京電力の家庭向け電気料金値上げに対し、法的に拒否することはできるのか
2012年05月22日 17時55分

5月11日、東京電力は経済産業省に対して7月からの家庭向け電気料金の値上げを申請した。

電気料金の算定は電気事業法および経済産業省令に基づいて行われることになっており、枝野経済産業大臣が厳格に審査する考えを表明していることもあって申請通りの内容で値上げが認められるかはまだ不透明な状況にある。しかし、仮に申請が認められた場合、各家庭には法的に値上げに拒否できる余地はないのだろうか。

原則的に、企業がある商品やサービスについて値上げを行なった場合、値上げされた金額で購入するかどうかは消費者の自由であり、値上げされた金額で購入したくない場合は、他社の商品など代替となるものを探すことも可能だ。しかし、電気の場合は事情が異なり、各家庭が電気を使用するためには、自家発電装置がない限り管轄区域ごとの電力会社から購入するしか実質的な選択肢はないといっていい。そのため電力会社の値上げは、ほぼ強制的な効力を持つことになる。

既に東京電力は4月より順次企業向け電気料金の値上げを行なっているが、企業が値上げに応じない場合には、最終的に電気の供給を止める可能性があると説明している。

それではもし家庭向け電気料金が値上げされた場合、はたして各家庭には値上げを拒否できる余地はないのだろうか。また値上げに応じなかったことで電気の供給が止められたとしても、それは法的には問題がないのだろうか。消費者契約に詳しい近藤公人弁護士に聞いた。

「東電は独占企業ですので、国民に重大な影響を与える電気料金については、企業内で価格設定の変更を自由にすることができないように、経済産業大臣の認可がある場合にのみ、値上げできるようになっています。」

「電気料金の値上げには行政の『認可』が必要なことを考えると、行政訴訟で『認可(処分)の取り消し』を訴えることによって対抗することが可能かとも考えられますが、過去の判例で、鉄道の特急料金の変更認可取消訴訟では、利用者に訴える資格がないと判断され、却下されました。鉄道事業と電気事業は異なるものですが、電気料金の値上げについても行政訴訟での認可の取り消しは困難かも知れません。」

「もし値上げを拒否して電気料金を支払わなかった場合ですが、東電は、『正当な理由がなければ、電気の供給を拒んではならない』ことになっています。通常の料金未払いの滞納は、電力会社にとって電気の供給を停止する『正当な理由』に該当しますので、電気の供給を停止することは認められます。」

「そもそも電気料金の値上げは『料金が能率的な経営のもとにおける適正な原価に適正な利潤を加えたものである』ときに認められるため、私は『適正な原価に適正な利潤』ではない今回の値上げは不当であり、不当な値上げに基づく請求を拒むことは、各家庭にとっては『正当な理由』に該当すると思うのですが、法の世界では、たとえ東電の値上げが不当であったとしても、認可された以上は、値上げに応じず料金を支払わなければ滞納と同じです。よって値上げに応じなかった時は、電気の供給を停止されても違法なことではありません。また、消費者契約法などの法律を駆使しても、残念ながら値上げに応じないことは困難でしょう。」

近藤弁護士の言うとおり値上げが適正なものであるかどうかは議論が分かれるところであるが、いずれにせよ経済産業大臣が値上げを認可した場合には、各家庭は値上げを拒否することはできないということだ。

原発事故への対応など、厳しい世間の目にさらされている東京電力だが、今回の家庭向け電気料金の値上げ申請についても批判の声が上がっており、今後も難しい経営判断を迫られることになりそうである。

(弁護士ドットコムニュース)

5月11日、東京電力は経済産業省に対して7月からの家庭向け電気料金の値上げを申請した。

電気料金の算定は電気事業法および経済産業省令に基づいて行われることになっており、枝野経済産業大臣が厳格に審査する考えを表明していることもあって申請通りの内容で値上げが認められるかはまだ不透明な状況にある。しかし、仮に申請が認められた場合、各家庭には法的に値上げに拒否できる余地はないのだろうか。

原則的に、企業がある商品やサービスについて値上げを行なった場合、値上げされた金額で購入するかどうかは消費者の自由であり、値上げされた金額で購入したくない場合は、他社の商品など代替となるものを探すことも可能だ。しかし、電気の場合は事情が異なり、各家庭が電気を使用するためには、自家発電装置がない限り管轄区域ごとの電力会社から購入するしか実質的な選択肢はないといっていい。そのため電力会社の値上げは、ほぼ強制的な効力を持つことになる。

既に東京電力は4月より順次企業向け電気料金の値上げを行なっているが、企業が値上げに応じない場合には、最終的に電気の供給を止める可能性があると説明している。

それではもし家庭向け電気料金が値上げされた場合、はたして各家庭には値上げを拒否できる余地はないのだろうか。また値上げに応じなかったことで電気の供給が止められたとしても、それは法的には問題がないのだろうか。消費者契約に詳しい近藤公人弁護士に聞いた。

「東電は独占企業ですので、国民に重大な影響を与える電気料金については、企業内で価格設定の変更を自由にすることができないように、経済産業大臣の認可がある場合にのみ、値上げできるようになっています。」

「電気料金の値上げには行政の『認可』が必要なことを考えると、行政訴訟で『認可(処分)の取り消し』を訴えることによって対抗することが可能かとも考えられますが、過去の判例で、鉄道の特急料金の変更認可取消訴訟では、利用者に訴える資格がないと判断され、却下されました。鉄道事業と電気事業は異なるものですが、電気料金の値上げについても行政訴訟での認可の取り消しは困難かも知れません。」

「もし値上げを拒否して電気料金を支払わなかった場合ですが、東電は、『正当な理由がなければ、電気の供給を拒んではならない』ことになっています。通常の料金未払いの滞納は、電力会社にとって電気の供給を停止する『正当な理由』に該当しますので、電気の供給を停止することは認められます。」

「そもそも電気料金の値上げは『料金が能率的な経営のもとにおける適正な原価に適正な利潤を加えたものである』ときに認められるため、私は『適正な原価に適正な利潤』ではない今回の値上げは不当であり、不当な値上げに基づく請求を拒むことは、各家庭にとっては『正当な理由』に該当すると思うのですが、法の世界では、たとえ東電の値上げが不当であったとしても、認可された以上は、値上げに応じず料金を支払わなければ滞納と同じです。よって値上げに応じなかった時は、電気の供給を停止されても違法なことではありません。また、消費者契約法などの法律を駆使しても、残念ながら値上げに応じないことは困難でしょう。」

近藤弁護士の言うとおり値上げが適正なものであるかどうかは議論が分かれるところであるが、いずれにせよ経済産業大臣が値上げを認可した場合には、各家庭は値上げを拒否することはできないということだ。

原発事故への対応など、厳しい世間の目にさらされている東京電力だが、今回の家庭向け電気料金の値上げ申請についても批判の声が上がっており、今後も難しい経営判断を迫られることになりそうである。

(弁護士ドットコムニュース)

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