男性も仕事と育児を両立できるよう、さまざまな法制度がととのえられつつあります。厚労省の調査によると、男性の育休取得率は年々増加しており、2023年度には約30%と過去最高を記録しました。
一方で、男性が育休を取得しようとしたら、上司から「難色を示された」という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者によると、妻の出産にあわせて3カ月の育児休暇を上司に申請したところ、「奥さんが里帰り出産すればいい」「誰か代わりに人を雇わなくてはいけない」など渋られたといいます。
相談者は非常に「不愉快な気分になった」といいます。男性の育休をなかなか許可しない上司や職場に法的な問題はないのでしょうか。森田梨沙弁護士に聞きました。
●パパが取得できる休業は2つある
——現在、子どもが生まれてから男性が取得できる休業にはどのようなものがあるのでしょうか。
子どもが生まれてから男性が取得できる休業としては、育児休業(育休)と産後パパ育休とがあります。
育休は、原則として子どもが1歳になるまで取得することができます。配偶者が専業主婦(主夫)の場合でも取得可能です。
産後パパ育休は、2022年10月1日に施行された制度で、育休とは別に、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得が可能です。育休も産後パパ育休も、分割してそれぞれ2回取得することができます。
●育休を取得しようとする労働者に対するハラスメント防止措置
——事業主には育休や産後パパ育休が取得しやすいよう、どのようなことが現在、義務付けられていますか。
事業主は、労働者からの育休や産後パパ育休の申し出が円滑におこなわれるようにするため、育休等に関する研修の実施や、相談体制の整備などをおこなうことが義務付けられています。
また、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対しては、育休制度等に関する周知や、休業を取得する意向があるかの確認を個別におこなわなければなりません。
さらに、事業主は、育休等を取得しようとする労働者に対するハラスメントの防止措置をとることも義務付けられています。
●育休を取らせない場合は「パタハラ」に該当
——相談のケースで、男性が3カ月の育児休暇を取るにあたって、何か問題はありますでしょうか。また、上司の態度はハラスメントにあたる可能性はありますか。
育休の取得は法律に定められた労働者の権利ですから、代替要員がいないといった理由で、取得させないということはできません。
相談のケースのように上司が男性の育休の取得を渋ることは、「パタハラ」(マタニティ・ハラスメントの男性版)などとも呼ばれ、育児休業等に関するハラスメントに該当すると考えられます。
なお、育児に関する制度については、今年(2025年)10月にも新たな制度が施行される予定になっており、改正が非常に多い分野です。
厚生労働省のホームページなどに改正の詳しい内容についてまとめられていますし、労働局等でもわかりやすい動画がアップされていますので、参考にしてみてください。